悪質・危険な運転で事故を起こす運転者に対する罰則を強化した、自動車運転死傷行為処罰法が平成25年(2013年)11月20日に国会で可決して成立し、11月27日に公布されました( 平成26年5月20日施行)。
今まで、危険運転致死傷罪と自動車運転過失致死傷罪は刑法における別々の条文でしたが、これらを刑法から削除し、新たに「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」を制定し、刑罰の軽重が定められました。
道路交通法でも強化された無免許運転に対する罰則も厳しくなりました。
★新法の主なポイント
・通行禁止道路における危険な走行による死傷事故(歩行者天国の走行・高速道路の逆走を含む)を危険運転致死傷罪に追加した
・「アルコールや薬物等の影響」について運転に支障が生じる恐れのある状態を新設し、危険運転致死傷罪の立証のハードルを低くした
・「一定の病気の症状」による運転への影響から生じた事故も危険運転致死傷罪として適用
・「飲酒や薬物等の影響」の発覚を免れようとした行為には、「発覚免脱罪」が適用される
・「無免許運転」の場合はすべての事故で量刑を加重
■第2条 危険運転致死傷(従来同様の刑罰、但し一項目を追加)
刑法第208条の2にあった「危険運転致死傷罪」が新法に移行しましたが、従来の5項目に次の1項目が追加されました。
・通行禁止道路を走行し、かつ重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車
を運転する行為(歩行者天国での暴走など。また、一方通行道路や高速道
路での逆走行為を含む)
・刑罰:人を死亡させた場合は1年以上の有期懲役(最高20年)、
負傷させると15年以下の懲役刑となります。
■第3条──危険運転致死傷(新設された部分)
危険運転致死傷として新たに設けられた規程です。アルコールや疾病の影響の恐れがある状態という文言により、従来よりも刑が適用しやすくなっています。法定刑15年上限。
・アルコール又は薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じ
る恐れがある状態で、自動車を運転し、よってそのアルコール又は薬物の
の影響により正常な運転が困難な状態に陥った状態
・自動車の運転に支障を及ぼす恐れがある病気(幻覚・発作・意識障害等を
を起こす症状のある病気で政令で定めるもの)の影響で正常な運転に支障
が生じる恐れがる状態で同様の状態に陥った場合にも適用される
・刑罰:人を死亡させた場合は15年以下の懲役、負傷させると12年以下の懲役。
■第4条──過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱(新設された部分)
飲酒運転等による死傷事故の発覚を免れるため、現場から逃げたりアルコールの重ね飲みをした場合に適用され、逃げ得を罰するため新設されました。
・アルコール又は薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じ
る恐れがある状態で、自動車を運転した者が、運転上必要な注意を怠り、
よって、人を死傷させた場合に、アルコール又は薬物の影響の発覚を免れ
るためにその場を離れたり、更にアルコール又は薬物を摂取するなどの行為
をしたとき
・刑罰:12年以下の懲役。ひき逃げとの併合罪を適用すると18年以下の懲役
■第5条──過失運転致死傷(従来は「自動車運転過失致死傷」)
自動車の運転上必要な注意を怠って人を死傷させた場合には、「自動車運転過失致死傷罪」が適用されていましたが、名称が変更され「過失運転致死傷罪」となります。
・刑罰:7年以下の懲役若しくは禁錮又は 100万円以下の罰金
■第6条──無免許運転による刑の加重
無免許運転で事故を起こした場合は、それぞれ3~5年の刑を加重することになりました。
・第2条の危険運転傷害罪(傷害事故)を無免許運転で起こした場合
刑罰:6ヶ月以上の有期懲役(最高20年)
・第3条の危険運転致死傷罪を無免許運転で起こした場合
死亡事故の刑罰:6ヶ月以上の有期懲役(最高20年)
傷害事故の刑罰:15年以下の懲役
・第4条の発覚免脱罪の事故を無免許運転で起こした場合
刑罰:15年以下の懲役
・第5条の過失運転致死傷罪の事故を無免許運転で起こした場合
刑罰:10年以下の懲役
この法律の施行日は公布の日から6月以内となっていますのが、関連した政令を定めるために、法務省が2014年2月26日より施行令案のパブリックコメントを募集し、政令案通りに施行されれば、2014年5月20日施行となる予定です。(2014年3月27日意見募集締切)。
↓
【2014年5月20日施行を閣議決定】
政府はさる4月18日、自動車運転死傷行為処罰法の施行日を5月20日とすることを閣議決定しました。
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【2014年4月23日 施行令を公布】
施行日を5月20日とすることを含め、特定の病気などを定めた「自動車運転死傷行為処罰法関連施行令」を公布しました(官報平成26年4月23日号外第91号)。
疾病など健康問題に起因する事故への罰則も強化されています。
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