雨の季節が近づいてきました。意外に軽視されているのがタイヤの残り溝や空気圧の管理です。保有車両のタイヤについて、梅雨前にチェックしておきましょう。
青ナンバーの車はプロであり、「まさか」と思いますが、タクシーがタイヤの整備不良により3名もの死亡事故を起こした事例があります。
2007年7月4日、福岡県大牟田市内で客を乗せたタクシーが雨中を走行中、信号交差点にさしかってブレーキを踏んだところスリップして電柱に激突し、運転者と乗客の計3名が死亡する事故が発生しました。
タクシーの後輪2本は磨耗が進み、溝の深さは道路運送車両法で定められた数値(深さ1.6ミリ)よりも浅くなっていました。交差点手前から路外逸脱して信号柱まで約20m滑走したもので、タイヤの磨耗が事故に結びついたのは明らかです。
福岡区検察庁は「経費削減のためにタイヤ交換時期を先伸ばしにしたもので、故意でないにしても整備不良は会社の責任が大きい」と判断。法人としてのタクシー会社と、同社の社長と営業部長を道路交通法違反(整備不良)、道路運送車両法違反で起訴し、罰金刑が確定しました。
タイヤの残り溝が減少してくると、乗り心地などに影響はしますが、走れなくなるわけではないので、「もう少しは大丈夫だろう」と交換を先延ばしにしがちです。
とくに「もうすぐ車検」「買い替え前」といった時期には、「我慢しよう」とか、「大丈夫だろう」といった心理的要因が働くため要注意です。
日常的な点検・整備のなかで、足回りはもっとも重要です。タイヤは残り溝だけでなく空気圧が減少していても、雨の日はスリップしやすくなります。忙しい時期でもタイヤの日常点検と空気圧点検などは怠らないように注意しましょう。
新品のタイヤは、一般的に7~9ミリ程度の溝の深さがありますが溝の深さが1.6ミリを下回ると、溝の線が切れるスリップサインが現れます。
このサインが出たら交換の目安です。なお、スリップサインは1箇所でも出てきたら交換することが必要となり、これは道路運送車両法でも規定されているので、注意が必要です。
なお、タイヤ交換を先延ばしにすることを経費節減と勘違いしている事業所も少なくありませんが、これは誤った節減の方法です。
タイヤの交換コストは一見高いように感じますが、車体を常に支え安全走行には最も重要な部品ですから、燃料と同様に交換費用は必要経費と考えるべきです。わずかなタイヤ費用を気にして3名もの人命が失われ、多額の損害賠償が発生した事故を教訓としてください。
タイヤの経費を考えるなら、タイヤを傷ませないように使うため、以下のような管理・指導を徹底しましょう。
・空気圧を適正に管理する(最低1か月に1度は空気圧を点検)
・急発進、急ハンドル、急停止をしない
・無駄な荷物を積まない
・据え切りなど、タイヤに負荷をかけるハンドル操作をしない
・路面状態の悪い堤防道路などを避け、安全で快適な経路を選択する
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2017年改正指針に準拠し、道路交通法改正によって導入された中型自動車免許の内容もわかりやすく解説しています。