全国安全週間の準備期間が始まっています。
7月1日~7日の本週間に向けて、労働災害や交通事故防止のために、職場において実施する安全点検の進捗状況は順調でしょうか。
今回は、新規採用者や配置転換者への安全教育の徹底について、とくに再雇用労働者への指導という観点でみてみましょう。
最近、定年後の再雇用労働者を活用する職場が増えています。ベテランで経験もある再雇用スタッフの場合、あまり指導の必要はないように見えますが、意外に盲点があるので気をつけておきましょう。こんな事故事例があります。
■元「安全指導担当者」の
フォークリフト挟まれ事故
ある大手運送会社で、安全指導を担当していたベテラン管理者が定年を迎えましたが、本人と現場の希望もあり、フォークリフトの作業者として会社に延長雇用されたところ、重大事故にあったのです。
事故は、ちょっとした「うっかり」で起こりました。リーチフォークリフトの動力を止めずに、近くの荷物のずれを直そうとして身体を乗り出したとき、滑ってリフトから身体が落ちかけて、動き出したリフトと壁の間に挟まれて死亡したのです。
被害者は、長年指導職だったため、フォークリフト作業は久しぶりで、安全の基本を忘れていたのですが、現場では、「有資格者だし、安全管理の専門家だったのだから」と過信して、雇入時の安全教育を実施していませんでした。
労働安全衛生規則の第35条に「雇入時安全衛生教育」の項目があり、「労働者を雇い入れたり作業内容を変更したときは、安全衛生のための必要事項について、教育を行なわなければならない」と定めています。
これは、学卒の若い新入社員はもちろん、ベテランの経験者と言われる人であっても同等です。
●先輩だったから
●経験者に見えるから
●作業が上手だから
といった理由で、安全指導をためらっていませんか?現場の機械や安全のルールは日々変化しています。全員への必要な教育を徹底しましょう。
バス会社などでも、近距離路線などを中心に運転者の再雇用を行う企業があります。再雇用の中高年ドライバーは経験豊富な割に賃金コストが安いというメリットがありますが、安全面では問題点も指摘されています。
ある乗合バスの企業で回送時の物損事故が増えたので、調査したところ、その多くが60歳以上のフルタイム再雇用ドライバーやパートタイムのOBドライバーだったということです。
事故の原因を分析すると、「安全確認の省略」「早すぎる連続操作」「動静不注視」といったうっかり事故が多く、運転操作能力が未熟だったり視力など身体能力が低下しているために発生している事故ではありませんでした。
「まだ十分やれる」と考えられるシニアドライバーや若いときは優良ドライバーと言われた人に、なぜミスが多いのでしょうか。
このバス会社の安全担当者は次のように分析しています。
●「自分はベテラン」「操作が上手」という過信、油断がある
● 給与が半減して「腰掛け」意識になり、緊張感が薄れがちである
● 現場の管理者が年上の先輩への安全教育を遠慮している
ベテランの豊富な安全知識や危険体験は、現場の若いドライバーの重要な情報となりますので、彼らのノウハウを活かすことこそ、再雇用のメリットです。
再雇用ドライバーを安全教育の場から排除しないで、むしろ積極的に参加してもらい、彼らの安全知識やヒヤリ・ハット体験を提供してもらいましょう。
その中で、うっかり事故はむしろベテランに多いことを強調し、自覚を促してくことが重要です。
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フォークリフトは汎用機、使いやすいだけに気が緩み、事故が多発しています。
運転資格取得後も5年に1回は「フォークリフト運転従事者安全教育」を実施する必要があるのは、このためです。
本誌は、歩行者との接触や振動による荷崩れなど、フォークリフト乗車中に発生した事故事例を取り上げ、それぞれの事故の原因分析、オペレーターが陥りやすい落とし穴を解説しています。社内教育や登録教育機関におけるオペレーター指導の資料として最適です。