危険運転の根絶はあなたから!
川崎医療福祉大学臨床心理学科学科長 金光義弘
金光教授はマイクロメイト岡山と共同で、2006年から飲酒が運転に与える影響を調べる実験を毎年行なっています。
飲酒による運転操作への影響は個人差が大きいのですが、認知や判断を司る脳に対して、あらゆる影響を及ぼすことがこの実験により具体的に明らかになってきました。
今回は、これまでの実験によって分かった飲酒が脳の機能に与える影響について発表が行われました。
飲酒量が各機能に与える影響を調べる実験では、21才~70才の男女24人が被験者となり、まず2単位(※)を飲酒し、各機能を検査し、そののち更に2単位を飲酒して(合計4単位)再度、各機能の検査を行いました。
その結果、主観的な酔いの自覚と、呼気に含まれるアルコール濃度には全く関係がないことがわかりました。
3単位を飲んだ被験者の多くは飲酒後30分後に「酔いが回った」と感じ、3時間後には「酔いが覚めた」と感じていますが、呼気アルコール濃度は飲酒直後が最大で、30分後には大きく低下しています。しかし、3時間たっても呼気中アルコール濃度の数値は高いままです。
また、2単位を飲んだ被験者の約65%、4単位を飲んだ被験者の約40%は、酔いを自覚していても、「まだ運転できる」と感じていることがわかりました。
※アルコールの単位…純アルコール20gが1単位とされている。ビール500ml、日本酒1合が1単位となる。
飲酒をすると視力が悪くなるといったイメージが強いかと思います。しかしながら実験の結果、飲酒をしても静止視力、動体視力は飲酒前と一切変わらないことがわかりました。
しかし、運転に必要な認知能力は大きく低下してしまいます。物の奥行きを見る深視力や、動体認知能力も低下し、飲酒運転では追突事故の可能性が高まります。
また夜間における視認能力も大きく低下するため、飲酒して夜間運転をすると正常な運転ができなくなるのです。
飲酒が翌朝の運転に及ぼす影響を調べる実験では、被験者が7単位のアルコールを飲み、8時間の睡眠を取った後の影響を調べました。
その結果、14人中3人の被験者の呼気から1リットルあたり0.22g以上のアルコールが検出されました。
また、アルコールが検知されなかった被験者でも8割が光を捉える能力に低下が見られました。
ここでも、被験者は「一晩眠れば大丈夫」、「少しボーっとしているが運転はできる」といったような自覚で、主観的な酔いの自覚と、呼気アルコール濃度や機能低下とのギャップがここでも見られました。
実験によって飲酒が脳に与える影響は、ある人は認知能力が低下し、またある人は判断能力が低下するといったように、個人差があることがわかりました。
しかし、たとえ飲酒し、そのときは事故に至らなくても、それは偶然であり、飲酒は確実に運転に関する脳の機能を低下させるため、運転状況や環境によっていつ事故を起こしても不思議ではないのです。
今後も、このような実験を通じて、飲酒運転の危険性をより多くの人々に体験・理解してもらい、草の根で飲酒運転の防止を図っていきたいと考えています。