見通しのよい交差点での二輪車と乗用車の出会い頭事故の事例です。
【事故の状況】
平成15年1月7日午前6時50分ごろ、Aは自動二輪車を運転して幅員3メートルの道路を時速約40~50キロで走行しており、見通しのよい交差点に差しかかりました。
交差点手前数10メートル手前で、交差道路の左から普通乗用車Bが交差点に近づいているのを発見しましたが、乗用車よりも先に通過できると判断し、そのまま進行しました。
そして、交差点手前5~10メートルの地点でわずかに減速し、前方を向いたまま視界に入る範囲で交差道路の安全確認をして、交差点に進入したところ、Bも進入してきており出合頭に衝突しました。
Aはこの事故により、上顎骨骨折、左下腿骨開放粉砕骨折等の傷害を負い、約6,030万円(過失相殺前の金額)の損害が発生しました。
一方Bは、幅員4.8メートルの道路を時速約40~50キロで走行しており、交差点手前30数メートルの地点で、たばこをジャンパーのポケットに入れようとしてわき見をしました。
前方に向き直った後、交差点に進入しようとしたところ、右から自動二輪車が進入してきており、ブレーキをかけましたが間に合わずAに衝突しました。
Bは、交差道路の安全を確認することも減速もしておらず、衝突直前までAには気づいていませんでした。
【裁判所の判断】
裁判所は、運転者の責任・過失割合を次のように認定しました。
●Aの過失
「Aの走行していた道路よりもBの走行していた道路のほうが明らかに広く、Aは交差点を通行するにあたり、交差道路を通行する車両の進行を妨害してはならず、徐行すべき注意義務があるのに、これを怠った過失がある」
●Bの過失
「Bは、交差点を通行するに当たり、その状況に応じて安全確認をし、できる限り安全な速度と方法で進行すべき注意義務があるのに、これを怠った過失があり、Aに生じた損害を賠償すべき責任がある」
●A、Bの過失割合
「Bが、交差点手前30数メートルの地点でわき見をし、前方に向き直った後、交差点を通行するに当たって、交差道路の安全確認をしなかった過失は大きいと言うべきであるが、Aが交差点手前数10メートル手前で、交差点に向ってくるBを認めたのに、交差点を通行するにあたり、前方を向いたまま視界に入る範囲で交差道路の安全確認をしたにすぎない過失もまた大きいと言わざると得ない」
「Bが交差点を通行するにあたり減速していないこと、Aも明らかに減速していないこと、衝突の状況はBがAの左側後部に衝突していたことから考えると、Aが先に交差点に入っていたことが認められることから、過失割合はAが50%、Bが50%とするのが相当である」
(名古屋地裁 平成21年3月6日判決)