交通事故発生時の初期対応3

■会社としてとっておくべき対策

 交通事故が起きた場合、会社は運行供用者責任や使用者責任を負う可能性が高くなりますが、上記のような運転者の対応を前提に、会社としても速やかにそのフォローや、その他の対応ができる体制を整えておくことが重要です。

1・連絡・事故対応体制の構築

 まず、人身事故・物損事故、あるいは損害の軽重を問わず、交通事故が生じた場合には必ず会社に報告することを決めておくべきです。


 そして、会社の事故対応の担当者、会社や保険会社への連絡方法、被害等の確認方法などのシステムを決めておき、事故が起きた際に誰がどのような業務を行うかを決めておく必要があります(当然保険に加入していることが前提です)。


 具体的な示談交渉等は、保険会社や弁護士に依頼することが一般的ですが、初期の段階におけるお見舞いなど、被害者と直接対応しなければならないような場合には、損害賠償について言った言わないなどという争いになることを避けるため、必ず一人で行くことは避け、事故を起こした本人、及び会社の担当者など、複数で対応すべきです。

 

 なお、複数で対応すると言っても、専門的なアドバイスを受けずにその場で示談をすべきではないことは当然ですし、できれば会話内容は録音等しておくなどの記録をしておくべきです。

2・会社を通さない判断や示談等の禁止

 運転者に対しては、その場で自分だけで判断することを禁止し、まず報告をさせるようにしなければなりません。また、当事者間だけで話し合いをすることを避けるように指導することは当然です。


 事故当事者だけで示談等をした場合、双方とも賠償額の客観的相場や過失割合等の知識も足りず、不合理に高額な請求がされることもあります。

 

 また交通事故では、けがによっては、その場では被害者自身もそのけがの重さに気づいていないような場合もあります。そのため今回の質問のように、ドライバーがその場でたいしたことがないと判断して報告等を怠り、後日とんでもない請求等が行われることも当然考えられます。そして、質問のような対応がなされた場合には、やはり現場の状況や、事故当時のけがの状況、目撃者等も全く不明であることが多いため、解決が困難となり、あるいは時間がかかることが多いといえます。

3・証拠の保全

 交通事故が発生した際には、会社としても、事故の態様、被害の程度、あるいは現場の状況や関係者を把握することが重要ですので、事故直後から同事故に関する交渉等は全て社内で記録しておく必要があります。


  また、交通事故の場合、当事者や目撃者の証言が重要な証拠となることが多いのですが、証言よりも監視カメラやドライブレコーダー等の映像等の方が客観的な信用性が高いといえます。特に過失割合などが争いになるような場合には、客観的証拠の有無で結論が変わることもあります。


 そのため、可能であれば社用車にドライブレコーダー等の設置を行うなど、証拠を保全する措置を検討しておくと良いでしょう。

4・交通安全教育、従業員への周知

 そもそも、事故を起こさないもっとも有効な対策ですので、会社として事前にしておくべきことの一つとして、交通安全教育をすることは重要です。


 また、上記のように社内でシステムやルールを整備しても、事故を起こしてしまった際に運転手本人が守らなければ意味がありません。そのため、交通安全教育と共に、事故を起こした場合の義務や会社等への連絡の仕方等、必要な対応については、従業員に周知しておく必要があるといえます。

(執筆 清水伸賢弁護士)

 

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