以前、この欄で「情報を共有することの重要性」について紹介しました。
左折事故が起こりやすい交差点の危険に気づいているドライバーが複数いたにも関わらず、事業所での情報共有がなされないまま、重大事故が発生してしまったという事例です。
先日、左折事故の事例を紹介してくれた物流技術研究会の丸山利明氏(タカラ物流システム(株))が安全指導講習で、「情報の共有は必要だが、それだけでは不十分。安全に対する共通認識がなければ意味がない」と強調していました。
今回は、事故防止策を実効のあるものとするための、「共通認識」について考えてみたいと思います。
事故の再発防止策を策定するとき、丸山氏は「必ずドライバーに考えさせ、最終的にはドライバーに決めさせる」と言います。
その真意は、自分たちの納得いく解決策、「実行できる」と自信を持って言える防止策でなければ、「共通認識」には至らないからです。
言い換えると、管理者が机上で考えて現場に押し付けた防止策では、ドライバーの共感は得られず、「事故情報を共有したはず」と考えているのは管理者だけという恐れがあります。
以下の事故事例は、そうした危険性のあったケースです。
ある事業所構内で、バック時に人身事故が発生しました。荷降ろし位置にバックしていたトラックの車体と壁の出っ張りとの間に誘導者の手が挟まれたのです。
この事故が発生して、現場の管理者から出てきた事故情報は、
●原因:安全確認、相互の声掛けが
不十分で事故が発生した
●対策:後退前の安全確認の徹底、
後退時の合図の徹底
といった内容です。
対策はマニュアルどおりの文章で書かれていて、間違いではないようです。
事故事例と再発防止策の情報は事業所の全ドライバーと作業者に回覧され、事故情報は「共有」されたかのように見えます。
しかし、このままでは同種の事故が再発する可能性は高かったのです。
なぜ、そういえるのか。2つの問題点がありました。
① ドライバー・作業者など現場の「生の声」が伝わっていないので、事故現場
における具体的な実感がつかめない。
② 現場のドライバーたちが考えた対策ではないので納得されにくく、事故の再
発防止策を「共通認識」するまでに至らない。
本社の安全担当役員がこの事故の現場調査を行い、真の事故原因を追及したところ、以下の問題点があることがわかりました。
調査を踏まえ、現場でもう一度ドライバーを交えて話し合ってもらい、ドライバー自身が、最も安全と考える事故防止策を立て直すことになりました。
その結果、
──という事故防止策を採用しました。
現場の意見から編み出された防止対策を立てるとともに、他のドライバーに伝える場合は簡単なミーティングをして、それぞれの意見を確認させることが重要です。
ドライバーは、真の原因情報に触れることで、
「危険な現場だと思ったら、ドライバーは改善提案をした方がいい」
「この対策なら、ドライバーは責任をとれると思う」
などの感想を持ち、自分が同じような状況に置かれたときに、危険状況について事前に意見を言い、事故を未然に防ごうという意識が生まれます。
このような活動を踏まえて、事故情報と防止策が「共通認識」されていくのです。
●危機管理チェックポイント
● 事故情報を回覧しただけで「共有した」と思い込んでいませんか?
● メールなどで配信して「皆読んでいる」と思い込んでいませんか?
● 現場のドライバーや作業者は、事故防止対策を納得していますか?
● 事故防止策の認識に食い違いはありませんか?
本作品は、トラック運転者として知っておかなければならない安全運転の基本知識をまとめたDVDです。
車の乗降りの仕方やハンドルの持ち方などを解説した「運転準備編」と、右折や左折などの運転中の注意ポイントをまとめた「運転実践編」で構成されており、全ての項目(30分)を一度に見ることもできますが、視聴したい項目(1~3分)を選んで見ることもできます。
それぞれの項目は質問形式となっていますので、視聴者は考えながら見ることができ、安全運転のポイントを理解していただくことができます。