■事故やトラブルの原因を隠すことの危険性

 最近、ある企業の管理者からこんな話を聞きました。
 「このごろ、支店・営業所から上がってくる事故報告書の記載があまりにも通り一遍で内容がない。どうも事故の原因隠しが起こっているようだ」
 支店など現場の管理者の安全意識が低下してくると、こうした問題が起こりがちです。

事業所の管理者の責任回避意識

事故隠し

 その企業は、パートタイマーや派遣社員を大量に雇用していますが、軽微な事故がなかなか減らず、事故防止対策に頭を痛めています。


 ところが、営業所からの事故報告書では、「わき見をしていて衝突」「パートの女性が注意を怠り追突」といった簡単な内容で、深い掘り下げのないものがほとんどです。運転者個人の責任・資質の問題と片づけてしまって、具体的で有効な事故防止対策のないまま、同種の事故が繰り返されるのです。


 一つの可能性として「現場の管理者が、自分の管理・指導の責任が追及されることを避けるため、事故原因の本質を隠している」ことが考えられそうです。

事故原因の一部を意図的に報告しない

事故原因隠しの問題点

 たとえば、事故発生時のスピードを実際より少なめに報告するケースです。実際にはスピードを出しすぎていて前車の減速に対応できずに追突しているケースでも、「不注意」などあいまいな原因ですましている可能性があります。


 事故時にスピードを出しすぎていたことがわかれば、日頃どのような管理・指導をしていたかが問われますし、何よりも無理な運行スケジュールにより、運転者がスピードを出さざるを得ない管理をしていることが本社に発覚するのを恐れている場合もあります。


 また、わき見は単なる運転者の個人的ミスではなく、経路不案内による標識や地図へのわき見が頻繁にあった結果起こることがあります。この場合は、出発前のミーティングや経路指導がきちんと行なわれていないといった問題が隠れているのです。

 

 このような現場の意識では、同種の事故が続発するのは避けられません。
 本来、あるべき現場の事故原因分析が報告書に記載されていない場合は注意しましょう。

直接、事故惹起者と話すことの重要性

 ある企業の管理者は、事故報告書の内容を補うために、運転者名をチェックしてその運転者に直接連絡をとり、事故の内容を詳しく聞くように努めています。


 直接コンタクトを取ると、事故報告書では見えなかった問題点が見えてきます。
 たとえば、報告書では「バック時に他車のドアに当たった物損事故」とあっても、実際は相手車の運転者が間一髪気づいてくれたお陰で降車を遅らせドア衝突ですんだ事例で、携帯電話を見ながらバックしていてもう少しで人身事故になる恐れがあったことがわかることなどがあります。被害金額では判断できない重大な見落としであり、再発防止策を真剣に考える必要があります。


 また、「何で支店長に報告書を出したのに、また本社に説明しなければいけないのか」という意識の運転者もいますが、「君が会社の車で事故を起こしたんだ!会社の責任者としては本人から直接話を聞くのは当然ではないか」と言えば、相手も納得します。自分が、会社にとって大変なことをしたんだという自覚を与えることにも繋がります。

事故現場調査の必要性

 なお、事故の現場を調査することも重要です。

 あるベテラン運行管理者は、協力会社の構内で歩行者と車の接触事故が発生したとき、「運転者の不注意で見落としました → 今後は安全確認を徹底させます」といった報告を受けましたが、それを鵜呑みにしないで、どんな状況だったのかを直接見にいきました。

 

 すると、「歩行者とフォークリフト・車両の経路が区別されていない」「荷卸時にも現場を監督する人員がいない」「誰が指示を出すか明確になっていない」といった事故を誘発する実態があることが判明したそうです。

 

 そうした要因を把握し、現場の人員と話し合うことで、
 ●パイロン・ポールで経路を明確化し歩行者が入れないようにする
 ●後退する車には必ず誘導者を配置する
 ●リフトマンやドライバーの安全確認呼称を聞いてから作業者が動くことを徹底する

──などの具体的な対策をとることができました。

現場だけを責めないで対策を援助する

 管理者としても、事故を起こしたときにだけ現場の責任を追及し、現場での安全運転教育を強化しろと圧力をかけたり、今まで現場の実態をよく調査しないまま通り一遍の事故防止対策を押し付けてきていないか、反省する姿勢が必要です。


 現場の方には「本社が聞く耳を持たないから、こちらも報告する気が失せるんだ」という意識があるかもしれません。
 日頃から運転者教育をバックアップして、現場の意見を聞きながら対策をすすめる姿勢を示すことが大切です。

 

 「事故原因の分析会議」は本社の担当者が入って協同で行い、パート社員や派遣社員を含めた現場の人たちがどういった安全意識をもっているかを把握した上で、現場の管理者や運転者自身の意見を尊重しながら対処方法を考えていきましょう。
 さらに、事故原因をあいまいにすることが同種事故の再発につながっていることを説明し、事故の真の原因を解決するために本社と現場が腹を割った話し合いをすることを訴えることも重要です。
 こうした努力を示すことで、事故隠しや原因隠しといった例も少なくなっていきます。

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