最近、高速道路のトンネルでたびたび多重衝突事故などが発生しています。
高速道路のなかでもトンネルは、勾配変化や視界の悪化などの影響で渋滞が発生しやすく注意すべき場所です。
高速道路のトンネルでは火災事故なども誘発しやすいので、以下のポイントを守って事故防止に努めてください。
高速道路のトンネルの中には、照明設備が明るく200m先の視界が確保されている場所もあります。この場合、道路交通法上の点灯義務(※)はありませんが、やはり、トンネルではライトの点灯が重要です。
というのは、いくら照明があっても暗いことには変わりなく、周囲の色も変化するので前後の車の距離感がつかみにくくなるからです。
ライトを点ければ、前車のテールがよく見えて車間距離が把握しやすくなるだけでなく、自車の存在が前後を走る車にも認知しやすくなります。
後続車から車間距離を保ってもらうためにも、自車を目立たせるということが非常に重要であることを意識しましょう。
(※道路交通法施行令第19条)
トンネルで車間距離を意識する必要があるのは、勾配などの影響で車間距離が詰まりやすいからです。
一般に長いトンネルの場合、最初は上り勾配が続き、トンネル中央部分が一番高く、出口に向かって下り勾配の傾斜がついているケースが多くみられます。これはトンネル内の水はけをよくするためです。
ただし、海底トンネルや山間部の高速道路でトンネルが連続する場所では、出口付近が勾配のある上り坂になっているトンネルもあります。
入り口が上り勾配の場合、すぐに速度が低下します。さらにトンネル内が暗いため、目が慣れるまでどんなドライバーも加速をためらいます。このため、トンネル内に入った車両と後続車の間に速度差が生まれ、自然に車間距離は詰まりがちとなります。このようにトンネルでは、ある程度の減速は止むを得ません。とくに前車がトラックなど重量のある車の場合は、乗用車以上の減速が予測されます。
こうして、トンネル入り口の手前から追突事故などが起こりやすいことを意識しましょう。
このようにトンネル内で前車のスピードが遅くなり、車間距離が短くなると、進路変更して追い越していきたい心理にかられます。
しかし、トンネル内での進路変更はなるべく避けたほうが賢明です。通行帯が黄色い実線で区切られていないトンネルでは進路変更をすることも可能ですが、進路変更や追越しがきっかけとなって追突事故や接触事故が起こることが多いからです。
昼間の場合は、ライトを点灯せずにトンネルを走行してくる車が多いため、進路変更の際に後続車との距離やスピードを確認するのが難しくなります。
「大丈夫だろう」と安易に進路変更したところ、後続車のスピードが非常に速く、追突されるという危険があります。
また、後続車の安全確認に気を取られたため、減速した前車に気づかずに進路変更前に追突するといった事故も多発しています。
(※下の事故事例は、その典型的な例です)
【事故事例】海底トンネル内で、バスがタンクローリーに追突
2013年3月13日、東京湾アクアライン海底トンネル内で、観光バスが前方の大型タンクローリーに追突する事故を起こしました。
バスが追越しのため進路変更をしようと右のミラーで右側車線を確認しているうちに前方のタンクローリー近づきすぎて、追突してしまったということです。
この事故の衝撃で30代のバスガイドが腰の骨を折るなど16人が重軽傷を負っています。
事故現場は海底トンネルの出口近くで、海ほたる(地上のサービスエリア)へ向かう上り坂でした。こうした場所ではタンクローリーなど重量のある車はスピードがかなり落ちますので、追越しの前に十分な車間距離をとるか、進路変更をあきらめるべきでした。
( → 編集部注)
トンネル出口付近も事故が多発する場所なので、注意が必要です。明るいトンネル出口が見えてくると、加速したい気持ちになりますが、実はここに落とし穴があります。
まず、天候上の変化です。トンネルに入る前は晴れていても、トンネルの向こう側では雨が降り、路面が非常に濡れていてスリップしたり視界が悪化する可能性があります。
また、トンネルの外で強風が吹いているときには、スピードを出し過ぎたまま出口を出るとハンドルをとられる危険もあります。
道路形状の変化による危険も予測しましょう。トンネルを出てすぐに道路が大きくカーブしていたり、下り勾配になっている場合、あるいはすぐにインターチェンジがある場所もあり、慌てて進路変更する車も予測されます。
トンネルを出てからの状況がよく把握できるまで、急な加速は避けてください。
★豆知識★
高速道路トンネル内では内気循環モードに
──車内もNO2が高濃度に
独立行政法人交通安全環境研究所と東京大学・戸野倉賢一教授は、高速道路の渋滞区間や登り坂の道路、総延長10キロ以上のトンネル内では、車内空調を「内気循環モード」とするよう、注意を呼びかけています。
同教授らが平成24年1月に発表した高速道路上の二酸化窒素(NO2)濃度と自動車車室内への影響調査結果によりますと、トンネル内などでは中央公害対策審議会の短期暴露指針値(0.2
ppm/1時間値)を超過するNO2の値が確認されました。
とくに交通量の多いトンネル内では、短期暴露指針値の10倍を超える値が確認され、車内空調モードが外気導入モードである場合には、車室内もほぼ同様の濃度となることがわかりました。ただし、内気循環モードにすると車室内のNO2濃度は大気環境基準の1日平均値程度(0.06 ppm)に抑えることができます。
NO2による大気汚染状況は、今まで道路沿道などで測定されていましたが、この研究により車内汚染も無視できないことがわかりました。
高濃度のNO2は、のど、気管、肺などの呼吸器に悪影響を与えます。
※編集部注
東京湾アクアライン海底トンネル内事故では、半年後、バス運転者は睡眠時無呼吸症候群(SAS)の病歴があったことが判明し、「事故原因は後方へのわき見ではなく居眠りだった」と供述を変えています。このため千葉県警高速隊は2013年9月に自動車運転過失傷害の疑いで運転者を逮捕しました。
実際の事故態様は上記の分析とは違いますが、上り坂での追越し時には「わき見」による追突事故が十分に起こり得る状況ですので、記事は削除していません。