前々回で交通違反を繰り返すドライバーは、交通事故の当事者となる確率が高いと述べましたが、とくに特定の違反で、違反を反復する運転者の交通事故の発生リスクが高いということがわかっています。
また、違反の種類によって起こしやすい事故にも特徴があります。
自動車安全運転センターが、過去5年間の違反データと翌年の事故発生データをもとに分析した研究があります。
分析結果によると、違反や事故の経験回数が多い運転者ほど事故当事者率(交通事故の当事者となる確率)が高いという傾向がみられましたが、違反によって差があります。たとえば
○ 駐停車違反は、違反回数が増えても事故当事者率が顕著に上昇しない。
○ 最高速度違反は、駐停車違反よりも事故当事者率が上昇する。
○ 一時停止違反は、経験回数が1回から2回に増加した時の事故当事者率
の上昇は、駐車違反や速度違反よりも大きい。
○ 信号無視は、違反回数の増加に伴う事故当事者率の上昇傾向がもっとも顕著
──といったことが明らかになっています(下図参照)。
そこで、特に一時不停止や信号無視など「止まれない」違反を起こすドライバーは事故当事者となる危険性が高いグループと判断して、早期に事故防止教育をする必要があると考えられます。
※「安全運転に必要な技能等に関する調査研究(Ⅲ):自動車安全運転センター」より
また、同センターでは別の4年間におかした「違反の種別」と、その翌年に発生した事故を分析し、「特定の違反で起こしやすい事故類型」についても分析しています。
分析結果によると、次のような傾向が顕著になっています(下図参照)。
○ 信号無視違反回数の多い者は「追突事故」の当事者率が高く、違反回数との間に
強い関連性が見られる。
○ 最高速度違反回数の多い者は「追突事故」「出会い頭事故」「人対車両事故」
の当事者率が高くなる。
○ 一時停止違反回数の多い者は「追突事故」「出会い頭事故」の当事者率が高く
なり、強い関連性が見られる。
○ 駐停車違反回数の多い者も、「追突事故」「出会い頭事故」の当事者率が高く
なり、強い関連性が見られる。
○ 携帯電話使用違反回数が0 回~4 回の者は「追突事故」の当事者率が高くなり、
強い関連性が見られる。
○ シートベルト着用義務違反回数が0~6回の者は「追突事故」「出会い頭事故」
の当事者率が高くなり、強い関連性が見られる。
同センターでは、このようなデータを踏まえて、「ある種の違反とある種の事故の間には共通の運転者特性が関与していることを示唆している」と分析しています。
たかが違反と軽視しないで、ハイリスクグループを発見し、交通事故を起こす前に早めに教育していくことが重要です。
※「安全運転に必要な技能等に関する調査研究(Ⅳ):自動車安全運転センター」より