4月に成立した改正労働者派遣法が10月1日から施行されます。
人事管理面では、すでに十分な対策をとっていると思いますが、もう一度、今回の改正点をチェックしておきましょう。
労働者派遣法の改正概要はページ下の表のとおりですが、まず、大きな改正ポイントと言われているのが「日雇派遣の禁止」です。
30日以内の短期雇用の派遣労働は、派遣先の事業所、派遣企業とも雇用管理責任が果たされずに、労働災害の発生原因と言われてきました(※法案では2ヶ月以内の禁止でしたが国会で30日以内に修正)。
原則禁止ですが例外業務もあります。専門性が高く短期雇用に適した「ソフトウェア開発」「調査業務」「広告デザイン」など専門26業種です(別表参照)。
また、60歳以上の人や雇用保険の適用を受けない学生、年500万円以上の収入が別にあり副業で派遣を引き受けるような人も例外です。
ドライバーの派遣は、例外業務に含まれないので、配送業務や引越業務などで、超繁忙期に短期派遣を受けることはできなくなりました。繁忙期に入る前に協力会社などと協議し、ドライバーや配送人員等を確保する計画を綿密に立てておく必要があります。
また、総務などの事務担当人員を繁忙期には現場応援に回すことも考えましょう。
直接雇っていたドライバーにいちど退職してもらい、派遣労働者にしてふたたび勤務してもらうことで人件費を切り下げていた企業があります。今までは違法ではありませんでしたが、今後は離職後1年以内は、同一人を派遣労働者として派遣してもらうことはできなくなりました。
ただし、60歳以上の定年退職者は例外です。今まで通り、退職後に派遣労働者として同じ勤務先で続けて働いてもらうことができます。
その場合も、新たに雇い入れた者として、現場では雇入時の安全教育を実施することを忘れないでください。
派遣を受ける企業ではなく、派遣会社に義務づけられた措置ですが、
① 派遣会社はインターネット等により派遣料金のマージン率・教育訓練に関する取り組み状況を開示する
② 派遣労働者の派遣料金の額を明示する
ことが義務付けられます。
(※マージン = 派遣料金 - 派遣賃金)
労働者が、より適正な派遣企業を探せるように情報を与えることが一義的な目的ですが、派遣を受ける企業にとっても、派遣を受ける前に正しい情報を集めることができますので、インターネット情報なども事前調査しましょう。
マージン率が髙すぎる場合、派遣労働者のモチベーションが下がる危険があります。ただし、福利厚生や教育訓練が充実しているため適正なマージンをとっている派遣企業もありますので、教育訓練の情報などもチェックしましょう。
派遣会社は、派遣労働者の賃金を決定する際に、派遣先の同種業務社員の賃金水準や職務内容との均衡を図るよう配慮することが義務づけられました。派遣先企業にも、必要な情報を提供するなどの協力が求められます(協力義務)。
社員と同じような仕事を同等の実力のある人に任せる以上、派遣だからといって、極端に安い賃金で雇用することはできないということです。
均衡を欠いた雇用は、結局、派遣社員のやる気を失わせるので、ドライバーなどの場合は安全性に大きな影響が現れます。
これまでは、派遣契約の解除は派遣会社と合意すればよかったのですが、2012年10月以降は、派遣先の都合によって派遣契約を途中で解除する場合には、派遣労働者の雇用が失われることを防ぐため、
●派遣労働者の新たな就業機会の確保
●休業手当などの支払いに要する費用の負担
などが、派遣先企業の義務となります。
また、教育・訓練についても、均衡に向けた配慮が求められていますので、派遣を受ける企業も安全教育などについて意識しましょう。
先進的な派遣企業では、法改正を視野に入れて、個々の派遣社員別にどのような教育を実施してきたか、内容を示す具体的な資料を派遣先に提出するところが増えています。
ドライバー派遣の会社でも、分厚いルーズリーフに過去の安全教育資料を入れて提出している例があります。
派遣を受ける担当者としては、派遣会社に対してこのような教育訓練の資料提出ができるかどうか、採用時にチェックしてみるとよいでしょう。
なお、雇入時の一般的な安全衛生教育は派遣元(派遣会社)に義務がありますが、最大積載荷重が1トン未満のフォークリフト運転などの危険有害業務に従事する場合の特別教育は、派遣先企業に実施義務があります(これは今回改正とは関係なく、労働安全衛生法に定められた従来からの義務です)。
社員に実施するのと同様に派遣労働者にも専門的な安全教育を実施して、事故防止を図ることは従来通り重要です。
なお、派遣労働者に実施した教育の資料は派遣会社側にも提供し、教育訓練の記録として保存できるように配慮しましょう。
法改正を前向きにとらえ、優良な派遣会社を選んで優秀な派遣労働者を派遣してもらい、ともに連携して育てていきましょう。
厚生労働省の資料による