トラック運送事業者に対する監査は、国土交通省の通達「自動車運送事業の監査方針について」(※)に基づいて行われています。
※国自安第137号 (平成25年9月17日/ 平成29年1月13日改正)
この通達に基づき、トラック運送事業者には特別監査、一般監査、呼出指導などが行われます。
【監査方針等が強化されてきた経緯】
※飲酒運転や居眠運転、過積載などの悪質運転による違反・事故を抑止するため、国土交通省は平成 21年10月1日から、法令違反に対する行政処分基準を改定し厳格化しました。同時に、行政処分逃れを防止するための監査体制も強化しました。
※平成24年の関越自動車道バス居眠運転事故を契機に、監査・処分の方針が再検討され、平成25年10月からさらに厳罰化されました。悪質な違反をした事業所は即30日間の事業停止などを受けます。→ 詳しくはこちらを参照
※また、適正化事業実施機関(都道府県トラック協会)からの速報制度も整備され、巡回指導で違反が発見された事業者は、即監査を受ける体制も整備されました。
※運輸局の監査とは別に、労働局(労働基準監督署)から独自の監査(調査)が入ることもあります。従業員の申告などで改善基準告示違反の疑いがある場合は、徹底的な労働実態の調査が行われ、運輸局にも通報されますので、ダブル監査を受けることになります。
1. | 基本方針 |
1 |
自動車運送事業者に対する監査は、輸送の安全の確保が最も重要であるという基本的認識の下に行う。とくに ●運行管理者又は整備管理者を選任していない ●運転者に対して全く点呼を実施していない ●営業所に配置している全車の定期点検整備を実施していない 等 輸送の安全確保に支障を及ぼすおそれのある重要な法令違反の疑いがある事業者を優先的に対象とする。 また、過去の監査、行政処分等(営業区域の廃止に係る事業計画の変更命令、事業の停止処分、自動車等の使用停止処分、警告、勧告をいう。以下同じ )の状況、利用者等からの苦情等を踏まえ、事故の未然防止及び 法令遵守の徹底を図ることを目的として、効果的に実施するよう努める。
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2 |
トラック運送事業者に対しては、元請事業者の下請事業者に対する輸送の安全確保を阻害する行為の排除を視野に入れた監査を実施するとともに、地方貨物自動車運送適正化事業実施機関(都道府県トラック協会)との連携により、監査及び指導の充実及び強化を図る。
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3 |
監査のほか、呼出指導の実施を通じて、法令遵守意識の醸成を図るよう努めるものとする。
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2. | 監査等の種類 |
トラック運送事業者に対する監査等には、次の3種類があります。 |
(1) 特別監査 |
引き起こした事故又は疑いのある法令違反の重大性にかんが み、「厳格な対応が必要」と認められる事業者等に対して、 全般的な法令遵守状況を確認する監査。 |
(2) 一般監査 |
特別監査に該当しないものであって、監査を実施する端緒に 応じた重点事項を定めて法令遵守状況を確認する。ただし、 全般的な法令遵守状況を確認する必要があると認められた場 合は、特別監査に切り替える。 |
(3) 呼出指導 |
指導を行うことが必要と認められる事業者に対して、自主点 検表を提出させて行う指導。集団指導を行うこともある。 (正当な理由なく指導に応じない事業者には監査を実施) |
3. | 監査等の方法 |
監査の実施方法は、大別して次の3つの方法があります。 |
■ 臨店監査 |
監査を実施する際に、事業者の営業所その他の事業場又は 事業用自動車の所在する場所に立ち入って実施する。 |
■ 呼出監査 |
監査を実施する際に、事業者を呼び出して法令遵守状況を 確認する。 |
■ 街頭監査 |
事業用自動車の運行実態を確認するために、事業者を特定 せずに、街頭で実施する。当面はバス対象。発着場等にお いて実施・確認する。 |
4. | 監査の実施 |
■ | 監査の実施に当たっては、各地方運輸局の自動車交通部、自動車監査指導部及び自動車技術安全部並びに各運輸支局(運輸監理部を含む)が連携して効率的、効果的な実施を図るものとする。 |
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監査は輸送の安全確保に支障を及ぼすおそれのある重要な法令違反の疑いがある事業者から優先的に実施するほか、社会的影響が大きい事故又は違反が発生した場合には速やかに実施する。 また、適正化事業実施機関からの速報があった場合には、その趣旨に留意して実施する。 |
■ | 臨店監査及び街頭監査は、無通告で行う。ただし、無通告で行うことが困難である場合に限り、監査前日の通告により行えるものとする。 |
■ | 呼出監査は、運輸局や運輸支局に呼び出して行うものとする。 |
■ | 呼出指導は、監査実施機関又は監査実施機関が指定した施設に呼び出して行うものとする。 |
こんなときに特別監査が!
平成25年2月17日に大分県九重町で発生した観光バスの転落事故、平成25年2月12日に兵庫県山陽電鉄踏切で車両運搬用トラックが起こした踏切事故など、社会的影響の大きい事故や飲酒運転事故、居眠運転事故のような悪質事故やマスコミが大きく報道した事故などを起こした場合は特別監査が行われます。
無通告で事業所に立ち入る!
適正化実施機関の巡回指導で重大な法令違反が発覚し、速報された場合も優先的に監査を受けます。
原則として、無通告で運送会社の本社や営業所に監査員が立ち入って行われ、法令違反などがないか徹底的に調査されます。
過去の実態も徹底調査!
事故に関連した運行の記録だけでなく、賃金台帳、タイムカード、過去の点呼記録や運転者への指導・監督の記録、社会保険加入状況、乗務時間なども徹底的に調べられ、場合によっては労働基準監督署の職員も同行しますので、運行の実態は隠しようがありません。
一般監査も無通告
一般監査も強化されます。過去に事故や違反による処分を受けていたり、適正化指導機関(トラック協会)の巡回指導を拒否した事業者、警察からの通報、利用者からの苦情などがあった事業者、労働基準監督署に長時間労働などの内部告発があった事業者などが対象になります。無通告で突然くることが原則です。
※「呼出監査」は地方運輸支局に出頭してタコグラフや点呼記録、運転日報
などを提示する形で行われるのが通常の形です。
呼出指導
「呼出指導」は、監査を実施するまでには至らない事業者に対して、地方運輸支局等に出頭するよう呼び出し、事業者に自主点検表を提出させて行われます。集団指導の形で行われることもあります。
指導の対象となったにもかかわらず、正当な理由なくこれに応じない事業者に対しては、監査が実施されます。
※「呼出監査」は地方運輸支局に出頭してタコグラフや点呼記録、運転日報
などを提示する形で行われるのが通常の形です。