◆自転車同士による転倒事故

──1300万円の賠償命令（大阪地裁　平成21年７月21日判決）

　2008年６月の早朝、大阪市内の交差点で自転車により出勤途上のパート女性が左折しようとして、直進してきた自営業の女性の自転車と衝突、自営業の女性が転倒して、運悪く石があり股関節骨折等の重傷を負った事例です。

　加害者のパート女性は賠償保険に加入していなかったため、治療費の何割かしか負担できず、被害者は治療費をほぼ自己負担し、怪我の後遺症のため自営業も続けられなくなり訴訟となったものです。

　パート女性が仕事を理由に公判に出頭しなかったため、裁判所は被害者の主張を認め、1,300万円の損害賠償を命じました。

◆自転車通行可の歩道上事故で歩行者の過失はゼロに
　──無灯火・速度を考慮（大阪地裁 平成19年７月10日判決）

　2006年、日没後に15歳の中学生が無灯火自転車で自転車通行可の標識のある歩道（幅員2.5ｍ）を走行中、反対側から歩道を歩いてきた62歳の男性歩行者と正面衝突し、この衝撃で男性が転倒、頭を強打して死亡した事例です。

　自転車側は、歩行者にも前方不注視の過失があるとして過失相殺を求めましたが、裁判所は幅員の狭い歩道を無灯火で速い速度のまま走行していた自転車の責任を重く見て、過失相殺を認めませんでした。認定損害額は約３、９７０万円となりました。
　なお、中学生には日常的に危険な自転車運転の事実がなく、過去に交通事故歴もないことから、親権者である母親の監督義務違反は認められませんでした。

（交通事故民事裁判例集40巻４号866頁）　

◆携帯・無灯火自転車の高校生
──5000万円の賠償責任（横浜地裁　平成17年11月25日判決）

　女子高校生（当時16歳）が夜間、無灯火で携帯電話を操作しながら片手運転で自転車を走行中に、前方を歩行中の看護師（当時57歳）の女性に衝突した事例です。

　被害者の看護師には重大な障害が残り（手足がしびれて歩行が困難）、看護師の職を失うことになりました。裁判所は、加害者女性（判決時19歳）に約5,000万円の支払いを命じました。なお、被害女性は、高校生の父親にも損害賠償請求しましたが、父親の責任は否定されました。

◆無灯火自転車の中学生が高齢者と衝突

──被害者過失15％等で3120万円（名古屋地裁、平成14年９月27日判決）

　歩車道の区別のない、薄暗い事故現場で、白色実線内（路側帯）を歩行していた高齢者（女75歳）が、電柱を避けて車道に進出した時、無灯火で自転車を運転して対向進行してきた中学生（男当時14歳）と衝突した事故です。

　高齢者が頭部外傷（脳挫傷・外傷性くも膜下出血等）を受け脳室拡大が顕著。脳萎縮も著しく後遺障害2級3号の障害を残しました（症状固定時77歳）。
　被害者側は「中学生の両親に監督者としての義務違反があった」として損害賠償請求をしましたが、裁判所は、加害中学生の責任を肯定したものの、事故歴などがなく普段の問題行動などもなかったことから両親の監督義務違反の過失があるとは言えないと判定したものです。

　被害者の過失が15％、自転車の過失が85％、さらに、年齢相当の脳萎縮がすでにあったと推定されるとして、被害者側に20％の素因減額を適用後、この判決で中学生の損害賠償金は合計約3,120万円となりました。

◆信号待ち歩行者に自転車が衝突

──被害者損害額約1800万円（大阪地裁　平成10年10月16日判決）

　事故当時69歳の高齢者（女）が、信号交差点の歩道上で信号待ちをしていて青信号を見て歩き出そうとしたところ、前方不注視で歩道をやってきた自転車に乗った事故当時17歳の未成年が衝突、高齢者が転倒して大腿骨を骨折し、左股関節に人工骨頭を置換するなど後遺障害8級7号の障害を残した事例です。

　専業主婦であった被害者の逸失利益は、就労可能年数を約7年として中間利息を控除、685万4605円。後遺障害慰謝料760万円、休業損害は入院65日間、通院100日間（45％）で79万2365円など約1,800万円の損害賠償を認めました。被害者の過失は認められませんでした。また、加害者の両親にも損害賠償請求をしましたが、17歳の未成年者の両親の責任を否定しました。

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