定期健康診断で「要精密検査」などの指摘があったとき、あなたはきちんと検査に行っていますか?放置したことにより、その後の運転業務に影響が出ることもあります。
定められた定期健康診断は必ず受診することです。また、健診後に精密検査の指示などがあれば軽視したりせずに、早期に受診しましょう。
健康問題に真摯に対処することが安全運転を確保する基礎となります。
個人タクシーが料金施設に衝突
個人タクシーの運転者(60代)がETC料金所で重傷事故を起こした事例を紹介します。
平成24年1月某日の午前1時半ごろ、個人タクシーが神奈川県の自動車専用道路をお客を乗せて運行中、制限速度20 km/h のところを70km/h 速度超過のまま料金所ETC レーンに進入しようとしたため、運転操作を誤り、料金所手前の土台に乗り上げて転覆、料金所施設を破壊しながら滑走し停車しました。
この事故でタクシーの乗客1人が重傷を負っています。
ボーっとしていた
運転者は事故当日、「眠りが浅く、ぼーっとしていた」状態で、「最近、疲れやすい」と供述しています。
その後の運輸局の調べで、運転者は定期健康診断を全く受けていないことがわかり、事故後にやっと健康診断と精密検査を実施しました。
運輸局がこのタクシー運転者に健康診断受診を指導したところ、事故後の3月に、「糖尿病につき精密検査の上で、就業の可否を決定する」という結果が得られました。
しかし、このタクシー運転者は自己判断で「健康には問題ないので運転を再開したい」と申告してきました。
運輸局より精密検査を受診するよう強く指導した結果、さらに6月には、
「糖尿病、心機能低下及び網膜症の精査が必要」という医師の診断があり、治療を実施、最終的に9月に完治したことから運転を再開できることになりました。
このように、このタクシー運転者は自分の健康状態さえ判断がつかず、自己管理ができていませんでした。糖尿病の弊害に加え、60歳代で加齢に伴う身体能力の衰えも進行していたことなどが、1月の事故に結びついたと考えられます(*)。
*この事例・原因分析は、「自動車運送事業に係る交通事故要因分析検討会報告書(平成24年度)──国土交通省自動車局」より引用しました
定期健康診断で、「不整脈」や「血糖値が高い」などの所見がみつかり、精密検査を指示されることがあります。
専門医を受診するときには、自分が運転者であることや運転業務につく時間などをなるべく詳しく申告しておくことが大切です。
デスクワークの人と違って運転業務は身体にかかるストレスが高いので、より慎重な経過観察が必要です。
とくに深夜運転の機会が多いプロドライバーは、半年に1回の健康診断を受けるとともに、医師とは綿密に相談しましょう。
不整脈、狭心症など循環器疾患の既往があるドライバーが、運転中の突然死に見舞われる例が最近は目立っていますので、自分が運転業務の途中でどのような注意をすべきか、よく聞いておきましょう。
健康診断などで疾病傾向を指摘された方は、以下のチェックポイントに当てはまることがないか、リスクのチェックをしておきましょう。
とくにプロドライバーの方や一般の企業でも運転業務時間の長い方は自分がハイリスク群にあることを自覚して、産業医などによく相談してください。
□ 再受診を指示されていないか
□ 専門医受診を促されているのに後回しにしていないか
□ 昨年も指示されたのに、放置していないか
□ 自分自身で不安があるのに受診を恐れていないか
□ 管理者から指導されているのに、軽視していないか
□ 最近、疲れやすかったり、朝つらくないか
検診指示を受けたら
精密検査を必ず受けよう
専門医を受診したら
運転業務の内容を具体的に説明する
深夜従事運転者は
半年に1回の健康診断を受診
(シンク出版(株) 平成26年3月3日更新)
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