セルフチェックシリーズ『うっかり事故の危険度をチェックしよう』は、うっかり事故の要因を、「先急ぎ」「わき見・漫然」「思い込み」の3つの側面から自己チェックして、自分自身が「うっかり」しやすい要因に気付いてもらうことを目指した媒体です。
安全運転態度の高い運転者であっても、「うっかり、思い込み」から交通事故を起こしたり、ヒヤリ・ハットすることが少なくありません。自分がわき見や思い込みなどをしやす要因を自覚することが、うっかり事故の防止に結びつきます。
小社の顧客である、自動車ディーラーの東京トヨペット株式会社(本社・東京都港区)では、毎年春・秋の交通安全運動の時期などをとらえて、事故防止意識を高めるための活動を全社的に展開していますが、今年度は、「うっかり事故の危険度チェック」を採用して、全社員(約3千名)に実施してもらい、運転時の「うっかり」や「思い込み」に対して反省を促しました。
さらに、同社では個人の気づきを促しただけでなく、各自の回答を社内ネットアンケートで集計し、会社全体ではどのような「うっかり・思い込み、脇見」要因が多いのかを分析しました。
営業所や部署ごとの特徴も明らかにして、その結果を職場にフィードバックし、うっかり事故に注意する目標を策定して取り組んでいます。
編集部も大変参考になりましたので、活動の一部を紹介します。
今回の指導を企画した同社のコンプライアンス統括推進部では、社員全員に「うっかり事故危険度」をチェックして、各自に最終ページの行動目標を記載してもらって結果を集めました。
その内容を、部署・拠点ごとに整理し、部署の全員の行動目標を記載した一覧表を作成しました。
この一覧表をそれぞれの部署や営業所などで掲示して、各自の安全運転行動目標の「見える化」を図ったわけです。
「やはり、ドライバーそれぞれが自分自身で、自分の弱点に気づいてもらうことが事故防止にはもっとも効果的ですから、それを最大限利用させていただきました」
さらに、同統括推進部では、全社員のデータをとるために、各自がチェックシートに記入した内容を、社内ネット上でアンケート調査しました。
社内ネット上にシートの質問項目と同じ項目を記載した質問ページを設けたのですが、この手間をかけたおかげで、各社員は自分がシートに記載した「ハイ・イイエ」の回答をネット上でチェックして送信するだけですから、全員のデータをすぐ入手することができました。
自分が運転中にうっかりしたり、脇見したことがある項目として「ハイ」に当てはまるものが、どれだけあるのかを見ることによって、全社的にみて、どの辺りが弱点かを調べたわけです 。
その結果、「事故現場に出くわした時、つい脇見をしてしまう」という項目が顕著に多いなどの傾向があきらかになり、これを元にして全社的な、うっかり事故防止の重点目標を設けました。
全社的な傾向値だけでなく、各部署・拠点別の傾向値も調べました。全社平均と比べてとくに「ハイ」のパーセンテージの高い項目は、その職場において気をつけるべき点と言えます。そこで、各拠点別の安全運転行動目標も作成してもらい、掲示することにしました。
たとえば、「渋滞を抜けた後についスピードを出してしまう」といった項目の割合が高かった部署では、「渋滞後の先急ぎ(スピードアップ)はしない」といった行動目標を立てたわけです。
この活動に対しては「自分では見過ごしていた、ヒヤリ・ハットする状況が自覚できて非常によかった」と社内の各部署から好意的な反響があっただけでなく、日常的な安全活動の話題を提供しました。
同社では、毎月「考える日」というディスカッションデーを設けて、各拠点でフリーテーマにより「様々な考えられるリスクを減らそう」とリスク管理の話し合いをしています。
この日の話し合いのテーマにも、「運転中にうっかりしやすい要因」「わき見運転に陥りやすい内容」などが話題となり、新しい安全目標を設定するきっかけとなることもありました。
また社内だけでなく、法人営業担当部署からは「自分たちがやってみて、とてもよいと感じたので、お客様にも紹介したい」という要望があり、顧客に対して「うっかり事故危険度チェック」の冊子をノベルティグッズとして配布したそうです。
「質問形式なので、押し付けがましい内容とは受け取られません。法人の顧客など車を複数台利用されているお客様にも、交通安全の働きかけをすることは、当社の交通安全に対する姿勢を示すことにつながります」と、同社では今後も、啓蒙活動に力をいれていく姿勢を示しました。
【取材協力──東京トヨペット㈱コンプライアンス統括推進部】