◆新聞配達員の引きずり事故で殺意を認定
──懲役13年(2009年8月21日 大阪地裁堺支部判決)
大阪府富田林市で2008年11月16日未明、当時16歳の新聞配達員を車で約6.6キロ引きずって死亡させた運転者(42)に対する判決です(殺人・酒気帯び運転・ひき逃げで起訴された)。求刑は懲役17年。この被告も、「引きずっていることを認識していなかったので、殺人罪は成立しない」と一部無罪を主張していました。
しかし、大阪地裁堺支部は、配達員のバイクと衝突後、車の底部に配達員を巻き込み、「衝撃音などで、引きずりに気づいていた」と認識があったことを認め、「被害者が死んでも構わないという未必の殺意があった」と判断しました。配達員の男性は事故から数分は生存していたことが判明しています。
◆泥酔運転でひき逃げの男、未必の故意による殺人未遂を認定
──懲役16年(2007年3月26日 千葉地裁松戸支部判決)
千葉県柏市で2006年4月25日夕方、飲酒運転の乗用車を運転し女子高校生3人を次々とはねて骨盤骨折など全治数か月の重傷を負わせて逃げた男(43)に対する判決です(殺人・危険運転致死傷・ひき逃げで起訴・求刑は懲役20年)。
被告は、3人のうち1人を420メートルも引きずって走行、公判では「引きずりの認識はなかった」と一貫して否認しましたが、裁判長は「捜査段階での『(被害者が)死ぬかもしれないと思った』、『相手が死んでも構わない。飲酒運転の発覚が恐かった』という自白は具体的で詳細であり、信用できる」として、殺人未遂を認めました。
◆「引きずりに気づかず」自動車運転過失致死罪
──懲役3年8月(2009年3月23日 宇都宮地裁判決)
宇都宮市内で2008年12月17日早朝に、48歳の女性が飲酒運転の車にはねられて約700メートル引きずられ死亡した事故では、被告(24)に自動車運転過失致死罪と道路交通法違反が適用されています。上記と同種の事故ですが、ひき逃げはなく量刑に差があります。
交差点を右折する車が横断歩道上の女性をはね、底に巻き込んだまま走行して死亡させた事故で、衝突直後は気づいていなかったものの、「車の音がおかしい」と思って止まり、事故に気づいた後には被告が人工呼吸などをしたことが認められています。
裁判官は「被告が被害者との衝突時に気づき、ただちに車を停止させていれば、生命を奪うまでの結果にならなかった可能性が非常に高い」と過失の重さを批判していますが、起訴事実のなかに故意による罪は含まれていません。