まず、手当には各種の名目がありますが、実際の訴訟等では、従業員側としては、「各種手当も残業代金の計算の基礎となる賃金として計算すべきである」と求めることが多いですし、具体的事情を考慮せずに一律に支給しているような手当は、残業代金の計算の基礎となる賃金に算入されると考える必要があります。
また、「運転手当」が定額の残業代であるという場合には、定額残業代であることが分かるように周知し、それ以外の賃金との区別が明確に分かるようにしておく必要があります。
さらに、定額残業代である部分と、通常の時間外労働として計算した割増賃金とを比較対照できる定めがあることが必要になります。そして、定額残業代を支払っていたとしても、実際の残業時間に対する割増賃金が定額残業代を超えた場合には、その超えた時間に相当する割増賃金を支払う必要があります。
こうしたことから、ただ漫然と「運転手当」という名目で、残業代の支払をしているだけでは足りないといえます。
残業代金は、法律で定められているものであり、どの労働者にも請求する権利があり、かつどの会社にも支払義務があります。会社としては、残業代金支払義務自体は、会社の裁量で左右できるものではないと考え、適法な勤務・賃金体系、就業規則を確立し、労働に対応する給与を支払うという、ある意味当然のことを行うための対策を検討しておくべきです。
そのため考えられる対策は、業務体制の見直しと、賃金体系の見直しが主なものであり、以下ではその例を挙げます。
まず当然のことながら、残業をなるべくしなくても良い業務体制を作ることができないか検討すべきです。
業務内容については、ドライバーの申告だけに頼らず、会社として勤務時間や運行ルートを細かく見直し、より効率的なルートや作業方法を検討するようにします。余分な手待ち時間等を出さないようにし、積み込みや荷下ろしの作業内容や時間等にも無駄がないかをチェックすべきです。
もちろん過重労働にならないように配慮することは当然であり、さらに必要があれば、従業員各自について細かくシフトを割り振るなど、労働時間制について柔軟な対応をすることが考えられます。また一定の作業については、残業代金を支払うのではなく、パートやアルバイト等を雇用して対応することも検討すべきでしょう。
基本給や各種手当等、賃金体系の見直しをすることも必要です。少なくとも会社としては、いざ残業代金請求が行われた場合に、各種手当が、残業代金の計算の基礎となる賃金となるのか、そうではないのかを確認し、明らかにしておく必要があります。
また、残業代について定額制をとる場合には、賃金規程等によってそれを明示した上で、ドライバーの同意も取り、実際に割増分との差額が出るような場合には、月々の給与において精算するなど、未払残業代金が出ないような対応を採っておくべきです。
以下に残業問題への対応として、最低限行っておくべき事項についてチェックリストを作成しましたので、対応状況をチェックしてみてください。
□ 従業員の残業代を正確に計算している
□ 残業代金(定額残業代も含む)と、それ以外の賃金との区別を明確にしている
□ 残業代金の規程(定額残業代も含む)を就業規則、賃金規程で明示し、給与に おいても明確にしている。
□ 定額残業代を導入する場合、それが何時間分の残業代か分かるようにする。
□ 定額残業代と実際の残業代を比較し、不足分は割増賃金を支払っている
□ 定額残業代の規程について、従業員の同意を得ている
□ 残業ができるだけ発生しないように業務体制を見なおしている