◆高速道路の凍結事故に道路管理者の瑕疵はない──凍結防止剤散布を実施し、凍結への注意を発すれば足る(大阪地裁2008年12月8日判決)
(※高速道路上の事故の判例で、岡山地裁の判決とは事情が違いますが、凍結に関する道路管理者の管理・瑕疵責任を認めなかった例として参考になるので紹介します)
2004年1月18日、阪神高速道路湾岸線で路面凍結のためスリップし、クッションドラムに衝突して大破した乗用車の運転者が、高速道路の管理者である阪神高速道路公団(当時)を相手に、「現場での凍結防止剤の散布が遅れ、道路の入路閉鎖をしなかったのがスリップの原因」として損害賠償を求めた裁判で、裁判所は、「全線凍結注意などの表示、速度規制なども実施していた」ことを評価し、「事故はドライバーの過失が原因である可能性が否定出来ない」として原告の主張を退け、損害賠償を認めませんでした。
判決理由によると、裁判所は、「事故の前に多数の自動車がスリップ事故を起こすことなく現場付近を走行していること」「乗用車が速度規制を見落としていること」、「凍結防止剤の散布は現場付近より凍結の恐れの高い場所から順次行っていたこと」等に着目し、また、「路面の凍結が予想されるというだけをもって、多数の車両が利用する高速道路において『入路閉鎖』をすべき状況とは言えなかった」と認定しています。
高速道路上では、長い経路上のすべてにすぐ凍結防止剤が散布されるわけでなく、凍結の恐れがあるときには、まず、電光掲示板などで「凍結注意」表示が行われ、速度規制も実施されます。入路閉鎖が行われるのは全面凍結など極端なケースであり、運転者としては、これらの表示・規制によく注意し、路面凍結を警戒し慎重に運転することが重要です。
(※判例時報 2075号54頁掲載・2010年7月1日発行)