高速バス一本化:単独運行は昼間500キロ、夜間400キロ

■2013年8月より新制度スタート

高速バス交替運転者

 国土交通省は、さる2月12日に第7回「高速ツアーバス等の過労運転防止のための検討会」を開催し、高速ツアーバスと高速道路の路線バスを一本化(※1)する新制度の基準について話し合いました。

 その結果、高速道路を走行するバス運転者の一人あたりの運転の上限を昼間は500キロ、夜間400キロとすることが決まりました。

 

■高速路線乗合バスもワンマンの上限400キロに

 昨年4月に発生した関越自動車道のツアーバス居眠り事故を受けて、夜間運行について、すでに高速ツアーバスは昨年7月より(貸切バスも12月1日から)1人で運転できる距離の上限を原則400キロとして適用されています。

 高速路線バスにもこうした基準が適用され、今年8月からすべての高速夜間バスが対象となります(「運行前に休息期間が11時間以上とれている」などの条件を満たすバス会社においては500キロ ※2)。

 

【新基準】 

・夜間運行(乗車または降車が午前2時から午前4時までの間にまだがる)で

 実車運行距離が400キロを超える場合は、交替運転者が必要

・なお、以上の距離に満たなくても、次のような勤務条件を超えて一人の運転者が運転をすることは禁じられる。

 * 運転時間が1日9時間を超える場合

 (ただし貸切委託運行を除き、週に3回まで可能)

 * 連続夜間運転が4回を超える場合

 

 現在高速乗合バスを運行している大手路線バス会社については、以前より運転者との労使協定を交わしワンマン走行の上限基準を満たしているので、既存の乗合事業者に対する実際的な影響は少ないでしょう。

■昼間のワンマン運行も、原則として500キロに規制

 新基準として昼間の単独走行にも新たに上限が設けられ、原則として一人で運行できる距離は500キロまで(例外措置 600キロまで※2)とする方針が今回の検討会で認められました。

 バス運転手へのアンケート結果などを基に、これまでは規制のなかった日中にも上限を設けることにしたものです。国交省が関越自動車道事故を受け、全国のバス運転手5千人にアンケートを実施したところ、連続運転に不安を感じる距離として「500キロ以上」との回答が80%を超えました。

 新規準はいずれも一本化の完了を経て、2013年8月1日から実施されます。

関係通達として「旅客自動車運送事業運輸規則の解釈及び運用について」一部改正が行われます)

 

※1 高速バス事業の一本化 

 「高速ツアーバス」は、従前は旅行業法に基づき旅行会社が貸切バス会社に委託して運行していました。これは運行管理の責任が不明確であり、居眠り事故を誘発した一因と考えられています。
 新しい仕組みではこれが禁止され、ツアー企画をする旅行会社は高速乗合バスの事業許可を今年7月末までに取得する必要があります。
 新制度に移行すると、ツアー企画会社は高速バス会社として貸切バス事業者に運行委託をする形になるので、事業形態が一本化されます。

※2 交替運転者の例外措置など(新基準案)

① 夜間500キロ(昼間600キロ)まで延長可能な条件
 バス事業者が以下のイまたはロを確保している場合は夜間500キロ(昼間600キロ)まで延長可能(貸切委託運行ではイを確保している場合)。 
(イ) 運行前に休息期間が11時間以上とれている
(ロ) 運行途中に適切な仮眠施設(運転者が身体を完全に伸ばして仮眠することのできる施設=車内の床下仮眠施設等を含む。ただし、リクライニングシート等の座席を除く)において連続1時間以上の仮眠休憩を確保していること

② 連夜の夜間ワンマン運行を4回までに制限
 夜間ワンマン運行の連続乗務回数は4回(2往復)まで、一運行の実車距離が400kmを超える場合には2回(1往復)まで。

③ 連続運転時間は2時間
 ワンマン運行の高速道実車運行区間における運行計画上の連続運転時間は概ね2時間まで。

④ 運行途中における休憩の確保
 夜間ワンマン運行する路線の実車運行区間では、運行計画上、全ての区間において実車運転時間4時間毎に40分以上(一運行の実車距離が400km以下の場合には30分以上)の休憩(1回連続10分以上で分割可)を確保していなければならない。

⑤ 先進的企業への500キロを超える特認(路線別審査)
 路線毎の個別審査によって実車距離500kmを超えるワンマンの夜間運行路線を設定できる。
 ただし、②~④までの基準に加えて、高速バス乗務に関する教育体制、運転者の健康管理体制、運行を維持するために必要な運転者数(経験年数を含む)や仮眠室を有する車両の保有台数などを審査して認可する(同一運転者につき週2回まで)。
 ──貸切委託運行(※)の場合は認めない

※3 その他の規定 

● 体調報告の義務付け
 400キロ超えの夜間ワンマン走行、1日の昼夜乗務の合計が500キロを超える走行では、運転者から管理者等への電話による体調報告を義務付ける。管理者は結果を記録し保存する義務がある。   

● デジタコによる運行管理(平成26年1月実施)   
 上記の運行では、デジタル式運行記録計による運行管理を行う。    

● 遠隔地点呼の第三者立会い又はテレビ電話点呼平成26年1月実施   
 高速バスにおける遠隔地点呼では、共同運行従事者などの運行管理者または同乗運転者など第三者立会いのもとに、酒気帯びの有無や健康状態の確認を行わなければならない。   
 第三者立会いができない場合は、テレビ電話(携帯)とIT機能のあるアルコール濃度検知機器を使用する。

※上記例外措置等(新基準案)に関しては、国土交通省のパブリックコメント資料=「旅客自動車運送事業運輸規則の解釈及び運用について」の一部改正案について──を踏まえて訂正しました(2013.02.19更新)。

※貸切委託運行とは──平成24年7月に高速乗合路線バス一本化の新たの仕組みの一つとして、乗合バス事業者から貸切バス事業者への管理受委託の仕組みが導入された(委託には国土交通大臣の許可が必要)。

 乗合バス事業者が貸切事業者に委託する場合、運送の安全確保責任は委託者が負うとされ、受託者である貸切バスに対して指導・助言を行い営業所の訪問調査を行うなど、一体となった安全管理体制の構築が義務づけられている。

■バス運転者のための指導・監督用ツール

■2018年6月1日改正の新指針に準拠

 「バス運行管理者のための指導・監督ツール」は、運転者に指導する際の資料として、「運転者用資料」を39枚収録した運行管理者のための指導教材です。

 

 言葉だけでは伝わりにくい安全運転のポイントを漫画とイラストで具体的に解説し、3つのキーワードで印象づける内容です。

 点呼時やドライバーミーティングなどの短い時間でも、運行上の危険や安全運転ポイントを指導することができます。

 

 2018年6月に公布された一般バス事業者のための指導監督指針11項目、貸切バス事業者向け2項目の指針計13項目に準拠し、教育記録簿用紙も添付しています。 

 

【詳しくはこちら】

■バス事業者のための点呼ツールを発売

 単行本「バス事業者のための点呼ツール」は、点呼の実施方法から実際に点呼をする際に役立つ「安全指導場面」を30場面収録した、バス事業者様のための点呼ツールです。

 

 言葉だけでは伝わりにくい安全運転のポイントや注意事項も、イラストがあればより具体的に危険や安全運転ポイントをイメージすることができます。

 

 また、近年改正された道路運送法や、運輸規則等の改正もわかりやすく解説しています。

 

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