◆車の前を横切った過失の重大性を指摘
最近、自転車の危険行動が問題になっていますが、大阪で死亡事故に結びつく自転車の過失に関する裁判があり、2011年11月28日、大阪地裁は被告の男性(60)に禁錮2年の実刑判決(求刑禁錮3年6月)を言い渡しました。
この事故は、2011年5月に大阪市浪速区で発生、タンクローリーが歩道に乗り上げ、歩行中の男性2人が死亡しましたが、直前に被告が自転車で道路を横断し、タンクローリー車の横を走行していたワゴン車の前を横切ったことが事故を誘発したとして、重過失致死罪に問われていました。
地裁の裁判官は「注意の欠如は甚だしいばかりか、信号待ちという当然の事柄を嫌がり、周囲の交通に多大な影響を及ぼす行為に自ら進んで出たもので、安易で身勝手な行動が事故を招いた」と自転車の過失を厳しく批判し、自転車では異例の実刑判決を言い渡しました。
被告側は、「車が人を殺しているのに自分だけなんで有罪なのか」と異議をとなえましたが、裁判官は「車の運転者の回避行動は異常と言えず適切だった。あなた(被告)の行動に問題があった」と愉しました。
※この自転車利用者はその後、運転免許証の停止処分を受けています。 → こちらを参照
《事故の概要》
自転車の危険な横断で歩道上の歩行者が2人死亡
この事故は2011年5月12日、大阪市の国道25号線で発生しました。
片側2車線の右側車線を走行していたワゴン車が、右から来た自転車を避けようと左車線に入って来たため、左車線にいたタンクローリーは乗用車を避けようとして左側歩道に乗り上げて、通行人が2名死亡したものです。
警察はワゴン車、タンクローリーの運転者とともに、事故を誘発した自転車の男性も「重過失致死」の疑いで逮捕しましたが、ワゴン車とタンクローリーの運転者はその後釈放され、大阪地検はいずれの車の運転者も嫌疑不十分で不起訴としました。
重過失致死傷罪(刑法211条)
1 業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは禁錮または100万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。
※普通の過失致死傷罪(刑法209.210条)には懲役・禁錮刑の定めがないのに対し、重過失致死傷罪は業務上過失致死傷や自動車運転過失致死傷罪と同じく懲役・禁錮の規定がある。
(2012年1月13日更新)
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