たとえば、先がカーブしている場所であっても、昼間であれば容易に道路形状が把握できますが、夜間には直線だと錯覚したりすることがあります。
このため、夜間には路外逸脱事故などが発生しやすくなるのです。
最近は、LEDで自発光する道路鋲(びょう)や車のライトにセンサーが反応して高速で点滅する視線誘導標などが開発され、道路形状を錯覚しやすい場所の道路外側線やセンターラインに設置されています。
新しく敷設された高規格道路や事故多発地点ではこうした標示が設置されて効果を発揮し、錯覚による事故も減ってきていますが、山道などでは視線誘導策が万全ではなく、ドライバーが速度を落として道路形状に気をつける必要があります。
↑ 上の写真のように、昼間はカーブがあると簡単にわかる場所でも、夜間は直線が続いているように錯覚することがあります。
夜間、前方に車がいる場合はテールランプを頼りに走行することがありますが、この前車のランプでも錯覚に陥ることがあります。
たとえば、路肩に駐車した車両のテールランプは、遠くから見ると走行中の車に見えることがあります。
高速道路では、とくにこのような錯覚に陥りやすく、路肩に止まった車の光に引き寄せられるように追突してしまうことがあります。
夜間の高速道路では、視覚刺激が少ないので意識が漫然として注意力が落ちていることも、停止車両を走行車両と錯覚しやすい要因となります。
また、夜間にやむを得ず路肩停止する場合は、後続車のドライバーが錯覚しやすいということも頭に入れて、ハザードランプを点滅させるとともに、早めに発炎筒や停止表示機材を設置して、安全な場所に避難することが重要です。
昼間でも原付バイクなどは遠くに見えやすいのですが、夜間はライトだけが頼りですから距離感がさらに狂いやすくなります。
そのため、右折時に対向原付車や二輪車のライトを認めた場合でも、遠くにいるように錯覚して右折を始めてしまいがちです。このとき、二輪車が意外に速く接近して衝突事故が発生しやすくなります。
複数のライトをもつ大型バイクが接近してくる場合では右折を諦めるドライバーでも、原付や小型二輪の小さなライトでは油断しがちです。
夜間の右折時には、長い間待たされることは少ないでしょうから、相手の距離と速度を厳しく見つもって、二輪車などが通りすぎるまで待つように習慣づけましょう。
夜間に距離感の錯覚からバイクと衝突した事故事例があります。
平成24年5月11日午前0時頃、愛媛県松山市内の国道56号で、交差点を右折しようとしていた軽乗用車と、対向車線を直進してきたバイクが衝突する事故が発生しました。
この事故でバイクに乗っていた23歳の男性は路上へ投げ出され、全身を強く打って死亡し、警察は軽自動車を運転していた40歳の女性ドライバーを自動車運転過失死罪容疑で逮捕しました。
警察の調べに対して、女性ドライバーは「バイクの存在には気がつきましたが、先に曲がれると思いました」と供述していますので、典型的な距離感と速度の読み間違いによる事故と思われます。