高い荷物を積んだ貨物車や高所作業車などが、高さ制限のあるガード・踏切で衝突し、鉄道の運行などに支障をきたす事故が依然として発生しています。
うっかり事故の一つと言えますが、管理面で立てておくべき防止策がないかチェックしておきましょう。
2011年7月28日午前10時ごろ、茨城県笠間市のJR常磐線の踏切で、ユニック車と呼ばれるクレーン付きトラックが、通過車両の高さ制限を示す架線を切ってしまい、常磐線上下線の11本が運休する事態となりました。
幸い人身被害はなく、昼には運行が再開されましたが、現場の架線は高さ4.5mあり、通常のトラックなら通行可能な高さですが、ドライバーがうっかりクレーンアームを上げたまま通行して架線を切ったものです。
このような事故は、鉄道ガードなどでもよく発生しています。大阪市天王寺区のJRガードでは、1年間に同じ場所で2回もコンテナ積載の大型トレーラが衝突する事故が発生した例があります。正確には、ガード手前の鉄製高さ制限枠=高さ3.8m=に衝突したものですが、大きな交通混乱を招きました。いずれも、コンテナ地上高は4m以上あったものの、ドライバーが高さ制限以上だと認識していなかったために衝突したものです。
運転席より高い後部車体(コンテナ)やユニック車などを運行する事業所では、点呼時などに指導するだけでなく、必ず運転席に「この車、車高=◯m」「高さ制限注意」といった掲示をして、ドライバー自身への車高情報の見える化を図り、気づきやすくするように配慮しましょう。
一般の事業所でも、臨時でルーフの上に何かを積む場合は、必ず運転席にそのことを掲示しましょう。ドライバーは運転を始めると高さが変わっていることを忘れてしまうことが多いからです。
また、ガードなどの直前で高さ制限に気づいても、後続車がいてバックできず「ギリギリなら大丈夫かもしれない」と行ってしまい、結局途中で立ち往生するケースもあります。こんなときは、たとえ時間を要してもガード手前で停止して警察に連絡することが重要です。
ある運送会社のドライバーがガードの手前で高さ制限の標識を見落とし、ガードに入ろうとして直前で危険に気づきストップしました。そのドライバーは無理をせず、110番通報して警察官の到着を待ち、指示を仰いだということです。警察官は後続の渋滞車を順番にバックさせてスペースを作り、トラックが安全に後退できるよう誘導してくれました。
迅速に連絡したので「今後は、標識の見落としに気をつけてください」と警察官に指導を受けただけですみ、結局、事故・違反にはなりませんでした。無理をしていれば、もっと多大な迷惑をかけていたはずですし、運輸局への報告事故(※)となる恐れもあります。こうした冷静な正しい判断ができるように指導しておきましょう。
また、ある事業所でトラックに防火水槽(高さ3.0m)を積載したドライバーが、決められた経路である踏切のある国道を通行しないで、抜け道の高架下トンネルを通行したため、高架手前の軒下防護ガードに衝突、ブレーキをかけたもののそのまま10m先の橋げたに衝突して破壊する事故を起こした事例もあります。
高架下は4mの高さ制限があり、積み荷のため車高は4.3m近くありました。また、この高架下はトラックの通行も禁止されていました。
ドライバーが渋滞する踏切を嫌って、決められた経路から逸脱したものですが、こうした危険がないようガードを通らない運行経路の指定をするだけでなく、その経路が「なぜ指定されているのか」という理由をよくドライバーに理解させましょう。
運送事業者は重大事故が発生した場合、「自動車事故報告規則」に基づき運輸支局へ事故報告書を提出する義務があります。死亡事故や重傷事故だけでなく、橋脚・架線など鉄道施設に衝突し3時間以上の鉄道運転を休止させた場合も含まれます。