以前にも、自転車事故に関する民事訴訟例を紹介したことがありますが、最近、子どもの自転車事故に関して、親の監督義務責任を認めて1億円近い多額の損害賠償を命じた判決が言い渡されましたので紹介します。
■小学5年生の自転車傷害事故で
母親に9520万円の賠償命令
(神戸地裁 平成25年7月4日判決)
親の監督義務違反を認めて、9520万円の損害賠償を命じた判決です。
事故は神戸市北区で2008年9月に発生しました。当時小学5年生だった少年の自転車にはねられて転倒し、意識が戻らない状態が続いている神戸市内の女性(67歳)の家族と保険金を支払った損害保険会社が、少年の母親を相手取って約1億590万円の損害賠償を求めていました。
地裁の裁判官は、「自転車が坂道を時速20~30キロ程度の速い速度で進行したこと」と「前方を注視して交通安全を図るべき基本的な注意義務を尽くさなかった」ことを指摘し、「少年に自転車の運転に関する十分な指導や注意をしていなかった」として母親の監督義務責任を認めました。
その上で、将来の介護費用などとして家族に約3,520万円、保険会社に約6,000万円をそれぞれ支払うよう命じました。
(判例時報 2197号84頁~89頁)
【事故の概要】
発生日時 2008年9月22日
午後6時50分ごろ
発生場所 神戸市北区の坂道
事故の態様
小学校5年の少年が、マウンテンバイクに乗って坂道を時速20~30キロ程度で下っていたとき、知人の散歩に付き添い中の女性と正面衝突しました。
女性は約2.1メートルはねとばされ頭の骨を折るなどして病院に搬送されましたが、未だに意識が戻らない状態が続いています(判決当時)。
【判決例が示唆すること】
●加害者が自転車でも、後遺障害では高額化がすすむ
自動車による交通事故では死亡事故よりも重度の後遺障害が残った事故に対する損害賠償額が高額化しています。自転車事故に関しても基本的には同じだと考えられます。
被害者が重度の障害を負ったり、寝たきり状態などが続くと将来の介護費用などが莫大な金額となります。
●自転車も「車」としての責任を重視しよう
今回は、母親の監督義務責任が認められましたが、従業員が業務で自転車を利用中に交通事故を起こし、相手が死傷した場合は、事業所が使用者責任を負うことになります。
交通事故の発生頻度は低くても、自動車と違って自賠責保険がないだけに、損害賠償のリスクは高いとも言えます。自転車も「車」の仲間として、その利用には重大な責任が伴うことを従業員に指導するとともに、損害賠償保険についても検討しておきましょう。
(2013年07月16日 更新)
「軽く考えていませんか?自転車事故!」は、四輪車が自転車と衝突する代表的な事例を6つ取り上げています。
事例ごとにドライバー、自転車利用者双方にどのような過失があったかを考え、どのような不安全行動が事故に結びついたかを解説しています。
過失割合と損害賠償額も明示しています。
四輪車対自転車事故の損害の大きさを理解することができ、ドライバー、自転車利用者双方の教育に活用できる教育用教材です。