会社に上記各責任が認められる要件は、それぞれ異なり、限られた紙面の関係上、全て説明することは困難ですので割愛しますが、一般的・抽象的には、会社に責任が生じるのは、会社の管理が飲酒運転を許容するような不十分なものであり、そのため事故が生じたといえるような場合であるといえます。
そもそもまず就業中に飲酒運転がされること自体、会社の業務管理や従業員の指導がほとんどされていないともいえ、会社の責任は認められやすいでしょう。
また、業務中の事故だけではなく、例えば会社が容認あるいは黙認しているマイカー使用による通勤の場合でも、会社の責任が認められる場合はあります。さらに忘年会や運動会等、会社の行事などで飲酒が前提となるにもかかわらず、特に各従業員等に対する対処をせずに漫然と各従業員の自動車の運転を許容していたとみなされるような場合も、会社の責任が認められる場合が多いでしょう。
事故が生じた場合の被害者側としては、損害を確実に賠償して貰うために、運転者個人のみならず、会社に責任追及ができないかという点は必ず検討しますので、会社としての対応は必須です。
会社としての対応は、通常の交通事故対策と変わるものではなく、交通安全教育の実施や、飲酒運転等の機会の排除等を行うことになります。また、任意保険への加入も必要です。
車両運転が必須である職種の場合、新規採用段階から、適性と職務遂行能力判断のために合理的かつ客観的に必要といえるような態様で、健康診断の実施や、特定疾患の有無についての調査をすることも検討すべきです。
また、運送事業者はドライバーに対して交通事故歴についての運転記録証明書の提出を求めることになりますが、それ以外の事業者でも、任意に提出を求めることなども考えられます。
忘年会等で飲酒の機会があるような場合には、運転を厳禁し、あるいはハンドルキーパーを明確に定めるなどして、飲酒運転をさせないように配慮しなければなりません。
また、飲酒運転の知識の習得も重要な対策です。現在でも、飲酒しても数時間寝れば、お酒は抜けて運転して良いなどという誤った認識で、漫然と業務を行っているような会社もあるようですが、これでは会社が飲酒運転を容認しているとみなされても反論できません。
会社としても、飲酒運転に関する正確な情報を把握したうえで、きちんと業務管理し、従業員にも飲酒運転の危険や防止のための知識等を周知すべきです。
(執筆 弁護士 清水伸賢)