◆ワゴン車による3キロ引きずり死亡事故に懲役15年
──殺意を認め殺人罪を認定/大阪地裁
大阪梅田で会社員(当時30歳)を車ではねて約3キロ引きずって死亡させたとして、殺人と道交法違反(ひき逃げ・無免許運転)等に罪に問われた被告(24歳)の判決で、大阪地裁は去る10月15日、懲役15年(求刑懲役20年)を言い渡しました。
判決理由で裁判長は、「被害者が生存していた十数秒後には被害者を引きずっている認識があった」と認定し、「そのまま走行した判断は殺意として十分」とし、「未必の故意」※による殺人罪を適用しました。
事故は2008年10月21日の午前4時15分頃、大阪市北区梅田付近の国道で発生。道路を横断しようとしていた30歳の男性がワゴン車にはねられ、そのまま西に約3キロ離れた同市福島区内までひきずられて死亡しました。
殺人の故意があったかどうかが争点となり、被告側は「事故で頭が真っ白になり逃げたが、引きずりには気づかなかった」として殺意を否定していました。しかし、裁判所は、衝突から十数秒後約85メートルの地点で異音や抵抗等「重たい感じがした」とする被告の供述を重視、「被害者が生存していたこの時に引きずっていることを認識しながら、運転を止めなかった」行為から、未必の殺意が生じていたという検察側の主張を認めています。
さらに、被告が執行猶予期間中の飲酒運転・無免許運転だったことに触れ、「自己の刑事責任を逃れるため、他人の生命さえ意に介しない卑劣、身勝手極まりない犯行」と非難しました。
※【参考──「未必の故意」とは】
殺人罪などで、「未必の故意」による殺意などが認定されるのは、必ずしも「殺してやろう」という積極的な殺意(犯意)がなくても、このまま行為を続けると 相手は死ぬかも知れないという危険を認識し、なおかつ「それでも構わない」という結果の発生を認めていた場合に成立すると言われています。
これに対して、「このままいくと相手に衝突し、相手は死ぬかも知れない」と危険を認識したとしても、「でも、まさか衝突はしないだろうもしくは「まさか、死ぬことはないだろう」と考えて行動して相手に衝突したような場合は、「認識ある過失」と認定されます。
引きずりやひき逃げによる交通事故の場合は、殺意を認め運転殺人と認定されるか、過失と認定されるかは判例によって異なっていますが、飲酒運転の発覚を隠蔽するために逃げたような利己的な行為に対しては、厳しい判断が下る傾向が見られています。
殺人罪は併合加重や無期の軽減などで懲役30年まで求刑できますので、自動車運転過失致死傷罪の7年以下の懲役・禁錮とは比べものにならない重罰となります(※)。
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