執行猶予つきですが、過去にも自転車利用者が死亡事故を誘発したため重過失罪を認めた判例があります。
◆バイクが自転車と衝突して転倒後、バイク運転者が対向車にひかれて死亡
──禁錮1年・執行猶予3年(福岡地裁 2009年9月18日判決)
2008年1月、福岡市博多区で左折のみ可能な一時停止標識のある交差点から自転車が一時停止をせずに直進し、国道を直進してきたオートバイと衝突、オートバイのライダーが対向車線に投げ出され、対向車にひかれて死亡する事故が発生しました。
この事故で自転車に乗っていた26歳の男性が「重過失致死罪」に問われ、福岡地裁は「標識に従い直進を控えるべき、たとえ直進する場合でも交差点手前で一時停止し、左右の安全確認すべきだった。一時停止や左右の安全確認を怠ったのは重大な過失にあたる」として禁固1年、執行猶予3年(求刑・禁固1年4月)の有罪判決を言い渡しました。
被告側は無罪を主張して控訴しましたが、控訴審の福岡高裁も2010年3月10日に一審判決を支持して控訴を棄却しました。
自転車の交通事故は常に重過失致死傷罪になるとは限らず、被害程度によって「過失傷害罪」に問われ、略式起訴で処理されるケースも多くあります。
下は過失傷害罪について被告側が争い、正式裁判となった例です。
◆信号無視の自転車と車が衝突、車の運転者が重傷を負う
──罰金30万円 ( 福岡高裁 2010年2月17日判決)
2008年10月、福岡市博多区の交差点で赤信号の横断歩道を渡っていた自転車と道路を直進していた乗用車の左前部が接触、ハンドルを切った乗用車は中央分離帯にぶつかり、運転者は首などに重傷を負いました。
福岡区検は2009年5月、自転車の男性を過失傷害罪で略式起訴しましたが、被告が略式処分を受け入れなかったため、正式裁判に移行し、自転車側は「双方が赤信号で交差点に入った」と主張しました。
しかし、一審・福岡簡裁は、乗用車側の信号は黄色だったとした上で「自転車の被告が赤信号を確認しなかった」として、罰金30万円(求刑どおり)の有罪判決を言い渡しました。
被告は控訴しましたが、福岡高裁は簡裁判決を支持し、被告側の控訴を棄却しました。
(2012年1月13日更新)
過失傷害罪(刑法209条)
1 過失により人を傷害した者は、30万円以下の罰金又は科料に処する。
2 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
過失致死罪(刑法210条)
過失により人を死亡させた者は、50万円以下の罰金に処する。