ドライバーの持病などが影響して、運転中に意識障害を起こして思わぬ事故に結びつく場合があります。
事業用自動車に対しては、国土交通省が健康管理マニュアルのひな形を公表して注意を呼びかけています。また、全日本トラック協会も、独自にマニュアルを作成していますが、一般の安全運転管理事業所においても、営業マンやマイカー通勤者など毎日ハンドルを握る従業員が運転に影響を及ぼす疾病を抱えていないか、個々に把握して管理・指導しておくことが大切です。
先日も、こんな事故が発生しています。
2010年12月30日、三重県四日市市の近鉄線踏切で、自転車の男性が2名後ろから来たワゴン車に追突されて踏切内に押し出され、電車にはねられて死亡しました。
このワゴン車を運転していた男性(歯科医師46歳)は、自動車運転過失致死傷罪で逮捕されましたが「事故時のことを覚えていない」と供述しています。実は、てんかん発作などにより一時的に意識障害を起こすおそれのある持病を持ち、この日も発作を起こした可能性が高いのです。
通院し投薬を受け、しばしば意識障害の発作が生じるので、主治医から「自動車運転を控える」ように指導されていましたが、本人は強く運転を禁じられたようには感じていなかったようです。
事故を起こした歯科医師のケースは特殊な例のように考えがちですが、実際には多くの病気の治療薬などで、強い眠気を覚えるドライバーがいます。
たとえば、糖尿病の治療でインシュリン投与をしている人は、過剰投与や食事の量が不適切だったりすると低血糖状態に陥り、運転中に意識障害が発生する可能性があります。実際に低血糖状態で事故を起こし、禁錮3年の実刑判決を受けたケースもあります。
また、風邪をひいていたのに無理をして薬を飲んで運転したバスの運転者が、意識喪失によってトンネル内で接触事故を起こした事例があります。
うつ病の治療薬の一部にも、強い眠気を伴うものがあるので注意が必要です。
このほか、これからの季節は、重い花粉症のため、頭がボーッとして漫然運転に陥る危険性も無視できません。
医者が投薬の際に「自動車の運転を控えるように」と指導するケースもあります。
しかし、患者が毎日仕事で運転するドライバーであるとは知らずに、一般事務の従業員と思いこんでいる場合や、運転について意識しない医師の場合は、強く指導しなかったり、全く指摘することを忘れる可能性もあります。
ドライバー自身が医師に確認するように意識づけることが大切です。
管理者としては、健康診断の結果などにも留意し、疾病・薬の使用などと運転の可否を総合的に判断しましょう。
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