4月下旬から連休にかけて、通学路などにおける悲惨な交通事故のニュース報道が相次ぎました。
また、関越道で4月29日に発生したツアーバス事故については、予定された経路とは別の高速道路で事故が発生し、経路管理の不徹底なども問題とされました。
運転経路の管理・指導は徹底しているでしょうか。もう一度見直しておきましょう。
2012年(平成24年)4月23日、京都府亀岡市で登校中の児童が3名死亡し多数が重軽傷を負う交通事故が起こった通学路は、歩道もない幅員の狭い生活道路でした。
こうした生活道路等における人身事故については、以前から問題になっていました。
全国的な交通事故の発生件数は、ここ10年で2割近く減少していますが、生活道路といわれる道路(車道幅員 5.5m未満の道路)での交通事故発生件数は10年で約8%の減少にとどまり、事故全体に占める割合は高くなっています。
事業所のマイカー通勤者や営業車の運転者などが、ガードレールも歩道もない生活道路に安易に入らないようにする必要があります。
危険箇所マップを作成して通行を禁止する経路を指定するなど、遠回りであっても危険の少ない経路を選択するように指導しましょう。
また、幼い子どもの多い団地内の道路では、車を止めて歩いて訪問・配達に努めることなどにも配慮しましょう。
なお、歩車道の区分のない通学路では時間帯を指定して車両進入禁止にしていることがあります(歩行者専用道路の標識と補助標識で指示する場合もあります)。そうした道路に間違えて進入しないように確認しておくことも大切です。
ある通信サービス業の事業所では、毎朝、現場スタッフの管理者(副安全運転管理者)が出発直前にドライバーに運転経路の確認をするようにしています。
スラスラと予定経路の申告ができないドライバーは、業務の効率性などに問題があるので、計画的に仕事をしているかをチェックする意味もあります。
経路の予定を聞いて、渋滞する時間帯に混雑する場所を通過する計画などがあれば、代替ルートがないかを考えさせたり、以前に人身事故の発生した危険な交差点が含まれるようであれば、別の交差点で右左折するようアドバイスしています。
また雨の日に、運転経験の浅いドライバーが、アップダウンの多い山越えの道路を走行するような計画をしている場合は、スリップ事故の危険が高まります。遠回りでも、坂の少ない幹線道路や透過性舗装のバイパス等を選択するように指導しています。
このように経路を調査し、少しでも危険要因を少なくするための選択に努めましょう。
関越道で発生したツアーバス居眠事故では、ドライバーへの「運行指示書」が作成されていないことや、点呼の未実施など数十点の法令違反が指摘されていました。
貸切バスや貨物運送(48時間を超える運行)などを営む事業用自動車では、運行前には運行計画にそった運行指示書をドライバーに渡して、経路や休憩地点などを指示することが義務づけられていますが(※)、実際にどの程度まで徹底しているでしょうか。
あるトラック物流企業で、下請協力会社の乗務記録を調べたところ、高速道路を走行する計画で運賃などを支払っているにも関わらず、協力会社のドライバーは会社の指示で下の一般道路を走行し、高速道路料金分の経費を浮かしていることがわかりました。
休憩時間を削って一般道路を長時間走行することになるため、それだけドライバーの負担は大きくなり、居眠運転などの危険性が高まります。
こうした実態を看過していれば、いずれ大きな人身事故につながり、元請けも運行供用者としての責任を負うことになります。
この物流企業では、まだ交通事故が発生していないとはいえ、安全対策を最優先に考え、経路を勝手に変更した下請運送会社に対して協力会社としての契約を解除することを通告しました。
また、他の協力会社にも運行指示書通りの運行を徹底するように求めました。
(2012.5.14更新)
旅客自動車運送事業運輸規則
(運行指示書による指示等)
第二十八条の二
一般貸切旅客自動車運送事業者は、運行ごとに次の各号に掲げる事項を記載した運行指示書を作成し、かつ、これにより事業用自動車の運転者に対し適切な指示を行うとともに、これを当該運転者に携行させなければならない。ただし、法第二十一条第二号 の規定による許可を受けて乗合旅客を運送する場合にあつては、この限りでない。
一 運行の開始及び終了の地点及び日時
二 乗務員の氏名
三 運行の経路並びに主な経由地における発車及び到着の日時
四 旅客が乗車する区間
五 運行に際して注意を要する箇所の位置
六 乗務員の休憩地点及び休憩時間(休憩がある場合に限る)
七 乗務員の運転又は業務の交替の地点(運転又は業務の交替がある場合に限る)
八 第二十一条第三項の睡眠に必要な施設の名称及び位置
九 運送契約の相手方の氏名又は名称
十 その他運行の安全を確保するために必要な事項
2 一般貸切旅客自動車運送事業者は、前項の規定による運行指示書を運行の終了の日から1年間保存しなければならない。
貨物自動車運送事業輸送安全規則
(運行指示書による指示等)
第九条の三
一般貨物自動車運送事業者等は、第七条第三項に規定する乗務を含む運行ごとに、次の各号に掲げる事項を記載した運行指示書を作成し、これにより事業用自動車の運転者に対し適切な指示を行い、及びこれを当該運転者に携行させなければならない。
一 運行の開始及び終了の地点及び日時
二 乗務員の氏名
三 運行の経路並びに主な経過地における発車及び到着の日時
四 運行に際して注意を要する箇所の位置
五 乗務員の休憩地点及び休憩時間(休憩がある場合に限る)
六 乗務員の運転又は業務の交替の地点(運転又は業務の交替がある場合に限る)
七 その他運行の安全を確保するために必要な事項
2,3,略
4 一般貨物自動車運送事業者等は、運行指示書及びその写しを運行の終了の日から1年間保存しなければならない。
※第七条第三項に規定する乗務とは、いわゆる48時間を超える中間点呼を必要とする乗務。
指導用テキスト「バス事業者のための点呼ツール」は、点呼の実施方法から解説し、指導用イラストとして実際に点呼をする際に役立つ「安全指導場面」を30場面収録した、バス事業者様のための点呼用教材です。
言葉だけでは伝わりにくい安全運転のポイントや注意事項も、イラストがあればより具体的に危険や安全運転ポイントをイメージすることができます。
また、近年改正された道路運送法や、運輸規則等の改正もわかりやすく解説しています(2018年6月1日改正の新たな指導・監督指針は追補資料を同封)。