昨年11月に、「自動車運転死傷行為処罰法」が成立しましたが、これまでと何が変わったのでしょうか?また、会社として気をつけておくことや、しておくべき対策はありますか?
平成25年11月に、「自動車運転死傷行為処罰法」が成立し、同27日に交付されました。
同法律は、正式名称を「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」といい、「自動車運転による死傷事犯の実情に鑑み、事案の実態に即した対処をするため、悪質かつ危険な自動車の運転により人を死傷させた者に対する新たな罰則を創設するなど、所要の罰則を整備する必要がある」ということが法案提出理由とされています。
交通事故で人が死傷した場合、これまでは自動車運転過失致死傷罪や危険運転致死傷罪が適用されていましたが、特に被害者が死亡し、運転者に悪質と評価されるような事情がある場合、遺族の被害者感情からすれば、自動車運転過失致死罪の刑罰は軽いといわれ、また危険運転致死傷罪は適用される範囲や要件が限られていました。
事実上、今回の改正は、このような被害者感情を汲み、これまでより要件を緩和し、新たな罰則を創設して、重い罰を課すことを可能とするものです。
同法律の詳しい内容等は省略しますが(リンク先をご参照ください)、これまでの自動車運転過失致死傷罪、危険運転致死傷罪を含み(第5条、第2条1号~5号)、同法律の施行に伴い、従来の自動車運転過失致死傷罪、危険運転致死傷罪は刑法から削除されることになります。
また、アルコール又は薬物、及び「自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるもの」の影響により、「正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」で運転し、走行中に正常な運転が困難な状態に陥って人を死傷させたときにも罰則が適用されるようになります(第3条)。
通行禁止道路を重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為(第2条6号)や、アルコールや薬物の影響を受ける者が、その影響の有無や程度が発覚することを免れる目的でさらに摂取したり、濃度を減少させたりする行為自体も罪とされ(第4条)、そして、危険運転行為者が無免許であった場合の刑の加重も規定されています(第6条)。