交通事故の損害の大きさを指導していますか──その2

■起こってからでは遅すぎる──電柱倒壊事故が与える影響は大きい!

──社会的影響の多い事故の損害を意識させよう!

 交通事故は人身被害のない場合やちょっとした接触でも、トラックなどの衝突では損壊が大きく、社会的影響を与え、多額の損害賠償責任が発生することがあります。

 

 今回は、社会的影響の大きかった「電柱倒壊」事例を紹介しています。指導の参考にしてください。

事例1■バック事故で電信柱が倒壊し、付近で停電が発生

バック事故で電柱倒壊
     

■寄せようとしたトラックが電柱と衝突、

 2本の電信柱が倒壊して電線を切断

 

 平成23年(2011年)7月、大阪府下の工場敷地内道路で、ある運送会社の大型トラックが荷物の積卸しのために入場したが場内が混雑していたたため、バックで退場しようとして、車体を寄せながらバックしていて後方にあった電信柱と接触し、電信柱が倒壊しました。

 倒れた電柱に引っ張られて、さらに2本目の電信柱が倒壊し、電線も切断されたことにより、付近一帯が停電しました。

電柱倒壊のため、建物にも接触しました。

 

 トラックのドライバーは、「車体を寄せることに気をとられてバックモニターの確認が遅くなりました。後方に車がいない場所にバックするだけだからと軽い気持ちでした。まさかこんな事になるなんて……」と管理者に報告しています。

 この事故で、以下のような損害が発生しました。 

■付近のコンビニエンスストアで

 アイスクリームがとける

 事故の報告を受けて、運送会社の管理者が現場で聞き込みを行ったところ、半日近くも停電が続いたため、さまざまな苦情が寄せられていました。

 

 一つは商店からの苦情で、例えばコンビニエンスストアで冷凍庫の電源が落ちたため、アイスクリームなど冷凍食品の解凍が進んでしまったとのことです。

 また、付近住民の飼育する熱帯魚の飼育水槽のろ過装置が長時間止まったたため、魚の一部が死んでしまったという事態も発生しました。

 

 運送会社は、電柱の損害賠償など保険も活用して誠実な補償に当たったのですが、停電というショッキングな事態を引き起こしたため、非常にイメージダウンを受けました。

 

■損害保険料は約2倍に

 結局、電柱や建物の補償を含む保険金額が1千数百万円に上り、損害保険を使用したことにより、運送会社の翌年以降の支払保険料が非常に高くなりました。

 

 事故発生年の保険料は1,000万円程度でしたが、等級変更による割引率の減少が響き、翌年の保険料は約2,000万円と倍増しています。

 

保険料アップによる1,000万円の損失を補うには……

~ 運送会社の利益率を1%と仮定すると ~

1年間に10億円の売上が必要になる

【事故の教訓】
寄せてバック
■寄せバックはゆっくりと行う
 
バックで寄せる場合も、車を降りて一度後方を確認してバックする所を頭に入れておきましょう。
 さらに、バックギアに入れてからバックする前に少し時間を置き、バックモニターを見るだけでなく、ミラー、窓からの目視も行いましょう。
 少しでも不安を感じたり、異音がした場合は、必ず止まって確認してください。

事例2■ユニック車が電信柱を引き壊し、高校が休校に

電柱が倒壊し停電

アームを下げ忘れたトラックが電線を

ひっかけ、電柱12本が次々と倒れる

 

 平成26年11月10日午前10時ごろ、北海道千歳市内の市道で、クレーン付きトラック(ユニック車)がアームを下げ忘れたまま走行し、電線を引っ掛ける事故が起きました。

 

 人身被害は無かったものの、アームを下げ忘れたままトラックが走行したことにより、道路を横断するように張られていた電線にアーム部分が引っ掛かり、この電線につながっていた約220メートルの間にあった電柱12本が次々と倒壊しました。

 

 この事故により、現場周辺の約260戸が長時間に渡って停電状態となりました。付近の高校では、電気が止まったことにより水道や暖房が使えなくなったため、午後から休校となりました。


 トラックドライバーは「近くでパンク修理(タイヤ交換)をしたときアームを上げました。作業後にアームを下げ忘れていたことに気づきませんでした」と延べています。 

【事故の教訓】
踏切架線を切る
■アーム下げ忘れを防ぐ工夫をしよう
 
アームの降ろし忘れは、電線事故だけでなく、踏切での架線接触事故、高架への衝突事故などに結びつき、非常に危険です。クレーン付のトラックを運転する場合は、発進前の確認が非常に重要となります。
 
 下げ忘れをチェックするために以下の様な工夫をして、確認もれがないように留意しましょう。
・右側の運転席ドアに、降りる時「アーム下げ確認」といったつり札をひっかけて、アームを確認後に、札を回収してから運転席に乗り込む
・ダッシュボードに「アーム下げ確認」のシールを貼る
運輸支局監査の対象
■「自動車事故報告書」の必要性が生じます
 トラック・バス・タクシーなど事業用自動車が「社会的影響の大きい」と解釈される交通事故を起こした場合は、運輸支局への報告が義務付けられています。多数死亡の重大事故などはもちろんですが、物損事故であっても、当局が必要と考えた場合は厳しく命じられます。
 報告事故が発生すると、当然、監査などの対象にもなりますので、事業の遂行にとって大きな影響が現れることを肝に銘じて、教育をしておくことが重要です。

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■交通事故が社会に大きな損害を与えることを指導しましょう

 

事故によって鉄道をストップさせたり、田んぼに廃油を流出させるなど、社会に大きな損害を与える事故が発生することがあります。

 

小冊子「こんなに大きい!事故の社会的損害」は、わずかなミスや、低い安全意識による交通事故が、事故の当事者以外の人にも大きな損害を与え、取り返しの付かない事態に発展することを理解していただくことのできる教育教材です。

 

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