裁判例にも、駐車場を設置した者に対する損害賠償請求が認められた事例がいくつかあり、それらの事例では、駐車場管理者が行った対応が問題となっているものがあります。
・裁判例1
バイクに乗った被害者が、駐車場内で、無断駐車排除のために張られたロープに頚部を掛けて転倒した結果死亡した事故につき、駐車場内の安全確保の措置に不十分な点があり、この点の過誤が事故の原因となったとして、ロープの設置、管理の瑕疵による賠償責任を認容した。
(岡山地裁津山支部 平成4年7月15日)
・裁判例2
保育園の屋上に設置された駐車場から車両が転落し、同車の下敷きとなって死亡者が出た事故について、同駐車場は園児らの生命身体を守る高度の安全性を要求されるところ、その設置や保存に瑕疵があると認められた。
(名古屋地方裁判所 平成17年3月29日)
以上のとおり、駐車場の管理者は、駐車場の設備等について、本来有すべき安全性を確保する措置を講じなければなりません。また管理に問題がないと思われる場合でも、第三者間の事故の当事者が、駐車場管理者に責任があったとして、思わぬ責任追及してくることもありえます。
そのため、安全性を確保する措置は必ず行わなければならず、さらに駐車場内の事故自体を減少させる措置も併せて検討すべきです。以下では、具体的対策を考える際に検討すべき点をいくつか挙げますので、駐車場内における事故防止対策の参考にして下さい。
1・出入口、境界付近
□ 出入口のスペースの有無の確認
□ 表示、警備員等の配置の必要性の検討
□ フェンス、塀等の強度等の安全確認
2・危険箇所の確認
□ 駐車場内の工作物の存在の把握
□ 各工作物の安全性点検
□ 危険予測・過去の事故状況の分析
□ 駐車場内の見通し、走行できるスペースの広さの確認
□ カーブミラー等の設置の必要性の検討
□ 事故が集中する地点の有無の確認
□ 駐車場所の位置・スペースの適切性の検討
□ 歩道、横断歩道表示の必要性の検討
□ 注意喚起の表示、のぼり、ポスター等の必要性の検討
3・施設・物の状況
□ 駐車や走行、見通しを阻害する工作物の有無の検討
□ 車止めの必要性の検討
□ 駐車スペースの範囲の明確性の確認
4・駐車場内の走行車に対する対策
□ 速度制限、一方通行の指定等の必要性の検討
□ 速度制限、一方通行、停止線等が明示できているかの確認
□ 駐車方向の指定の必要性の検討
5・外部者との関係
□ 外部から無関係の者が侵入することの容易性の確認
□ 関係者以外立入禁止の明示等の対応の必要性
□ 夜間、早朝等、使用しない時間帯の外部者の排除するための措置の必要性の検討
□ 外部者の排除等の措置が、別の危険を生じさせていないかの検討
6・その他
□ 監視カメラ設置の有無、及び必要性の検討
□ 事故等があった場合の対応責任者、及びマニュアルの策定
□ 駐車場管理規程の策定
(具体的な事案によってはこれらの対応だけでは足りないとされる場合もあり、状況に応じての検討が必要ですので、ご注意下さい)
(執筆 清水伸賢弁護士)