最近、吸引すると興奮作用や幻覚作用が出現する「危険ドラッグ」が影響したとみられる交通事故が多発し社会問題化しています。
事業所の運転者が、安易な気持ちでドラッグを吸引して、もし事故などを誘発した場合、企業のイメージダウンは必至です。
事業所でも、飲酒運転の危険などとともに、こうした薬物使用の危険について指導しておきましょう。
危険ドラッグは、覚醒剤や麻薬に似た作用を持つものの、麻薬取締法など法規制の対象外となっている成分を含んでいる植物片や液体の総称です。
お香やアロマ・ハーブなどと称して販売されていることもあります。また、業者が「合法です」など虚偽の表示をしていて、実際には薬事法で指定された違法薬物や麻薬等が含まれていることも少なくありません。
こうしたドラッグを使用していて死亡事故が発生した例もあります。
【死亡事故事例】
平成26年6月24日、東京都豊島区西池袋で脱法薬物(危険ドラッグ)を吸って朦朧とした男(37)の乗用車が歩道を暴走し、8人が死傷しました。
この事故の運転者は、危険ドラッグを吸引した約1分後に突然意識を失ったとみられ、「自動車運転死傷行為処罰法違反(危険運転致死傷)」で起訴されています。
【人身事故事例】
平成26年7月5日、東京都北区で路上で、購入した薬物を吸引した運転者(39)の乗用車が赤信号で急発進し、信号待ちのバイクや対向車線のタクシーと衝突しました。
この事故の運転者は、「車を止めようとしたが気付いたときには病院のベッドで横になっていた」と供述しています。
【物損事故事例】
平成26年8月5日、神戸市兵庫区で軽ワゴン車を運転中、乗用車などに衝突した運転者(25)は、「ストレス発散のために危険ドラッグを吸った」などと供述し、物損事故でしたが道路交通法違反(過労運転等)で逮捕されました。
この運転者は事故当時、目がうつろで、腕を振り回す異常な行動を繰り返していました。
【ほう助罪適用事例】
平成26年8月10日、東京都立川市で危険ドラッグを使用した男(30)が運転する車が電柱に衝突した事故で、警視庁は助手席に乗っていた男(29)も、道路交通法違反(過労運転等の禁止)ほう助容疑で書類送検しました。
同乗者の男は、危険ドラッグを入れたパイプを運転中の男に手渡して一緒に吸引するなどして、過労運転等をほう助した疑いです。
■警視庁は交通違反がなくても処分の方針
危険ドラッグを吸引して事故を起こせば、危険運転致死傷や過労運転等の罪に問われ免許取消処分は免れません。
さらに警視庁は、平成26年8月から、危険ドラッグ使用者が車を運転した場合、交通事故や違反がなくても最長6か月、運転免許停止の行政処分を科す方針を定めました。
道路交通法第103条では、麻薬や覚醒剤、アルコール中毒者のほか、幻覚症状を伴う精神疾患患者など、事故を起こす恐れがある「危険性帯有者」に対し、管轄する公安委員会が、運転免許を最長6か月停止できると規定しています。
危険ドラッグを使用しているドライバーも常習性や危険への認識があれば、この「危険性帯有者」に含めて規定を運用することを決めたものです。
他のすべての道府県警察で、このような規定の運用にまでは至っていませんが、神奈川県など危険ドラッグ規制に独自の条例(緊急時の販売禁止勧告)を発令する県もあり、社会の規制網は確実に厳しくなっています。
危険ドラッグを使用して車やバイクを運転すると、以下のような罪に問われる可能性があります!
※上記の過労運転等(麻薬等運転)は、危険ドラッグに合成麻薬成分等が検出された場合。
それ以外の過労運転等でも、3年以下の懲役または50万円以下の罰金となります。
警察庁の調査によると、危険ドラッグ使用が原因と疑われる死者が平成24年以降で少なくとも41人に上ることが明らかになっています。呼吸困難、意識喪失のほかビルの屋上から飛び降り死亡したり、吸引後に電柱に激突する自損事故で死亡した例もあります。
死者の内訳をみると平成24年(2012)は8人、平成25年(2013)は9人、平成26年(2014)は6月までの統計ですでに24人に上っています。
都道府県警察によっては、今まで危険ドラッグ死者の統計をとっていないところもあり、実際の死者数はさらに多いとみられています。