てんかんや統合失調症など一定の病気症状があり車の運転に支障を及ぼす可能性のある患者が、免許の取得や更新時に病状を虚偽申告した場合の罰則を新設することなどを盛り込んだ改正道交法が、去る平成25年6月7日衆院本会議で可決・成立し、6月14日に公布されました。施行時期は改正内容によって違い段階的に施行されます。
■無免許運転の罰則強化や自転車の路側帯走行ルールの改正などは、
平成25年12月1日に施行(11月13日に内閣府令公布)
■一定の病気の症状をもつ運転者に対する対策は、
平成26年6月1日に施行(平成26年3月14日に内閣府令公布)
改正の主なポイントは以下のとおりです。
■虚偽の申告で免許を取得、更新すると罰則が適用されます
公安委員会は、運転免許受験者や更新者に一定の病気等に関する症状(※)の質問をすることが可能になり、症状があるにも関わらず虚偽の回答をして免許を取得または更新した者は、1年以下の懲役又は30万円以下の罰金刑を受けることになります。
■医師が任意で申告できる制度を新設
また、病気の症状がある患者を診察した医師が、任意で患者の診断結果を公安委員会に届け出ることができるようなります(※医師の守秘義務の例外となるよう法的整備がなされています)。
■病気が疑われる事故運転者には暫定的な免許停止が可能に
このほか、交通事故を起こした運転者が一定の病気に該当すると疑われる場合は、専門医の診断による取消処分を待たずに、暫定的な免許の停止措置もできるようになります。
※一定の病気とは、具体的には、てんかん、統合失調症、再発性の失神、無自覚
性の低血糖症、そううつ病、重度の睡眠障害、認知症、その他自動車の運転に支
障を及ぼす恐れのある一定の症状があり免許の拒否あるいは取消処分の対象とな
るもの/症状がなければ対象外(参考:道路交通法、同施行令)。
「一定の病気等」とは上記の病気にアルコール、麻薬中毒者を加えたもの
■無免許運転の罰則を引き上げ
無免許運転の罰則を現行の「1年以下の懲役又は30万円以下の罰金」から「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」に引き上げます。無免許運転の下命容認、免許証不正取得の罰則も同様に強化されます。
(※違反点数も改正 19点 → 25点に強化/平成25年11月13日公布の施行令による)
■無免許運転を助長する行為にも罰則を適用
さらに、無免許運転の幇助行為が禁止され、罰則が設けられます。
無免許運転をする恐れがある者に車を提供して無免許運転が起こった場合は無免許運転者と同じ罰則が適用されます。また、無免許運転を知りながら車で送るよう依頼して同乗した者には「2年以下の懲役又は30万円以下の罰金」が適用されます。
■危険な違反を繰り返す自転車利用者に講習を実施(平成27年6月1日施行)
信号無視や遮断踏切立入、飲酒運転など悪質な違反を2回以上繰り返す自転車利用者に講習の受講を義務づけます。未受講者は罰金刑が適用されます。
■ブレーキの効かない自転車の運転を禁止(平成25年12月1日施行)
自転車のブレーキが効かない恐れがある場合、警察官はその場で停止させて検査ができるようになり、整備不良自転車と認められ応急整備のできない自転車は、その場で運転の継続が禁止されます。
■自転車が通行できる路側帯は道路左側のみ
(平成25年12月1日施行)
このほか、自転車の通行方法の規定が整備されました。改正前は自転車の走行できる路側帯では双方向の通行が可能でしたが、左側通行徹底のため、また路側帯内での自転車同士の事故防止のため、自転車が通行できる路側帯は道路左側に設けられた路側帯のみが通行可能となります。
■免許失効により取消処分を免れた者も「取消処分者講習」の対象に
(平成26年6月1日施行)
■コンビニ等で「放置違反金」の納付が可能に
(平成26年6月1日施行)
■環状交差点(ロータリー・ラウンドアバウト)の通行方法の規定の整備
(平成26年9月1日施行)
今まで、明確な規定がなかった環状交差点の通行方法の整備が行われます。
環状交差点では、右回り通行が基本となり、環状部分を走行している車両が、交差点に進入しようとする車両より優先とされます。
また、環状交差点に入ろうとする車両には徐行義務があります。
■「一定の病気」で免許取消し後、3年以内に再取得した人の優良運転者特例基準を新設
(2年以内に施行)
統合失調症など「一定の病気」を理由に免許を取り消され、その後3年以内に、症状が改善するなどして免許を再取得したドライバーについては、特例として、取消された免許を受 けていた期間と再取得した免許を受けていた期間は継続していたものとみなし、その合算期間中
に5年間以上「無事故・無違反」を続けていれば「優良運転者」とされます。
(免許の拒否等)
第90条
公安委員会は、…(中略)…次の各号のいずれかに該当する者については、政令で定める基準に従い、免許(仮免許を除く。以下この項から第十二項までにおいて同じ。)を与えず、又は六月を超えない範囲内において免許を保留することができる。
一 次に掲げる病気にかかっている者
イ 幻覚の症状を伴う精神病であって政令で定めるもの
ロ 発作により意識障害又は運動障害をもたらす病気であって政令で定めるもの
ハ イ又はロに掲げるもののほか、自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるもの
一の二 介護保険法 (平成九年法律第百二十三号)第五条の二 に規定する認知症(第百三条第一項第一号の二において単に「認知症」という。)である者
二 アルコール、麻薬、大麻、あへん又は覚醒剤の中毒者
──以下略──
■道路交通法施行令第33条の2の3
(免許の拒否又は保留の事由となる病気等)
法第90条第1項第1号イの政令で定める精神病は、統合失調症(自動車等の安
全な運転に必要な認知、予測、判断又は操作のいずれかに係る能力を欠くことと
なるおそれがある症状を呈しないものを除く。)とする。
2 法第90条第1項第1号ロの政令で定める病気は、次に掲げるとおりとする。
一 てんかん(発作が再発するおそれがないもの、発作が再発しても意識障
害及び運動障害がもたらされないもの並びに発作が睡眠中に限り再発する
ものを除く。)
二 再発性の失神(脳全体の虚血により一過性の意識障害をもたらす病気で
あつて、発作が再発するおそれがあるものをいう。)
三 無自覚性の低血糖症(人為的に血糖を調節することができるものを除く)
3 法第90条第1項第1号ハの政令で定める病気は、次に掲げるとおりとする。
一 そううつ病(そう病及びうつ病を含み、自動車等の安全な運転に必要な
認知、予測、判断又は操作のいずれかに係る能力を欠くこととなるおそれが
ある症状を呈しないものを除く。)
二 重度の眠気の症状を呈する睡眠障害
三 前二号に掲げるもののほか、自動車等の安全な運転に必要な認知、予測、
判断又は操作のいずれかに係る能力を欠くこととなるおそれがある症状を
呈する病気 。
──以下略──
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