高速ツアーバスの安全規制強化が7月20日から実施されるのに先立ち、国土交通省では、全国の貸し切りバス会社298社に対して実施した重点監査の内容などについて第一次の報告を行いました。
全体の83.8%(250社)に法令違反の指摘を行い、そのうち48社(16.1%)には「点呼が大多数(50%以上)実施されていない」など重大、悪質な法令違反があったことがわかりました。
また、監査の際に同省が事業継続意思を確認したところ、新たに強化された安全規制に対応できないことを主な理由として、100社以上が撤退を申し出たそうです。
また、監査対象外の企業ですでに事業継続を断念した企業もあり、350社以上はあった高速ツアーバスの運行を受託するバス会社は、現在230社程度に減っています。
安全規制の強化に対応するためには、ドライバーの増員やドライブレコーダーの設置など大幅なコスト増が見込まれ、対応できない企業がツアーバスの受託を諦めたものと見られます。
撤退企業の多くは保有台数数台の中小・零細企業とみられていますが、100社以上の受託先がなくなることで、ツアーバスチケットを販売する旅行会社は、繁忙期にもかかわらず、昨年より便数を削減する見込みです。
安全性が評価されているバス会社が奪い合いとなっていて、ドライバー不足のため、これ以上の増便を断るバス会社もあるからです。
また、バス会社の負担が増えることを踏まえ、運賃の値上も見込まれています。
同省が目指す「悪質なバス事業者の排除」は一定の効果を挙げていると言えますが、今後は、タクシーやトラックなど他の自動車運送事業者に対しても厳しい監査や安全規制の強化を計り、安全対策ができない業者の排除をすすめるとみられています。
「旅客自動車運送事業運輸規則の解釈及び運用について」の一部改正
(7月18日 公布 7月20日施行)
■安全規制強化1──交替運転者の配置基準
──夜間走行で以下の運行距離又は乗務時間を超えた場合
●安全措置を実施していない企業──実車距離 400km超で交替
●特別な安全措置を実施している企業──実車距離 500km超で交替
●1人の運転者の乗務時間が10時間を超えた場合は交替
■安全規制強化2──サービスエリア等における休憩について
運転者が強い疲労感を覚えた際に、運行管理者に事前通報なく運行経路を変更して、サービスエリア等で休憩できることとします。
※夜間運行とは、下記のような場合を指す
※実車距離とは、高速道路上だけでなくバス運行の起点から終点までを含む
※乗務時間とは、運行の出庫から入庫までの時間