平成24年4月1日から交通ルールが一部改正されましたが(道路交通法施行規則)、管理者の皆さんは、改正の意味をよく理解して事業所のドライバーに指導したでしょうか。
道路交通法などが変わったときは、ドライバーの交通ルールの理解度やルール違反に対する意識を確かめるよいチャンスです。
交通事故と比べて意外に軽視されやすいのが違反への意識ですが、法改正などの機会に交通ルールのテストをしたり、ドライバーと話しあったりして、理解を深めましょう。
一般のドライバーに関係の深い改正は、右折矢印信号で転回が可能になったことでしょう。
では、なぜこの時期、右折矢印で転回(Uターン)が違反ではなくなったのかその理由を説明できたでしょうか?
交通ルールが改正されたその背景を教えることで、交差点における転回行動の実態と危険などを教えることができます。
右折矢印信号については、2012年3月31日まで右折が認められていただけで、転回は違反でした。
「車両は、黄色の灯火又は赤色の灯火の信号にかかわらず、矢印の方向に進行することができる」(道路交通法施行令)とされていますが、転回は右矢印の方向に含まれていませんでしたから、赤信号で右折矢印のときに転回すると、信号無視として違反切符を切られました。
しかし実際には、転回しようとする車は右折レーンのなかで待つことが多いので、右折矢印が出ても転回できないのであれば交差点に滞留します。交差点によっては、転回待ちの車1台のために後続の右折車が右折できないで渋滞するという事態も発生していました。
右折矢印信号の時には対向車線の直進車は赤信号なのでターンする車にとっては安心なのですが、このとき転回できないなら青信号の間に転回するしかありません。
ところが青信号の段階では対向直進車がくるので、転回はかえって危険となってしまい、ここにも矛盾がありました。
もう一つ大きな問題は、歩車分離交差点が出現したことです。こうした交差点では、主信号は赤のまま青矢印だけで車両の流れを制御しています。転回矢印が出ないと、その交差点は実質的に転回できないことになります。転回禁止交差点であればともかく、転回ができる交差点では困ります。
こうした問題に対処するために、東京都などでは「転回矢印信号」を独自に作成・設置していた例もあります(4月1日から運用停止)。
このように、広い交差点で複数の右折レーンや歩車分離信号が整備されるなど、交通の状況が変わったことに対応して、交通ルールも変わっていくということを教育しましょう。
しかし、たとえ右折矢印信号がでても、従来から転回禁止(Uターン禁止)の交差点では転回できません。このことも十分に周知しておく必要があります。
転回が禁止される場所があるのは何故かということを考えさせることが大切です。
転回禁止の交差点を見ていると、その前後の交差点や道路の途中も転回禁止であることが多いことに気づきます。つまり、その道路に転回の規制がかかっているのです。
「交差点が転回禁止なら、その前後でUターンしてやろう」などという行動に走るのは愚の骨頂ということです。
転回中に停止したり切り返しをせざる得ない幅員の道路では転回行為が対向車との事故を誘発します。大型車の場合はとくに危険です。路側帯にいる対向車線の歩行者なども見落としがちです。交通量が多く流れが速かったり道路施設からの出入りの多い場所でも、転回は道路横断と同様に事故の危険が増えます。
また、坂道やカーブなどで見通しの悪い道路箇所も転回を禁止している場合があります。「ここは危険が大きいから転回できない」と考えさせることが大切です。