■無事故で年末を過ごし明るい年始を迎えましょう
2014年もあと1か月を残すのみとなります。12月は人や車が慌ただしく動く上に、忘年会などお酒を飲む席も増えることから、交通事故や飲酒運転のリスクが高まる時期です。
また、貨物や旅客の運送事業では繁忙期を迎え、臨時運行やスポットの特別業務などが増え、年末特有の災害が心配されます。寒さも厳しくなって健康にも配慮する必要があり、管理者にとっても正念場です。
■「あせる心」 にブレーキをかけましょう
年末は、仕事が立てこんで多忙になりますので、運転中も「急ぎ」「あせり」の心理に陥りやすくなり、それだけ事故の危険も増加します。
交通心理学の研究者・丸山欣哉氏(東北大学名誉教授)が以前行った研究によると、「急ぎ条件=列車に遅れそうになった人を送っていくことを想定して運転」による負荷を与えた場合、運転者の行動には、負荷のない「ゆとり条件」の時と比べて次のような問題が発生しました。
●スピードを上げすぎる
●一時停止が不十分になる
●右左折時にも、減速しないようになる
●右左折時や一時停止場所での確認回数が有意に減少する
●発進時の確認行動が発進動作後になる(ゆとり条件時は発進前に確認)
とくに、発進時の動作優先行動はベテランドライバーで起こりやすく、初心ドライバーでは、確認回数が減少したとき、重要な確認ポイントが抜け落ちる傾向が強いことがわかっています。
■早く着くより確実に着くことを優先
私達日本人は、約束時間に遅れることを嫌い、少し電車やバスの到着が遅れただけでもイライラする人が多いものです。運転にもこの傾向が現れて、訪問や納品は、少しでも約束時間より先に着いて、相手に喜んでもらおうとしがちです。
しかし、もし交通事故でも起こしてしまえば、その日は到着することすら無理という事態にもなり兼ねませんので、「少しぐらい遅れても構わない」「安全・確実に着くことが優先」と考え、確認行動などを省略しないよう意識しましょう。
会社の上司や取引先の人が、「急げ」「早く」と言っても、あせるのは禁物。事故を起こして苦しむのは自分自身であることを忘れないで、混んでいる道路では無理はできないと諦めることが肝心です。
渋滞などにあったら、遅れることを先方に事務所から連絡してもらい、落ち着いて行動して下さい。
■飲酒運転の根絶に取り組みましょう
忘年会など、酒を飲む機会が増える時期ですので、今一度、飲酒運転の根絶について運転者・従業員全体に確認しておきましょう。
また、「まさか、自分が飲酒運転をするはずがない」と思っている人でも、前夜の酒気残りに気づかないまま運転して、思わぬ酒気帯び運転で驚くことがあります。
安全運転管理者や運行管理者、また忘年会などの幹事は、以下の点をしっかりと運転者に確認しておきましょう。
宴会の前には | 「飲酒運転の根絶」について再度、話をして念を押す |
車がある場合は | 「ハンドルキーパー」の人選を行い、根絶宣言をさせる |
交通手段は? | 各人の帰路の交通手段(タクシー・代行等)を確認する |
通勤途中の 駐車車両は |
自宅近くの駅駐車場などに車・バイクを止めている人にも 帰宅時には「絶対に運転しない」ように指導する |
運転代行を 使う人には? |
自宅近くで運転代行業者を帰してしまい、車を運転する人が 「酒気帯び運転」事故を起こしていると警戒を促す |
酒気残りは? |
多量の飲酒は、翌朝にも酒気残りの危険があると指導する |
帰宅後にも… |
仮眠後の買い物などで「酒気帯び運転」が多いことを指摘する |
■酒気残りの解消には時間がかかる
前夜にお酒を飲んでも就寝すれば抜けてしまうと考えている人が多いと思います。しかし、実際には、飲んだアルコールの量によって、翌朝もアルコール濃度が高く酒気帯び運転になることは珍しくありません。
下の計算式でも明らかなように、缶ビール3本飲んだ場合、8時間たってもアルコール濃度がゼロにならないことがあります(囲みを参照)。
また、たとえアルコール濃度が低下して呼気には出なくなっても、飲酒した翌朝は、
●有意に視神経感度が低下し、深視力が低下する
●呼気中アルコール検査にアルコールが出ない場合も尿検査では含有している
●疲労感から、運転操作、反応などに影響がでる
ことがわかっています。
翌朝に運転するドライバーには、寝酒などを止めさせて、宴会での飲酒量も控えるように指導しましょう。
■風邪、インフルエンザを予防しましょう
寒くなってきました。風邪やインフルエンザの季節です。ただでさえ忙しいのに、身体を壊して休むと皆に迷惑をかけることになりますが、無理は禁物です。
事故を起こしたり、他人に病気をうつす危険も考えましょう。睡眠をよくとって早めに治すことが大切です。
■うがい、手洗いの励行
伝染性の病気は、ほとんどが経口感染、そして、自分の手についたウイルスを身体に入れてしまうことが原因になりやすいと言われています。うがい、手洗いが重要なのはこのためです。
「うがいくらい」と馬鹿にしないで、生活習慣にするよう努めてください.
■風邪薬の副作用にも注意が必要
体調を崩したときには無理をせず、薬を飲んで症状を緩和するのも解決法になりますが、風邪薬の副作用には注意が必要です。
風邪薬には「眠気」など危険な副作用が現れる場合もあります。運転前に飲んでも危険のない薬かどうか、薬剤師や医師に確認して服用しましょう。
眠くなる成分としては、以下のようなものがありますが、アセトアミノフェンのような解熱剤成分だけの薬であれば、眠気の心配はありません。
●抗ヒスタミン剤
●リン酸コデイン(咳止め)
●アリルイソプロピルアセチル尿素(鎮静作用剤)
【すべての安全運転管理担当者の皆さんへ】
■路面状態の急変に注意
すでに初雪が降った地域も少なくありません。年末にかけて、降雪や凍結による路面状態の急変に注意しましょう。スリップ事故の危険が増大しています。
スタッドレスタイヤへの履き替えが済んでいない車両については、早急に対処し、タイヤチェーンの搭載もチェックしてください。
また、翌朝に降雪が予想される日には、前日の夕方に車庫でチェーンを巻いておくなど、きめ細かい管理・指導を実施しましょう。
チェーンやスタッドレスタイヤによるすべり止め措置をした車であっても、カーブや坂道ではスリップによる対向車との正面衝突事故が多いことに留意させ、スピードを落として運転することを指導してください。
【事業用自動車の運行管理者の皆さんへ】
■安全に関する記録のチェックと整理
トラック、バス、ハイヤー・タクシーなど、自動車運送事業を営む事業所では、輸送の安全に関する記録等の保存・保管が法令で義務づけられています。
年末の安全総点検の機会に、各営業所などで一定期間保存することが定められた書類の管理状況をチェックさせましょう。
【保存すべき記録の例】 | 【保存期間】 | |
●点呼記録簿 |
1年間保存 | |
●乗務記録表(運転日報) |
1年間保存 |
|
●運行記録計の記録 | 1年間保存 | |
●運行指示書とその写し |
1年間保存 |
|
●日常点検表 | 1年間保存 | |
●定期点検整備記録簿 | 1年間保存 | |
●交通事故の記録 | 3年間保存 | |
●従業員に対する指導・監督の記録 | 3年間保存 | |
●運転者台帳の記録(退職後も3年保存) |
3年間保存 | |
●苦情の記録(バス、ハイヤー・タクシー) |
1年間保存 |
保存書類はファイリングを工夫し、最新の情報が常に引き出せるように書類の見出しなどを整理、保管期間も示しておきます。起算日を明記し保存期間を過ぎた書類を順番に破棄しておくことも重要です(※)。
また、運転者への指導・監督の記録などは抜けている者がいないか、点呼記録簿の印鑑が抜けていないかなど記録をよく見ておきましょう。
これらの書類が損傷したり紛失していた場合、運輸支局による監査の折などには、安全管理の実態を示す書類がないということで、大きな問題となります。
点呼記録簿を紛失した場合など、そのこと自体が処分理由となりますが、さらに「点呼の未実施」という重大な違反を疑われる恐れもありますので、注意しましょう。
※労働者名簿や賃金台帳・残業指示書など労働関係にかかる重要な書類は、3年間保存
する必要があります(労働基準法第109条)。乗務記録や運行指示書などが賃金支払
と密接に関係する場合は、1年で破棄せずに3年分の保存が必要です。
■労働災害を防止するための安全チェック
貨物自動車運送事業では、最近、多発している災害として、荷台からの転落事故、ロールボックスパレットなどとの挟まれ事故、ウイングとアオリとの間の挟まれ事故、誘導者などの挟まれ事故などがあります。
年末の繁忙期は、アルバイト職員などによる作業も多くなりますが、臨時の職員でも雇入れ時の安全教育は必要となってきます。
以下の点をチェックしておきましょう。
【安全チェックすべき項目例】 | チェック | |
●雇い入れ時の安全教育は実施しているか? | □ | |
●作業変更時の安全教育を実施しているか? | □ | |
●危険有害業務従事者への安全衛生教育を実施しているか? | □ | |
●中高年者の身体能力に配慮した作業となっているか? | □ | |
●職長等の監督者教育を実施しているか? | □ | |
●作業手順を定め、徹底のための指導をしているか? |
□ | |
●朝礼、ミーティングでの安全指示の再確認をしているか? |
□ | |
※「危険有害業務従事者」にはフォークリフトも含まれます |
日 付 | 行 事 等 |
1日(月)~ 31日(水) |
・大気汚染防止推進月間(環境省)
──例年12月は、自動車交通量の増加、ビルや家庭の暖房ほか、気象条件の影響等により、大気汚染物質の濃度が高くなる傾向にあるため、環境省では、「エコドライブの実践」など、広報活動を通じて大気汚染物質の削減を呼びかけています。 |
1日(月)~ 1月31日(土) |
・陸上貨物運送事業「年末・年始労働災害防止強調運動」
──陸上貨物運送事業労働災害防止協会(陸災防)の主唱する労災防止運動です(2015年1月31日まで)。 |
1日(月)~ 1月15日(木) |
・平成26年度 建設業「年末年始労働災害防止強調期間」 ──建設業労働災害防止協会が例年災害の多い年末年始に、積極的な災害防止運動を展開します。交通労災としては、現場送迎時の事故防止、路面凍結等によるスリップ事故の防止などを強調しています。 スローガン「無事故の歳末 明るい正月」 |
1日(月) |
・防災用品点検の日
──防災アドバイザーの山村武彦氏が提唱しています。 関東大震災の起きた9月1日のほか、3月1日・6月1日・12月1日の年4回実施。 |
3日(水) |
・個人タクシーの日──東京都で40~50歳で3年間無事故無違反の優良運転手173人に個人タクシーの免許が許可された日を記念して1959(昭和34)年に制定されました。 |
3日(水)~ 9日(火) |
・障害者週間──障害者基本法では、12月3日から9日までを「障害者週間」と定めています。障害者の自立と社会参加を実現していくためのフォーラムやセミナーなどが行われます。 |
7日(日) |
・大雪 |
9日(火) |
・障害者の日 |
9日(火) |
・12月の製品安全点検日──経済産業省は毎月第二火曜日を「製品安全点検日」として、製品の安全な使用法やリコール製品等について情報提供・注意喚起を行っています。 |
10日(水)~ 1月10日(土) |
・年末年始の輸送等に関する安全総点検(来年1月10日まで)
──国土交通省は毎年、輸送機関に対して自主点検等を通じた安全性の向上を呼びかけています。(※詳しくは、同省のWEBサイトを参照してください) |
12日(金) |
・バッテリーの日──電池工業会が設定。野球のバッテリーの守備位置数字が1、2であることから。(※自動車バッテリーの基礎知識については同会のWEBサイトを参照してください) |
15日(月) |
・観光バス記念日──1925年(大正14年)のこの日、東京で初の遊覧乗合自動車(観光バス)が登場しました。 |
15日(月)~ |
・年末年始無災害運動(来年1月15日まで)
──厚生労働省後援のもと中央労働災害防止協会が主唱する運動、今年で44回目を迎えます。今年の共通標語は、「安全の足並み揃えて 手を抜かず 年末年始もゼロ災害」 |
16日(火)~ 1月15日 |
・年末年始港湾無災害強調期間 ──港湾貨物運送事業労働災害防止協会による年末年始の事故防止活動。 |
20日(土)
|
・道路交通法施行記念日──1960年(昭和35年)のこの日、道路交通法が施行されました。それまで交通行政は1947年制定の「道路交通取締法」により、各都道府県の行政処分基準などにはバラつきがありましたが、全国で統一した法制となったのです。 |
22日(月) |
・冬至 |
23日(火) |
・天皇誕生日 |
25日(木) |
・クリスマス |
26日(金) |
・官庁仕事納め |
………………… | …………………………………………………………………………… |
12月中旬 |
・平成26年11月末における交通事故発生状況公表(警察庁) |
~12月中旬 |
・荷主等の事業場の荷役災害防止担当者への安全衛生教育講習会(陸災防各都道府県支部) |
12月下旬 |
・平成26年11月末の労働災害速報 |
◆12月の日没時間(国立天文台天文情報センターによる)
1日(月) | 福岡 17:10 | 大阪 16:47 |
東京 16:28 |
15日(月) | 福岡 17:12 | 大阪 16:49 | 東京 16:29 |
31日(水) | 福岡 17:20 | 大阪 16:57 | 東京 16:37 |
★「おもいやりライト=早めの点灯」
運動に取り組みましょう!
12月は冬至を迎えて一年中で一番日が短くなる時期です。運転者の皆さんは、早めの点灯を意識しましょう。それだけの配慮で交通事故を減らすことができます。ぜひ早めの点灯を習慣にしてください。
「おもいやりライト運動」は、夕暮れ時のヘッドライト早期点灯を ドライバーに呼びかけて交通事故を削減する運動です。1横浜の運動事務局の呼びかけに応じて全国で展開されています。
※詳しくは「おもいやりライト」のサイトを参照してください