交通事故の損害の大きさを指導していますか──その3

■起こってからでは遅すぎる──重量物の落下事故が与える影響は大きい!

事故の社会的損害

 トラックなどの衝突事故では損壊が大きく、社会的影響を与え、多額の損害賠償責任が発生することがあります。

 

 今回は、社会的影響の大きかった事故事例のなかで「重量物」が落下した事例を紹介しますので、指導の参考にしてください。

事例■積載物の鉄板が落下し、対向車の乗員2名が死亡

鉄板15枚が落下し2名死亡
     

■ワイヤ1本だけで30枚の鉄板を固縛、

 不適切な積載方法で、運送会社も有罪

 平成24年12月25日、広島県東広島市の国道432号で大型トレーラーの荷台から鉄板15枚が落下し、対向車線の乗用車を直撃する事故が発生、乗用車の男性2名が死亡しました。

 トレーラーのドライバーは、鉄板30枚(1枚あたり約800kg)をワイヤー1本で縛っただけの不適切な積載方法で運転、重量トレーラーの無許可通行もあり、運転者だけでなく運送会社の社長(運行管理者)が有罪判決を受けました。


■運転者は禁錮3年6月の実刑、社長は猶予つき有罪判決

 事故を起こした運転者(36歳)に対する刑事裁判では、自動車運転過失致死罪などで平成25年6月に禁錮3年6月、罰金50万円の判決を受けています。

 

 また、大型トレーラーを運行していた運送会社社長(39歳)も、道路法違反(無許可通行)と業務上過失致死傷で起訴され、「事故を未然に防ぐ注意義務があったのに、危険な積載を知りながら落下防止措置を指導せずに運転させていた」として、禁錮2年、執行猶予3年、罰金50万円(求刑禁錮2年、罰金50万円)の判決を言い渡しました(広島地裁 平成26年10月15日判決)。

鉄板15枚が落下し2名死亡
     

■損害賠償は1名だけでも約6500万円

 なお、事故による被害者1名(事故当時59歳)の遺族が運転者と運送会社に対して慰謝料など求めて提訴した民事訴訟では、約6,500万円の損害賠償が命じられています(広島地裁 平成26年11月18日判決)。

  裁判官は判決理由で「事故は一方的な過失のみによって引き起こされた」として遺族の訴えを大幅に認めています。


 なお、もう1名の遺族も運転者と会社および会社社長に対して、計約9,000万円の損害賠償を求める訴訟を広島地裁に起こし、係争中です。

【事故の教訓】

荷物の積載・固縛方法に関して指導と監督の義務がある

固縛が不十分な場合
 荷物を積載する場合は、固縛方法や強度計算を慎重に行うよう、会社が厳しく指導する責任があります。

 事例の裁判では、会社社長側は「積荷の固定方法は運転手に一任していた」と弁解しています。
 しかし、裁判官は「勤務する運転者に対して積載物の落下防止措置を具体的に指導する必要があり、固定状況を運転者にも報告させるという業務に関わる注意義務を怠った」と指摘しています。
 また、「事故を起こした運転者の勤務態度からも不十分な固定を繰り返すことは予見できた。荷崩れによって2人が死亡する事故を起こした責任は大きい」と判示しています。


■特殊車両通行許可を受けていない違反事業者への取締り・処分が厳しくなる

特殊車両通行許可
 国土交通省の資料より
 上記の事故当時から、無許可通行の事業者には社名公表などの処分がありましたが、平成27年以降は、特殊車両通行許可をとらずに無許可で通行した場合は、取締りや処分等がさらに厳しくなります。その根拠は……

① 無許可通行防止に指導・監督を明記
 道路保全の観点から道路法が平成25年に改正されました。貨物自動車運送事業輸送安全規則も平成27年1月1日から一部改正され次の文言が追加されました。
●輸送安全規則 第5条の2──貨物自動車運送事業者は、道路法第47条の規定等に違反する自動車の運行の防止について、運転者に対する適切な指導及び監督を怠ってはならない。

悪質違反事業者の取締り・告発(レッドカード)を強化
 また、道路局長通達「車両の通行の制限について」が一部改正され、車両総重量が基準の2倍以上ある悪質違反者に対して、平成27年2月23日以降「即時告発」などの厳しい処分が科せられることになりました(※下の資料を参照。なお、基準の2倍に達しない場合でも、常習的に違反が行われている場合は、告発の対象となります)。
●基準2倍以上の違反事業者は即時告発──計算例)・無許可のセミトレーラー40トン(スタンション型/指定道路外)・無許可のセミトレーラー50トン(スタンション型/高速道路・指定道路)・無許可のセミトレーラー54トン(バン型)
●罰則──道路法104条の違反
100万円以下の罰金

 ↓ 国土交通省の資料より(図をクリックすると拡大されます)

悪質な重傷制限違反事業者は即時告発

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交通事故が社会に大きな損害を与えることを指導しましょう

 

事故によって鉄道をストップさせたり、田んぼに廃油を流出させるなど、社会に大きな損害を与える事故が発生することがあります。

 

小冊子「こんなに大きい!事故の社会的損害」は、わずかなミスや、低い安全意識による交通事故が、事故の当事者以外の人にも大きな損害を与え、取り返しの付かない事態に発展することを理解していただくことのできる教育教材です。

 

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