A・駐車場所や周囲の状況
駐車車両の責任が認められる要素のうち、駐車場所や周囲の状況は非常に重要であると思われます。例えば、高速道路や見通しの悪い道路(カーブの曲がった先や、トンネルを出たところなど)に駐車していた場合には、当然責任が認められやすいといえます。
また、一般的に交通量が多いといえる交差点の近くや、道幅が狭く、駐車によって歩道や車道をはみ出さなければならなくなるような場所への駐車も責任を認めやすくなる要素といえますし、駐車禁止場所への駐車自体も責任を重くするものといえます。
また、駐車している時間帯によって見通しなどの状況も変わってくるため、見通しの悪い夜はそうではない昼間の駐車に比べ、責任を負担する割合も高くなる傾向にあるといえます。
B・駐車態様
また、Aの駐車場所に加えて、どのような態様で駐車をしていたか、という点についても、責任を判断する要素として重要であるといえます。道路交通法47条2項は、「車両は、駐停車するときは道路の左側端に沿い、かつ、他の交通の妨害とならないようにしなければならない」と定めており、必要以上にはみ出したりして、交通を妨害するような態様での駐車は、責任の負担を重くするものです。
また、駐車が夜間であったり、見通しの悪い道路であったりする場合に、駐車灯や灯火の点灯、停止表示器材の設置等、危険回避の措置を行っているかどうかで、責任を負担する割合も変わってくるといえるでしょう。
会社の業務中に従業員が車両を駐車し、事故が発生してその従業員に責任が認められるような場合には、会社にも責任は生じると考えておくべきです。
この点、運行供用者責任については、駐車している自動車について「運行」といえるかどうかという点について問題となるところですが、裁判例では肯定されているものも多く、また少なくとも使用者責任は認められます。そのため会社としても、従業員に対する教育等をはじめとして、対策をしておくことが必要といえます。
まず当然の話ですが、可能な限り路上駐車をしないようにすべきです。顧客の家等に訪問する際には、直接顧客に問い合わせたり、地図等で調べたりして、訪問先やその周囲の駐車場等を確認し、路上駐車をしなくてすむようにすることが必要です。
それでも、特に設問のような住宅街の場合、路上に駐車しなければならないこともあると思われます。その場合には、周囲の交通の障害にならないように、駐車場所、及び駐車の仕方を十分配慮して、事故等が起きないように注意することが重要です。
その際に確認すべきポイントは、駐車禁止場所ではないか、周囲の見通しや道の幅、明るさ、駐車灯の点灯等の必要性、駐車の方向、位置などです。その上で、車、自転車、及び歩行者等の第三者の進路を妨げる程度、危険を及ぼすおそれの程度などを検討すべきです。
また、設問のような電化製品の修理で長時間車両を置いておく場合には難しいかもしれませんが、配達業務などの場合は、複数人で同乗し、一人は常に駐車車両にいるようにし、道路の状況の変化に応じ、すぐに場所を変更するなどの対応ができる体制にしておくことも有用といえます。
(執筆 清水伸賢弁護士)