運転者教育のあり方~飲酒運転根絶の前提条件

運転者教育のあり方~飲酒運転根絶の前提条件

交通評論家 矢橋 昇

 

 矢橋氏は飲酒運転根絶のための前提要素として、交通社会における規則やルールを守る重要性を理解することや、その実現のために行われている諸外国の教育手法などを紹介しました。

規則の趣旨や根拠を教える必要性

スイスでは教科に交通安全教育が取り入れられている
スイスでは教科に交通安全教育が取り入れられている

 未だに飲酒運転をやめない人は、アルコール依存傾向を有していたり、順法意識が乏しい傾向があります。


 この内の順法意識の乏しい人というのは、もとより規則を守ろうという意識の低い人もいますが、問題なのは規則の趣旨や根拠が正しく理解できていない人の多さです。

 

 日本における順法指導の実情として「規則だから従え」という押し付けになっており、そこから「見つからなければ」といった面従腹背的な態度や、「事故さえ起こさなければ」という気持ちからの違反行動が生まれています。

 

 本来ならば、他人の権利を侵さぬ道路利用意識・態度や、その為の基準となる交通規則の確実な習得、危険に対する感受性と対応能力といった理念(考え方)の養成が必要なのですが、残念ながらこれらの自らが正しく行動し、危険を排除し安全を作り出せる道路利用者の育成が日本では遅れています。

 

 スイスでは、小学校の教科に交通安全が組み入れられており、幼い頃から交通規則の重要性がきちんと教えられています。それを教える警察官も、子供に教育をするための資格を有しているのです。

歩行者、自転車、自動車の共存を

車線の真ん中に設置された自転車道
車線の真ん中に設置された自転車道

 ここに来て、自転車の交通問題が大きく取り上げられています。


 スイスを視察した際に目にした光景ですが、バスの後方を走行していた自転車が、バスが停車して乗客が乗り降りする間、停まって待っていました。また、写真のように、時速50kmで走行する自動車の2本の車線の真ん中に自転車道が設置され、自転車がそこを走行していました。


 また、歩行者も自転車も自動車も同じ道路を走行する歩行者優先の道路があります。そこでも自動車が低速で近づいてくると歩行者は自然に避けるので、自動車はスムーズに走行することができるのです。
 このように歩行者や自転車、車が共存しているのが交通先進国の姿なのです。

 

 残念ながら日本では、このような努力をせず、自転車の問題を放置していたがために現在のような危険な状態になってしまいました。
 ヨーロッパのように歩車共存という考え方を日本も取り戻すべきではないでしょうか?

運転者として負うべき責任を理解する

違反回数と事故の関係(クリックすると拡大します)
違反回数と事故の関係(クリックすると拡大します)

 ある事業所で調査したところ、違反回数が増えれば増えるほど事故をする回数が増えるということがわかりました。


 これは交通ルールを守ることは自分を事故から守る最大の武器になり、逆に違法行為は確実に危険を引き寄せるということを表しています。

 

 日本では、交通ルールはお上が決めた自分の行動を制限するものとして捉えられがちですが、本来は皆で決めた、道路利用上の約束事です。この約束事を守ることが他人に迷惑を及ぼすことも防いでくれますし、自分を守ることにもなるのです。

 

 運転手として負うべき責任としては、危険作業に従事しているのだという認識や、皆と道路を分けあって使っているという意識です。そのためには的確な運転操作の習熟はもちろんのこと、特に規則の意味を理解し、順守するということが求められているのです。

 

 運転者としての責任を果たそうとすれば、飲酒が運転に与える影響もしっかりと理解しておかなくてはなりません。理解していれば飲酒運転になろうはずがないからです。同じように、薬品や疲労など運転への集中を妨げるものは一切排除しなければならないのです。

飲酒運転撲滅には規則が守られ機能する交通環境が必要

 飲酒運転の下地には、現在の違反容認の交通社会全体の風潮があります。「これぐらいならいいか」といった甘い気持ちが飲酒運転につながるのです。


 良識のある人でも、こと交通ルールということに関してはルーズになってしまいます。いかなる違法行為も断固として許さぬ毅然とした態度を示さなければなりません。


 何より大切なことは、交通のすべての場面で「規則を大切にし、秩序正しい行動を心がけるのが当然の心得だ」という良識を道路利用者にゆきわたらせることです。そしてその規則がきちんと機能する交通環境の整備が求められています。

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12月27日(金)

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