交通事故の損害の大きさを指導していますか──その1

■起こってからでは遅すぎる──事故が社会に与える影響は大きい!

──社会的影響の多い事故の損害を意識させよう!

踏切事故

 交通事故は人身被害のない場合やちょっとした接触事故だと思っても、鉄道の高架などにトラックが衝突し、電車を長時間止めることなどにより、大きな社会的影響を与え、多額の損害賠償責任が発生することもあります。

 運転者のちょっとしたうっかりミスが、大きな事件に発展する危険もありますので、起こってからでは遅すぎます。

 とくにトラックやバスなど大きな荷物・危険物を運んだり、多くの人員を輸送する運転者に継続的な指導・監督が必要なのはこのためです。

 

 このシリーズでは、社会的な影響の大きかった事故の事例を紹介していきますので、指導の参考にしてください。  

■踏切で立ち往生して、約3億円の損害賠償責任

山陽電鉄踏切事故

トラックの後部が踏切内に残り、

特急列車と衝突した

 

 平成25年(2013年)2月12日午後3時50分ごろ、兵庫県高砂市の山陽電鉄の踏切で立ち往生していた車両運搬用のトラックと特急電車が衝突する事故が発生しました。

 現場踏切のすぐ先には、信号交差点があり、信号待ちの車が1台いたために、進入したトラックの荷台後部の車両積み降し用の可動式スロープが遮断棒に引っかかってしまい、線路上に車体の一部がはみだしたまま停車していたのです。運転者がスロープを外そうと下に降ろしたとき特急列車と衝突しました。

 

 この事故で、電車はプラットホームに衝突して停止、1両目と2両目が脱線し運転士が重傷を負ったほか、乗客15人が軽傷を負いました。 

 このほか、鉄道施設などに以下のような大きな損害が発生しています。 

  【事故による鉄道施設などの損害──人身損害を除く】
 鉄道施設等 損害の状況
 電車  1両目─大破 2両目─中破 3両目~6両目 連結器等破損
 電柱   上り線2本─倒壊 下り線1本倒壊、1本折損
 電線等

 電車線等が損壊して、上下線間に落下した

 軌道

 脱線事故によるレールの損傷

 駅ホーム  ホーム床板、ホーム橋脚及びホーム用照明用具等が損壊
 周辺民家等

 上り線路左側に隣接する民家の一部及びブロック塀等が損壊

 駅に隣接する駐車場の設備等が損壊、駐車車両数台の窓が破損

 列車運休等

 542本の列車が運休した他、59本の列車に遅れ等の影響が発生

  ※運輸安全委員会 鉄道事故調査報告書(平成26年6月27日)より

 

■運転者への処分──

  執行猶予だったが禁錮2年6か月の重罪

 事故を起こした運転者の刑事裁判では、

「踏切遮断棒にひっかかったスロープを降ろして脱出をはかったのは判断の誤り。運転者が対向車線側へ支障の無い程度に車両を前進させていれば列車との衝突を回避できた」 

「判断ミスにより電車に衝突させた過失責任は大きいが、勤務先の保険で被害者や鉄道会社などへ賠償がなされる見込みもある」

と判示し、自動車運転過失傷害と過失往来危険の罪で禁錮2年6か月、執行猶予4年(求刑禁錮3年)の判決を言い渡しました (神戸地裁 平成25年11月25日判決)。

 

■損害賠償額は約3億円

 鉄道会社の施設や列車運休に関わる賠償額などは公表されていませんが、事故報告書などを参考にした損害保険会社の試算によると、約3億円とみられています。

車両の使用停止処分

■事業者への処分──車両使用停止110日車など

 近畿運輸局は「社会的影響の大きい事故」という理由を端緒に、事故を起こしたトラックの運送業者に特別監査を実施しました。

 このとき同運輸局は「行政処分に至るまで通常は1年程度を要するが、事故の社会的影響の大きさを踏まえて結論を急ぐ」と公表し、約半年後の平成25年8月30日に以下の処分を決定しました。

 

処分内容(主な違反──貨物自動車運送事業法第17条第1項違反)】

 ■車両の使用停止処分──110日車及び文書警告

 ■違反行為の概要

 (1)事業計画変更認可違反(営業所の位置)
 (2)事業計画変更認可違反(休憩・睡眠施設の収容能力)
 (3)乗務時間等の基準の遵守違反
 (4)健康状態の把握義務違反
 (5)点呼の記録事項義務違反
 (6)運転者台帳の記載事項義務違反
 (7)整備管理者の選任(解任)未届出違反
 (8)運転者に対する指導・監督違反

【事故の教訓】
踏切とりこ
■前方に余裕のない踏切には
 立ち入らない
 
踏切など鉄道施設の事故は公共交通を止めることになるので、多大な社会的損害を招きます。
 前方に信号などがあり、少しでも踏切内で立ち往生する不安がある場合は絶対に進入しないことを徹底しましょう。
■諦めずに踏切外への脱出を試みる
 
万が一、踏切内でトリコになった場合は、速やかに脱出することが先決です。場合によっては対向車線への脱出を試みましょう。
 踏切遮断棒は、前に押すと跳ね上がる仕組みになっているので、棒が降りているときでもためらわず前進します。棒が破損したとしても、列車と衝突することと比べれば大した損害とは言えません。
指導・監督の指針にそった教育
■「指導・監督」の徹底を(青ナンバー)
 トラック・バス・タクシーなど事業用自動車が踏切事故を起こした場合は、必ず運輸局の特別監査が実施されます。このとき、乗務員への「事故防止のために実施した指導・監督の記録」がない事業所に対しては、厳しい処分が科せられます。
 踏切事故に限りませんが、日頃から、国土交通省の指導・監督の指針に沿った安全教育を実施し、その記録をとっておくことが重要です。

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 交通事故の損害の大きさを指導していますか──その2

 ■バック事故で電信柱が倒壊し、付近で停電が発生(2015年1月30日更新)


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  ■踏切事故を防ごう(2013年3月15日更新)

■交通事故が社会に大きな損害を与えることを指導しましょう

 

事故によって鉄道をストップさせたり、田んぼに廃油を流出させるなど、社会に大きな損害を与える事故が発生することがあります。

 

小冊子「こんなに大きい!事故の社会的損害」は、わずかなミスや、低い安全意識による交通事故が、事故の当事者以外の人にも大きな損害を与え、取り返しの付かない事態に発展することを理解していただくことのできる教育教材です。

 

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