国土交通省では、緊急時の安全確保義務違反や居眠運転などによる事故が多発している状況を踏まえ、2018年6月に自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う「指導及び監督の指針」を改正します。
トラック運転者に対する指導指針については、「睡眠不足」の危険に関する運転者教育を徹底することが付加されます。
点呼において「睡眠不足」の恐れの有無の確認と乗務禁止措置、過労運転事故への行政処分基準の強化と合わせて、居眠運転事故防止への体制強化を図ります。
■施行時期について
★改正指針を平成30年6月1日公布、同日施行
→ バス・タクシー運転者向け指針の改正については、こちらを参照
項目 | 改 正 に よ る 追 加 内 容 | |
③ |
事業用自動車の構造上の特性 |
・自らが運転する事業用自動車の…制動距離などを確認させ、構造上の特性が車両によって異なることを理解させる |
⑧ |
危険の予測及び回避並びに緊急時における対応方法 |
・事故発生時、災害発生時その他緊急時における対応方法について事例を説明すること等により理解させる |
⑩ |
交通事故に関わる運転者の 生理的及び心理的要因及びこれらへの対処方法 |
・睡眠不足に伴い誘発される眠気が事故を引き起こす恐れがあることを理解させる。 |
※その他の項目は、一部の文言改正のみで大きな追加内容はなし
★「眠気による事故」の防止を徹底指導
今回の改正のポイントは、交通事故を起こす「生理的要因」に「睡眠不足による眠気」も含まれることを告示上明記したということになります。
「良い睡眠をとることが事故防止に不可欠であること」
「就寝前の飲酒、喫煙、カフェイン摂取やパソコン・スマートフォンの使用は、睡眠の質を低下させること」
「運転中に眠気を感じた時は運転を中止し、休憩するか睡眠をとること」
等について指導しましょう。
■準中型免許導入などに伴い改正
国土交通省は、準中型免許が来年に創設(※)されることなどに関連して、「貨物自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う指導及び監督の指針」の一部を2016年(平成28年4月1日公布)に改正しました。
指導および監督の項目を従来の11項目から12項目に増やし、トラックの初任運転者について安全運転実技指導(20時間)を義務化するなど、運転者教育の強化を図っています。
■施行は2017年3月
改正道路交通法の施行日(平成29年3月12日に施行)に併せて実施されました。
新たに12番めとして追加された項目は、「安全性の向上を図るための装置を備える事業用自動車の適切な運転方法」。
被害軽減ブレーキや追突事故防止装置などの装備が徐々に進んでいますが、運転者にその機能を十分に理解させ、正しい活用を促すことが目的です。
このほか、トラックを運転する場合の心構えに「交通事故統計を活用し事故の影響の大きさを理解させる」、トラックの運行の安全を確保するために遵守すべき基本的事項に「規定に基づく日常点検の実施、適切な運転姿勢で運転することの重要性、それを怠ったことで事故が発生した際、事業者、運転者が受ける罰則、処分と措置、交通事故が加害者に与える心理的影響を説明することにより確認させる」を付け加える──などとなっています。
■初任運転者指導は15時間、実技指導20時間を新設
また、現行では座学6時間でよかった初任運転者指導が15時間に延長され、トラックの構造特性などの指導は実車を用いるほか、実際にトラックを運転させて安全な運行方法を体得させる「実技訓練20時間」が新たに義務づけられます。
運行管理者の負担もこれまで以上に大きくなることが予想され、社内教育体制の整備や外部教育機関の活用などが必要となってきます。
国土交通省では、指針改訂に伴い「一般的な運転者指導マニュアル」について改訂を行いました。
詳しくは、国土交通省のWEBサイトを参照してください。
項 目 | 改 正 後 の 追 加 内 容 | |
① |
トラックを運転する場合の心構え |
・交通事故統計を活用し事故の影響の大きさを理解させる |
② |
トラックの運行の安全を 確保するために遵守すべき 基本的事項 |
・規定に基づく日常点検の実施及び適切な運転姿勢での運 転の重要性を、それを怠ったことによる事故が発生した際 に事業者及び運転者が受ける罰則、処分及び措置及び交通 事故が加害者等に与える心理的影響を説明することにより 確認させる |
③ | トラックの構造上の特性 |
・トレーラを運転する際に留意すべき事項及び貨物の特性を 理解した運転を理解させる ・トレーラにより、コンテナを運搬する事業者にあっては、 コンテナロックの重要性を理解させる |
④ | 貨物の正しい積載方法 | ・軸重違反を防止するための積載方法を理解させる |
⑤ | 過積載の危険性 |
・法令に基づき荷主が遵守すべき事項、運転者等が受ける 過積載に対する罰則、処分及び措置を理解させる |
⑥ |
危険物を運搬する場合に 留意すべき事項 |
・該当する事業者にあってはタンクローリーを運転する際 に留意すべき事項を指導する ・危険物に該当する貨物および運搬前の安全確認について 理解させる |
⑦ |
適切な運行の経路及び当該経路 における道路及び交通の状況 |
(改正なし) |
⑧ |
危険の予測及び回避並びに緊急時 における対応方法 |
・注意喚起手法として指差呼称及び安全呼称を活用する ・降雪が運転に与える影響、緊急時における適切な対応を 理解させる |
⑨ |
運転者の運転適性に応じた安全 運転 |
・適性診断の結果に基づく個々の運転者の運動行動の特性 を自覚させる |
⑩ |
交通事故に関わる運転者の生理 的及び心理的要因及びこれらへ の対処方法 |
・医薬品の使用等による眠気及び飲酒の生理的要因による 事故の可能性を理解させる ・規定に基づき運転者の勤務時間及び乗務時間を定める場 合の基準を理解させる |
⑪ | 健康管理の重要性 |
・ストレスチェック等に基づき精神面の健康管理の重要性 を理解させる |
⑫ |
安全性の向上を図るための装置 を備える事業用自動車の適切な 運転方法 【新設】 |
・安全性の向上を図るための装置を使用した場合の適切な 運転方法を理解させる |
【追加事項】上記内容について運転者に対する指導・監督を一年ごとに実施する
項 目 | 内 容 | 時 間 | |
① |
運転者が順守すべき事項、 トラックの安全な運転に関する事項 |
・一般的な指導及び監督の内容について指導を行う ・この場合、日常点検、トラックの車高、視野、死角、内輪差及び制動距離等トラックの構造上の特性、貨物の積載方法及び固縛方法等に関しては、実車を用いて指導する |
15時間以上実施する (現行は6時間) |
② | 安全運転の実技 |
・実際にトラックを運転させ、道路状況に応じた安全な運転方法を添乗等により指導する |
20時間以上実施する【新設】 |
*公布 : 平成28年4月1日
*施行 : 道路交通法の一部を改正する法律(平成27年法律第40号)の施行の日
トラックドライバー向けの指導・監督資料については → こちらを参照