平成26年11月15日(土)~16日(日)に、京都府民総合交流プラザ京都テルサにおいて、日本交通心理士会第11回大会が開催されました。
大会には約200名が参加し、初日は石田敏郎(早稲田大学人間科学部)教授が「高齢運転者講習の効果と課題」をテーマに、2日目は金光義弘(川崎医療福祉大学医療福祉学部)特任教授が「交通事故惹起者との面談で見えてくること、見えてこないこと」をテーマに特別講演を行いました。
また、2日間で11人の交通心理士による研究発表が行われました。今回は黒井産業株式会社R45・日の出自動車の奥山祐輔氏によって発表された「高齢者講習(更新時講習)の効果的な方向性を探る試み<第2報>」をご紹介します。
日本交通心理士会とは…
日本交通心理学会は1975年日本交通心理学研究会として創立しました。交通に関わる諸問題について心理学を中心とした研究を行うことにより、交通事故の抑止とよき交通環境の建設に寄与することを目的としています。学会の認定資格である交通心理士は、地域や企業の交通安全のリーダーとしての役割を担っており、交通心理士大会では、日頃の研究の成果が発表されています。 【学会のWEBサイトへ】
黒井産業株式会社R45・日の出自動車の奥山祐輔氏は、「高齢ドライバーの握力値と運転行動及び認知機能との関連」をテーマに発表を行いました。
先行研究では、握力のテストが体力を測定するにあたって有効な指標となること、また体力と認知機能検査得点とは、有意な相関関係があることが認められている。
そこで、本研究では握力と運転行動の関係ならびに、握力と認知機能との関連性を検討することとした。
調査対象者は高齢者講習を受講した人の中で、認知機能検査を受検した男性(74~87歳)の268名を対象とした。
握力の計測は握力計で測定し、最高値を記録した。認知機能検査は、時間の見当識検査、遅延記憶検査、時計描写検査の3種類を実施した。運転行動の評価については、一時停止行動、安全確認行動を目視で確認した。
握力測定の結果と一時停止行動の関係をみてみると、握力の低い人に一時停止の不停止が多く認められるのに対し、握力の高い人は、一時停止を正確に行なう傾向がみられた。
また、安全確認の有無についても、握力の高い人は安全確認を行なう傾向がみられた。
認知機能と握力の関係においては、認知機能検査のうち、時間見当識検査については握力との相関が認められなかったが、遅延記憶検査と時計描写検査については、握力の高い人が高得点をマークする傾向がみられた。
今回の研究では、握力と認知機能、握力と安全運転行動との間に関連が認められた。このことから、認知機能の低下が握力の低下をもたらし、さらに運転行動に影響を及ぼしている可能性も示唆される。
今回のデータからは、握力の測定結果が認知機能や安全運転行動の指標として活用できる可能性が得られた。
日本交通心理士会第11回大会データ
・日時 平成26年11月15日(土)~16日(日)
・会場 京都府民総合交流プラザ 京都テルサ
・プログラム
<特別講演>
「高齢運転者講習の効果と課題」
石田敏郎(早稲田大学人間科学部・教授、前日本交通心理学会会長)
「交通事故惹起者との面談で見えてくること、見えてこないこと」
金光義弘(川崎医療福祉大学医療福祉学部・特任教授)
<研究発表>
・高齢者講習実施の効果の検証と今後の課題について
・高齢者講習(更新時講習)の効果的な方向性を探る試み「第2報」
・高齢運転者に対する夜間視力の低下を認識させる教育計画(2)
・高齢歩行者の道路横断時間の予測と実際
・新方式フリッカーの計測実証実験の実施について
・車両外側位置及びタイヤの空間位置感覚の精度向上支援法の研究(1)
・高校生と高齢者の自転車利用に関する法令遵守意識
・教習生のスポーツ経験と技能教習の評価の関係
・安全教育前後での路線バス運転士の安全確認行動の変化について
・バックにおける車両視認性の検証
・国土交通省認定・適性診断受診結果の効果的な伝え方について