以前、バイクと大型トラックが同じ位置にいても、車体の小さいバイクは遠方に見えるという、遠近の錯視について紹介しましたが、今回は「下り坂が上り坂に見える」錯視について紹介します。
車を運転していて、上り坂だと思ってアクセルを踏んだら、思っている以上にスピードが出ていてビックリしたという経験はありませんか?
これは、今走っている下り坂の道路の先に緩やかな下り坂が続いている場合、その緩やかな下り坂が目の錯覚で上り坂に見えてしまうためです。
そのため、ドライバーは「加速してあの坂を登ろう」とアクセルを踏みます。しかし実際には、上り坂に見えていたところは下り坂になっており、下り坂でアクセルを踏むわけですから「思っている以上にスピードが出る」ということになるわけです。
人間は、自分がいる位置を基準に考える性質があり、急な斜面にいるところを平面と感じてしまうために、先に見える坂が上り坂に見えてしまうというわけです。
同じように、上り坂の先に緩やかな上りがあると、そこが下り坂に見えることもあります。そのため「下り坂に入ったのにスピードが上がらない」と感じることもあります。
起伏の多い坂道を走行するときには、こうした目の錯覚があるということを頭に入れて、慎重なスピードコントロールを心がけてください。
(シンク出版株式会社 2013.5.30更新)
──監修:杉原厚吉(「計算錯覚学の構築」チームリーダー)
小冊子「錯視・錯覚に注意して事故を防ごう」は、下り坂が上り坂に見えるなど、運転中におこる錯視・錯覚を具体的に紹介した、事故防止教育教材です。
5つの問題に回答を記入したのち、解説を読んでいただくと、「運転中の錯視・錯覚」について簡単に理解していただくことができます。
巻末には、「錯視・錯覚」をどれだけ意識して運転しているかを確認できるチェックリストを設けています。