「歩行者の交通事故」をテーマにした研究発表会(ITARDA)

 財団法人交通事故総合分析センター(ITARDA)は10月3日(月)東京都千代田区のアルカディア市ヶ谷(私学会館)において、第14回交通事故調査・分析研究発表会を開催しました。


 今回は、平成21年に歩行中の死者数が自動車乗車中の死者数を抜いてトップとなった他、人対車両の事故件数が車両相互事故、車両単独事故ほどの減少が見られないこと、65歳以上の高齢者では歩行中の死者が多いことなどから、「歩行者の交通事故」がテーマに設定されました。

高齢歩行者の道路横断中事故の分析

 今回の発表会では、約4時間の間に6つの研究発表が行われましたが、同研究センター研究部の舟山健司氏による「高齢歩行者 道路横断中事故の分析」の発表について紹介します。

「死亡・重傷事故」と「重傷・軽症事故」では発生場所や時間が異なる

 平成22年中の高齢歩行者(65歳以上の歩行者)事故は1,228人と全交通死亡事故の約25%を占めています。


 高齢歩行者の多発事故形態は、「死亡・重傷事故」が単路で横断歩道以外を横断中の事故であり、「重傷・軽傷事故」が信号交差点で横断歩道を横断中の事故であることが紹介されました。

 

 また過去10年間(平成13年~22年)のデータによると、「死亡事故」は横断歩道以外の単路で夕方の17時~19時台に多く発生していますが、「軽傷事故」は信号交差点において、朝の9時~11時台に多発していることがわかりました。


 舟山氏は、夜間に横断歩道外の単路で「死亡事故」が多く発生しているのは、運転者の横断歩行者の発見遅れが原因の一つとして考えられ、午前中に横断歩道での「軽傷事故」が多い原因として、「買い物」や「散歩」など高齢者の交通量に比例して発生しているのではないかと分析しています。

横断の後半での衝突が67.4%

 高齢歩行者に限定して、横断歩道外の単路での夜間事故を分析してみると、67.4%が横断の後半に衝突されていることがわかりました。


 つまり、高齢歩行者の左側からやってくる車に衝突するケースです。これは、他の年齢層と比較して、11.1%高くなっており、高齢歩行者は遠方の車の速度や距離間隔を見誤りやすいことがわかります。

 また下図のように、交差点の近くなどでは高齢歩行者が横断を開始した時には確認できなかった、右折や左折の車に衝突されるケースも紹介されました。

 

 運転者は右折や左折を終えて、横断歩道を通過したら油断しがちですが、その先にいる歩行者にも十分注意を払う必要があるのです。

運転者の人的事故要因の90.8%が「発見の遅れ」

 一方、横断歩道のない単路を右側から横断してくる高齢歩行者との夜間死亡事故において、運転者の人的事故要因の90.8%が「発見の遅れ」です。


 夜間の道路の右側は街路灯が少なく、また車のヘッドライトも若干左側を照らすようになっているため、見通しが悪いのが原因の一つです。


 また、「発見の遅れ」について運転者の話が聞けた19件を分析したところ、11件が「他のものに注意を向けていた」と答え、そのうち4件は「信号機を見ていた」と答えました。他には考え事などの「漫然運転」や、「対向車線の渋滞車両で見えなかった」という回答が得られています。

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12月24日(火)

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