交通事故の判例ファイル8

■「自転車対自転車」の交通事故で過失相殺を判断

自転車事故の過失割合

◆少年の両親の「監督義務違反」責任を認める

  ──74歳男性に損害賠償540万円/東京地裁

 

 東京地裁は2010年9月14日、交差点で自転車が衝突した事故に関する民事訴訟の判決公判において、友人と自転車で「鬼ごっこ」をしていた少年(当時12歳)と両親に、被害者(74歳/弁護士)に対する休業損害金や治療費など約540万円の支払いを命じました。

 裁判長は、少年の両親について「交差点で一時停止するといった一般的指導はしていたが、少年が『鬼ごっこ』をしていたことを把握していないなど、教育監督義務違反があった」と指摘しました。

 

■自転車同士の出会い頭事故で高齢者が骨折
 判決によると、東京都杉並区の交差点で事故が発生したのは2008年1月26日午後7時5分頃。被害者の弁護士が自転車に乗って信号のない交差点に進入したところ、右方向から来た少年の自転車と出合い頭に衝突し、弁護士は左足骨折のけがを負いました。


 少年は塾から帰宅する途中、友人と自転車で「鬼ごっこ」遊びをしていて周囲を十分に確認していませんでした。


  弁護士は事故後1年間の休業損害1,380万円など計約2,480万円の損害のうち、1,200万円の損害賠償を少年らに求めていましたが、裁判長は「少年が交差点に進入するとき減速した」点と2人の年齢などを考慮した上で少年側と被害者側の過失割合を60対40と認定しました。

 なお被害者の弁護士は横浜地裁所長、札幌高裁長官などを経て、現在は弁護士として活動しています。

 

■少年6割 対 高齢者(弁護士)4割
 12歳以下の未成年者等による不法行為に責任能力がないと認定された場合、民法714条により保護責任者(両親)が監督義務責任による賠償義務を負うことになりますが、今回は子どもの責任能力を認めたうえで親の責任を認めています。


 自転車に乗る人のマナーと安全教育の徹底について、親を含めた社会的な責任を訴えたものと見られています。

類似の判例はこちら

【参考──歩道上の自転車対歩行者事故、原則として過失相殺なし】


 平成20年(2008年)の道路交通法改正により、自転車の歩道通行ができる要件を明確にし、車道走行のルールを厳格化しましたが、自転車と歩行者等の人身事故が多発していることから、東京、横浜、名古屋、大阪など主要4地裁の交通事故専門裁判官は2010年3月に法曹雑誌で誌上討論(※)を行い、「歩道上の事故は原則、歩行者に過失はない」とする考え方を提案しました。


 横浜地裁の裁判官が、歩道上は道路交通法で自転車の走行が原則禁止され、通行できる場合も歩行者の安全に注意する義務があることが明記されているので「歩道上事故の責任は原則として自転車が負うべき」と主張し、他の3地裁にも基本的に認められたものです。


 この考え方はあくまで目安であり今後も検討が必要とされ、自転車利用者が幼児・高齢者の場合等もあるので、必ずしも一律に適用されるとは言えませんが、今後歩道上では、自転車の責任を重く判断する傾向となると見られています。

 ※法曹時報 62巻3号

歩道上の自転車衝突事故 過失相殺

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