2012年 10月の運転管理

■ドライバーの健康管理に目を配りましょう

 10月1日から7日までは、労働衛生週間が実施されます。

 今年の週間スローガンは「見逃すな 心と体のSOS みんなでつくる健康職場」です。近年、職場の労働衛生対策の中心テーマはメンタルヘルスに移ってきました。物理的な労働環境は改善されていますが、心の健康問題で休業しだり、対人ストレスなどで体調不良になる人が増えているからです。

 

 ただし、毎日運転業務につくドライバーの場合は精神的な理由だけでなく、長い労働時間や深夜運転など身体的に厳しい職場環境が影響して、健康を崩す例もまだまだ少なくありません。

 「心身両面の健康」を視野に入れた管理・指導に取り組みましょう。

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長時間運転のストレスを考慮しよう

 ドライバーの健康管理でまず重要な点は、長距離ドライバーなど長時間の運転業務につく人が受けるストレスです。長距離トラックドライバーの運転中の心拍数や血圧を調べた研究(※)によると次のような危険があることがわかりました。


●ヒヤリ・ハットによる急上昇──交差点で前車に急ブレーキを踏まれて驚いたり、対向車線の事故を目撃するなどヒヤリとしただけで、急激に血圧・心拍数が上がる
●運転操作による上昇──普段は高くなっても20~30の血圧上昇の人が、追越しなどで50~60も数値が上昇することがある
●不整脈の発現──健康診断では「軽度の不整脈」程度の人が、運転中に頻繁に症状が出ることがある。急ブレーキを踏んだ後、不整脈が止まらなくなったケースも観察された 

●夜間の血圧上昇──一般に夜間は血圧が低くなるが、深夜運転では夜間に最高・最低血圧とも上昇する傾向がある

 

(※「長距離ドライバーの疲労と安全」滋賀医科大学・垰田和史准教授の研究(平成19年近畿運輸局事故防止セミナー資料による)。

ヒヤリ・ハット後は臨時休憩を取る

 このような事実を踏まえると、ドライバーへの対症療法的な指導としては、次のような点を注意すべきでしょう。

 

●ドキッとしたときは無理にそのまま運転しない──前車の危険行動などに驚いたときは、できるかぎり臨時休憩などをとる。一息いれて心身を落ちつかせるだけで血圧上昇などのリスクを軽減できる

●運転の後半や深夜には休憩を増やす──画一的な休憩ではなく、運転によるストレスが高まる運転業務の後半や深夜には、休憩回数や休憩時間を増やす配慮をする

 

 こうした指導は、職業ドライバーだけでなく、車で遠方まで出張するセールスエンジニアや、警備業など交替で深夜勤務をするドライバーにとっても重要です。

日常的に身体状況をチェック

 なお、休日にはほとんど正常血圧のドライバーが、運転中に190以上の数値を記録するケースもあり、健康診断結果を知るだけでは、健康状態の管理はできないということがわかります。

 そこで、携帯型の血圧計などを購入してドライバーに配布し、運転時の血圧や心拍数を自分で調べてもらうというのもひとつの方法です。

 

 最近は、手首に巻くだけで簡単に血圧や脈拍数を計測できる機器(電池電源)が、比較的安価で多種類発売されています。出張時や出先の運転休憩時などに測ってもらうと、実態を知ることができるでしょう。

投薬などのアドバイスを徹底する

 さらに、高血圧や不整脈などの既往があり、医師から服薬を命じられている人が、もし夜間運転業務などにつく場合は、服薬の調整ができているかをチェックしましょう。

●食事休憩の時間を配慮

 工場など通常の夜間業務では、夜間も食事休憩があるのでスケジュールどおりの服薬が可能です。不規則業務でも少し休憩して薬を飲むことができます。

 しかし、ハンドルを握って高速道路などを走行していると、規則正しい食事がとれず、なかなか所定の薬を飲めない事態が発生しますので注意しましょう。

●医師との情報交換を綿密に

 薬を処方する医師が、ドライバーの夜間業務を知らずに、「夜は普通に寝て、血圧や心拍数も下がっている」と考えて薬を処方する可能性もあります。ドライバーには当たり前のことでも一般の医師には想像もつかないケースがあります。

 産業医などにも相談し、労働実態にあった服薬はどのような形が望ましいのかをドライバー・管理者とも知っておきましょう。

■重点推進事項

【すべての安全運転管理担当者の皆さんへ】

■早めの「おもいやりライト」点灯を促そう

 夕暮れの早めのヘッドライト点灯は以前から言われていますが、なかなか実践に結びつきません。そこで薄暮点灯を「おもいやりライト」と名づけて実践を促す運動もあります。横浜市のおもいやりライト運動事務局の呼びかけです。

 

 早めの点灯は周りの車や歩行者への思いやりであるという観点から、「見るためだけではなく、見られるための光を」を合言葉にしています。

 インターネットのおもいやりライトのwebサイトなどでは、国立天文台公式サイトの日の入り30分前の時間を目安に、日本各地9エリアに分けて点灯時間を紹介しています。

■夜間走行での事故防止

 夜間事故が多発する時期です。

 とくに、高齢歩行者の横断事故に気をつけましょう。高齢歩行者との衝突事故はとくに夕方から夜間に多く発生する傾向が高く、夜間の高齢歩行者の死者数は、昼間の死者数の約2倍となっています。

 時間帯としては、日が暮れて間もない17時から20時までの3時間に集中して発生する傾向があります。

 夜間の高齢歩行者事故の原因としては、ドライバーの発見遅れが9割と目立っています。郊外の道では、ライトを上向きにして道路外にも十分な注意を払って横断歩行者を警戒するよう指導しましょう。

高齢歩行者の夜間事故

■視力の管理を徹底しましょう

 10月10日は「目の愛護デー」。視力や目の健康について気をつける日です。事業所でもドライバーの視力管理などに気を配りましょう。

 目を怪我したりすると見えにくさを意識しますが、徐々に視力が落ちてきたり視野が狭くなったりしても、意外に気づくのが遅れることがあります。

 そのようなドライバーが、よく見えていないことに気づかないで、電柱と接触したり、交差点で歩道から飛び出してきた自転車の発見が遅れるケースなども考えられます。

 

 軽微な接触事故であっても、「ひよっとして見えていないために起こったのでは」ということを考慮し、視力検査などを徹底しましょう。

事業用自動車の運行管理者の皆さんへ】

■深夜運転ドライバーへの特定健康診断の実施 

 まさか、年1回の定期健康診断を実施していない事業所はないでしょうが、深夜運転などに従事しているドライバーへの「6か月に1回行う」 特定業務従事者健康診断も、忘れずに実施しましょう。

 正社員だけでなく、パート・アルバイトの人であっても、以下に該当する労働者の場合は、半年に1回、健康診断を受けさせる義務があります。

 

● 深夜業(午後10時から午前5時までの間に運転業務などを行う)の機会が6か月を平均して1か月当たり4回以上あった人

● 労働時間数が同種業務に従事する労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上ある場合

 

★なぜ、半年に1回必要か?

 労働安全衛生規則第 45 条第1項において、深夜運転などに従事する労働者は、坑内労働や有害放射線にさらされる業務などと同等で「有害業務に従事する労働者」と見なされています。深夜、普通の人が寝ているときに運転などをすることは、人間の身体にとって有害な業務なのです。

 健康を阻害しやすい状況なので、半年に1回の健康診断は極めて重要と考えましょう。

 

★健康診断未実施で、こんな事故例も!

 ──貸切バス運転者のくも膜下出血事故

 平成 23 年10月7日9時頃、愛知県瀬戸市で貸切バスが小学生ら39名を乗せてカーブが続く道路を約50km/hで運行中、バス運転者(52歳)がくも膜下出血に より意識を喪失、バスは左カーブを直進し中央線を越えて右側のガードレールを突き破り、約4m下の雑木林に転落しました。

 バス運転者は死亡、教員2名が重傷、全員シートベルトをしていた児童ら37名は軽傷を負う事故となりました。現場にブレーキ痕がないことから、事故直前に発症して意識を失ったと推定されています。

 運転者への点呼や勤務時間などに違反はありませんでしたが、法で規定する深夜業従事者に対して6か月に1回実施しなければならない健康診断を受診させていなかったことが問題になりました。

 国土交通省は事故分析で「年2回の法定健康診断を確実に実施するとともに、運転者に対して個別疾病の予兆の把握や予防方法など、健康管理に関する指導を十分行うべきであった」と指摘しています。

■10月の管理ごよみ(2012年)

1日(月)~

日(

・全国労働衛生週間──平成24年度スローガン

 「見逃すな 心と体のSOS みんなでつくる健康職場」
──詳しくは厚生労働省中災防のWEBサイトを参照

1日(月)~

日(

・法の日(10月1日)/「法の日」週間──法を尊重し、法によって基本的人権を擁護し社会秩序を確立することを目的として昭和35年に制定されました。無料法律相談など各種の行事が実施されます。

9月1日~

31日(水)

 

自動車点検整備推進運動強化月間── 毎年9月、10月の2ヶ月間、国土交通省は点検・整備の重要性を呼びかけている。
──詳しくは国土交通省のWEBサイト全日本トラック協会のWEBサイトなどを参照

8日(

体育の日/寒露──冷たい露の結ぶ頃、秋もいよいよ本番。

9日(火)

トラックの日──「トラック」の「ト(10)」と「ク(9)」を取って制定。各地のトラック協会でトラック輸送への理解を深め安全を推進する各種行事を開催しています。

9日(火)

・製品安全点検日

──毎週、第2火曜日は、火二(ひに)注意/経済産業省

10日(水) ・目の愛護デー
11日(木) ・鉄道安全確認の日──1874(明治7)年のこの日、新橋で日本で初めての鉄道事故が発生したことによります。
11日(木) ・安全、安心なまちづくりの日/全国地域安全運動(10月11日~20日)──政府が制定。警察庁を中心に地域社会における自主防犯活動への積極的な参加を呼びかけます。
12日(金) ・石油機器点検の日──10月12日(とうユでいいふユ)のごろあわせ。石油機器の点検を早めにしておきましょう。

13日(土)

・国際防災の日──国連では、10月13日を防災の日と制定しています。各地の自治体でも防災指導のイベントなどが実施されます。

17日(水)~

23日(火)
・薬と健康の週間──薬の特性や使用方法、副作用、運転への影響などの知識を持ちましょう。

21日(

・あかりの日──トーマス・エジソンが世界で初めて白熱電球を発明したことにちなんで制定されました。 横浜市を中心に「おもいやりライト大作戦=早めの点灯運動」が展開されています。
19日(金)

・NASVA安全マネジメントセミナー

──主催:独立行政法人 自動車事故対策機構/過労運転防止対策に関する基調講演と「ISO39001=道路交通安全マネジメント」関する情報提供

23日(火)

・霜降──北国や山間部では、霜が降りて朝には草木が白く化粧をする頃です。

23日()~

29日(月)
・高圧ガス保安活動促進週間──経済産業省などが主唱し高圧ガスの保安活動を促進する週間です。点検・確認を徹底して高圧ガスによる災害を防ぎましょう。

24日(水)~

26日(金)

・第71回全国産業安全衛生大会(富山)

──主催:中央労働災害防止協会/「働く人がやっぱり大事 キトキト富山から全国へ」詳しくはこちら

27日(土)~

28日(

・第44回全国トラックドライバー・コンテスト

──主催:全日本トラック協会自動車安全運転センター 安全運転中央研修所

30日(火

・マナーの日

31日(水 ・ハロウィン
   
10月上旬 平成24年度 第2回運行管理者試験の公示 (試験は平成25年3月3日予定)
10月中旬 ・平成24年9月末における交通事故発生状況公表(警察庁)
10月下旬

・平成24年9月末の労働災害速報陸上貨物運送事業労働災害防止協会

 

 

◆10月の日没時間(国立天文台天文情報センターによる)

1日 (月)

福岡 18:03 大阪 17:42 東京 17:25
15日(月) 福岡 17:45 大阪 17:24 東京 17:06
31日(水) 福岡 17:27 大阪 17:05 東京 16:47

秋の日はつるべ落とし。日没時刻は4時台に近づいています。
東日本では4時に、西日本でも5時前に点灯しましょう!

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12月23日(月)

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