4月29日に関越道で高速ツアーバスの居眠り運転事故が起こり、7名の方が亡くなる大惨事となりました。
今回の事故は、どの事業所にとっても対岸の火事ではなく、ドライバーの過労運転防止を含めた運行管理の在り方について、再度検証の必要性と改めて運行管理徹底の重要性を示す事故だったといえます。
7月は気温も上がり、蒸し暑い日も多いので、プロドライバーはもちろん、一般ドライバーでも運転疲労がたまりがちです。居眠り運転の防止に尽力しましょう。
(※以下,物流技術研究会のすすめる「居眠り運転防止指導」を参考にまとめました)
■点呼、朝礼時の観察の徹底
事業用自動車の事業所では、対面点呼を徹底して、運転者の体調を把握し管理を徹底しましょう。また、一般事業所でも、朝礼などの機会に健康観察をして睡眠不足のドライバーの発見に努めてください。
職場での相互観察なども重要です。休み明けなどに疲れているドライバーが発見されたら、代替運行措置をとりましょう。
■安心して休憩できる体制づくり
ドライバーが居眠り運転に陥る大きな要因は、「無理をしても運行を続けなければ、周囲に迷惑をかける」という責任感が影響しています。このため、居眠りの兆候に気づいても、なかなか休憩するのには勇気がいります。
こうした実態を踏まえて、かねてより居眠り運転防止に尽力するタカラ物流システム㈱では、「勇気を持って寝よう」を合言葉に、ドライバーが安心して休憩できる職場作りをすすめています。
そのために以下の点を管理者が努力することです。
★ ドライバーが眠いことを理由に休憩した場合は、延着しても叱らない
★ 先方への延着連絡は管理部門からする。ドライバーに押し付けない
★ 「勇気を持って眠った人」こそ真に優秀なドライバーであると評価する
■悲惨な事故の実態を知らせる
安全教育の場で、居眠り運転事故がどのような悲惨な結果となるかといった情報をドライバーと共有しましょう。
居眠り運転死亡事故の場合は、ドライバーが禁錮2年、懲役3年といった実刑判決を受ける例が多くあります。途中のサービスエリアなどで休憩する機会がありながら仮眠しなかったことが立証された場合、単純な過失は言えず、裁判官の心証も「悪質」と判定されるからです。
さらに、会社の指示があって使用者や管理者が下命・容認責任を問われたとしても、結果的にドライバーが最も大きな刑を受けることになります。
※下は、東名高速道路で渋滞の車列に居眠り運転のトラックが追突し、3人が死亡し6人が負傷した事故の判決(名古屋地裁:2011年7月8日判決)。
■90分リズムで疲労防止
人間の身体は、90分の生体リズム(ウルトラ・ディアン・リズム)で集中と機能低下を繰り返していると言われます。学校の講義や授業などが90分を限度にして、休憩を必ず挟んでいるのもこのためです。
ですから、ドライバーも90分(1時間半)連続運転したら、車を止めて休憩するようなリズムで運転すれば、未然に疲労を防止できる可能性が高まります。
1時間半では早いと思いがちですが、疲れてから休むのでは、疲労回復には時間がかかります。
■眠気防止には強い光を浴びる
周囲が暗くなり静かになると、人間の脳からメラトニンというホルモンが分泌され睡気を誘います。逆に太陽の明かりなど強い光を浴びると、このホルモンの分泌は抑制されます。
ですから、深夜運転時などに休憩するときは、仮眠するなら周囲を暗くする必要がありますが、逆に目を覚ましたいのであれば、サービスエリアの自動販売機など明るい場所で強い光を浴びながら体操することが効果的です。
■30分程度のうたた寝、又は4時間以上の睡眠が効果的
30分程度のうたた寝をすることは、一時的な眠気防止に効果的です。居眠り運転は明け方と昼の1時~2時頃に多いのですが、昼食後の昼寝を習慣化して眠気がでなくなったというドライバーもいます。
1時間2時間程度の中途半端な仮眠、細切れ仮眠は、かえって本格的な眠気を誘うので危険と言われます。夜間0時~5時までの「魔の時間帯」の走行は避けて、仮眠する場合は4時間以上のまとまった仮眠をとると効果的です。
さらに、4時間以上の仮眠をとれば、トラックやバス運行の場合は分割休息期間として計算することができます。
【すべての安全運転管理担当者の方へ】
■全国安全週間
安全週間の機会に、職場の事故・災害防止の体制を全員で総点検します。
チェック項目としては、
●日常点検、作業機械の点検の確認
●出入口、構内危険箇所のチェック
●ヘルメット、安全靴、消火器、発炎筒等のチェック
●運転日報、運行(乗務)指示書、点呼記録簿(示達簿)のチェック
●現場における安全教育記録(指導監督の記録)の確認
●職場の整理・整頓など5Sチェック
などが考えられます。
また、通勤災害などを防止するための、マイカー通勤者への指導などについても徹底しているか確認しておきましょう。
■飲酒運転根絶指導
悪質な飲酒運転事故は減少していますが、相変わらず、前夜の飲酒が残るいわゆる「酒気残り」飲酒運転が目立っています。
前夜の酒であっても、「酒気帯び運転」には違いはないので、免許停止あるいは取消しは免れません。ビールなど飲酒量が増える時期ですので、夏の事故防止指導の一環として、飲酒運転根絶に向けた指導も再度行いましょう。
ポイントは、自分の飲酒量を自覚させることです。とくに運転する前日の飲酒習慣について調査し、上手にコントロールするよう指導しましょう。
■異常気象への警戒を促す
突発的な、集中豪雨などが多い時期です。冠水した道路を走行すると、車両そのものを傷める可能性もあり、また一時的にせよウォーターフェード現象などブレーキが効かなくなる危険もあります。
大雨や台風の予報があれば、無理な運行は避けるように指導しましょう。
■睡眠導入剤などの副作用に注意
睡眠導入剤を服用したため、もうろうとして交通事故を起こした例があります。睡眠導入剤のなかには眠気が翌朝に残ってしまうタイプがあり、覚醒後に本人が気づかないまま、眠気がぶり返すことがあります。
最近は仕事の悩みなどで睡眠障害になる人が多く、睡眠導入剤を服用する人も増えていると言われます。薬剤の助けで睡眠をとるのは、睡眠不足解消には効果的ですので、副作用の少ないタイプの薬を上手に使うよう指導しましょう。
【事業用自動車の管理者の方へ】
■監査の強化に備えて管理の徹底チェックを
関越道のバス居眠り事故を踏まえて、自動車運送事業を営む事業所への監査や指導が厳しくなっています。
貸切バス事業者と旅行業者への緊急重点監査が終わり次第、タクシーやトラック事業者への巡回監査の強化はもちろん、臨時監査の可能性もあります。点呼記録簿、運行指示書、運転時間の記録、点検記録簿、指導監督の記録などがきちんと整備ができているか、この時期にチェックしておきましょう。
とくに、終業点呼などの記録は抜けがちです。機械的に代理の人がハンコを押してすませている営業所がないか、厳しくチェックしましょう。乗務記録を詳しく見れば点呼の矛盾などは一目でわかりますので、補助者などを選任して、きちんとした点呼をとる体制を作っておきましょう。
1日(日) |
・国民安全の日
交通事故、火災、産業火災などの日常生活を脅かす災害の防止を目的に、総理府が1960年(昭和35年)に制定。 |
1日(日)~
7日(土) |
・全国安全週間 平成24年度 スローガン 「ルールを守る安全職場 みんなで目指すゼロ災害」 詳しくは、厚生労働省または中央労働災害防止協会のWEBサイトを参照してください。
|
1日(日)~ 31日(火)
|
・夏期労働災害防止強調運動(トラック)
──陸上貨物運送事業労働災害防止協会主催の災害防止活動。全国安全週間の実施とリンクして取り組む。 ●24年度スローガン──「起こすまい 墜落・転落・巻き込まれ 心のベルトも引き締めて」 |
1日(日)~ 31日(火) |
・車内事故防止キャンペーン(バス) ── 都道府県バス協会主導のもと、車内事故防止キャンペーンを実施するバス事業者が多い。 |
1日~ 9月30日 |
・平成24年度 港湾労働安全強調期間──港湾貨物運送事業労働災害防止協会による安全週間拡大運動。港湾内の事故防止活動を推進する 詳しくはこちらを参照 |
7日(土) | ・小暑、七夕、川の日 |
10日(火) | ・7月の製品安全点検日──経済産業省は、毎月第二火曜日を「製品安全点検日」として、製品の安全な使用法やリコール製品等について情報提供・注意喚起を行っている。 |
16日(月) | ・海の日 |
21日(土) |
・勤労青少年の日(7月第3土曜日) |
21日(土)~ | ・森と湖に親しむ旬間(~31日) ・自然に親しむ運動(~8月20日) |
22日(日) |
・大暑 |
27日(金) |
・第9回 交通科学シンポジウム──テーマ「自動車等の利用時における緊急事態への対応」 -危険からの回避- 於:エッサム神田ホール |
7月上旬 |
・国土交通省「高速ツアーバス過労運転防止検討会」等が新運行基準などの緊急対策を6月中にまとめ公表する予定 |
7月中旬 |
・平成24年6月末における交通事故発生状況公表(警察庁)
・平成24年 秋の全国交通安全運動推進要項発表(警察庁) |
7月下旬 |
・平成24年度 全国労働衛生週間のスローガン・実施要綱の発表(厚生労働省)
・平成24年 上半期の交通死亡事故の特徴及び道路交通法違反取締状況について(警察庁)
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◆7月の日没時間(国立天文台天文情報センターによる)
1日(日) | 福岡 19:33 | 大阪 19:15 | 東京 19:01 |
15日(日) |
福岡 19:29 |
大阪 19:12 | 東京 18:57 |
31日(火) | 福岡 19:19 | 大阪 19:01 | 東京 18:46 |
夏は日が長いと感じても、すでに日没時刻は早まっています。
関東では、5時半には点灯を考えましょう!