自転車は日常的な道具なので、対策なんて大げさだと思うかもしれませんが、会社に生じる責任という観点からすれば、自動車の業務使用の場合と同様に事前の対策を考えた方が良いといえます。
事前の対策を行うことにより、事故が生じた場合の対応や、事故自体を未然に防ぐことが可能であるといえますので、基本的には自動車の業務利用と同様、以下のような点を検討しておくべきです。
1・従業員の交通安全教育
特に自転車は、手軽に利用できる乗り物であるため、どうしても責任等を軽く考えがちです。従業員に責任を理解して貰い、交通ルールの厳守や危険性の認識等の自覚を持って貰うよう指導すべきです。
2・保険の加入
会社が業務使用を認めている場合には、事故が生じた場合に使用者責任を完全に免れることは困難なことが多いと言わざるをえません。
そのため、自転車事故の場合でも利用できるような保険の加入について、確認しておくべきですし、特に恒常的に自転車を使用するような業務の場合には、従業員個人の保険加入について検討もしておくべきです。
3・規程の整備
会社として、自転車の使用についての規程を整備すべきです。業務での使用を禁止する場合は特に明確に規程し、指導する必要がありますし、通勤にだけ使用を認めるのであれば、その旨を明確にしておくべきです。
業務での使用を認める場合は、使用方法や時間、使用車両の特定や整備方法、通勤に使用する場合の通勤手当等も含め、規程を定めてルールを明確にしておくべきです。自転車の場合は、法律上は自動車の場合のような安全運転管理者のような制度はなく、車両台帳等の作成も行わないことが多いと思われます。しかし、自動車の業務使用の場合と同様の規程を整備したり、運用をしたりすることが禁じられているわけではなく、できる限りの検討はしておくべきでしょう。
既に述べたように、自転車は手軽に乗れるもので、自動車に比べれば大きな損害が生じにくく、業務での使用の場合の責任等についてはあまり検討されていなかった面があります。
しかし、交通事情の複雑化や自転車性能に関する技術の発達に伴い、重大な被害が生じる事故も散見されるようになり、特に近年、自転車事故に対する意識は高まっているといえます。
会社のリスクマネジメントの観点からすれば、このような現状をふまえ、使用者責任を負う可能性を理解した上で、自転車についても、自動車を業務で使用する場合と同様の対策を採ることが必要だといえます。