自転車通勤を奨励したり、車を減らして営業・連絡業務などに自転車を活用する企業が増えています。コスト削減・省エネだけでなく、交通事故のリスクも低減すると期待されていることでしょう。
しかし、自転車でも安全意識の低い利用者では、大きな事故が発生する危険があります。従業員自身が死傷するリスクだけでなく、加害者となる危険もあり、また場合によっては自転車事故で免許停止処分などを受ける恐れがあります。
■自転車がバイクと接触し、運転免許停止処分に
実際に自転車が交通事故の第1当事者となったことで自動車運転免許の停止処分を受けた例があります。
今年5月10日の夜、奈良市内の市道で自転車が急に斜め横断しようとしたため後続バイクが接触して転倒し、バイクの男性(37)が鎖骨を折る重傷を負いました。さらに、自転車の男性(61)は「自転車との接触だから大したことはないと思った」とその場から立ち去りました。
そこで、奈良県警が捜査をすすめ、2012年10月に自転車の男性を道路交通法違反(救護義務違反)で書類送検し、さらに11月20日運転免許課が運転免許の停止処分(停止期間は150日)を言い渡しました。
道路交通法上は、自転車は軽車両ですから「車両等」に該当します。
車両等の運転者には交通事故の際の救護義務が課されています(道路交通法第72条)。
ですから、自転車事故の場合でも、ひき逃げの道路交通法違反は成立するのです。
自転車の事故で、「なぜ、クルマの運転免許の停止処分が?」と思われるかも知れませんが、この処分は道交法103条第1項第8号に基づいています。
道路交通法第103条第1項の各号では、重病や麻薬中毒、重大違反の唆し、道路外致傷などによる「免許の取消し、停止」について定めていますが、第8号では
「前各号に掲げるもののほか、免許を受けた者が自動車等を運転することが著しく道路における交通の危険を生じさせるおそれがあるとき」 → 取消し・停止処分ができるとしています。
この規定に則れば、自転車で事故を起こした場合であっても、危険な運転と認められ、同じような違反を車で犯す恐れが高いとされた場合には自動車運転免許の停止処分が行えるのです。
この事例の教訓は、たとえ自転車であっても、重大な事故を起こした場合、車を運転できなくなる恐れがあるということです。バスやトラックなど職業ドライバーの場合は仕事を失うことにもなりかねません。
従業員に対しては、自転車の利用にも車両としての責任が伴うことをしっかりと指導してください。
また、交通事故が発生したときは、救護義務違反などを犯すことがないよう、必ず事故現場で被害者の安全を確認し、救護や119番通報などの義務を果たすように強調しておきましょう。
【類似の処分例】
まだ数は少ないですが、自転車での免許停止処分は以下の例があります。
●2011年5月 大阪市で、車の前を自転車が横切ったため急なハンドル操作でよけた車が歩行者に衝突して2名死亡(自転車利用者は重過失罪で禁錮2年実刑)
→ 運転免許の180日停止処分
●2005年11月 札幌市で、脚立に大学生の自転車が衝突して枝払いをしていた男性が転落して死亡。大学生をひき逃げと重過失致死で逮捕(懲役2年6月、執行猶予3年)。
→ 運転免許の停止処分。
自転車の運転に免許証は必要ありませんが、そのため、交通ルール・マナーを十分に理解しないまま危険な運転をしている人が後をたちません。
このテストは日頃の自転車の運転を振り返り、48の質問に「ハイ」「イイエ」で答えることで、普段どれぐらい自転車を安全に運転できているかを簡単に知ることができるテストです。
診断結果をみて反省することで、日々の自転車の安全運転に活かすことができます。