4月の運転管理 …… 平成27年(2015)年

■交通弱者の事故防止を徹底しよう

 4月は新入学児童や入園児などが増える時期です。小さな交通弱者に配慮した運転を心がけましょう。

 

  管理面では年度始めとして、安全運転目標などを掲示し周知する大切な時期です。

 

 また、今年は統一地方選挙の影響で「春の全国交通安全運動」が5月に実施されます。4月は運動の準備期間と考え、実質的な交通安全活動を展開していきましょう。

4月の
安全運転目標


  

■4月の安全運転目標

■子供や高齢者の保護を心がけましょう

 街頭に新入学の児童や入園児の姿を見る季節となりました。また高齢者も暖かくなって外出する機会が増えます。こうした交通弱者との交通事故を防ぐために、とくに歩道を横切るときや横断歩道を通過する時の安全確認に注意しましょう。

 

 歩行者などを軽視したことにより事故になると、死亡事故に結びつきやすく、刑事・民事とも厳しい責任を問われます。

 

こんな事故が起こっています

歩道の安全確認を怠り、小学1年生を死亡させる

 平成24年5月、大阪市中央区の歩道上を歩いていた小学1年生の女児(6歳)を歩道を横切ろうとした会社員の車が目視の安全確認を怠り、はねて死亡させました。

 

 この事故の刑事裁判では、会社員の男性は禁錮2年の実刑となりました。裁判長は「歩行者の聖域ともいうべき歩道を通行する際には、運転手には万全の注意義務が課せられる。被告人はわずかな注意を払えば危険を回避できたのにそれを怠っており、厳しい非難は免れない」としています(平成25年8月27日 大阪地裁判決)。

 

 また、両親ら遺族7人が提訴した民事訴訟では、「多大な精神的苦痛を負った」として両親の請求の大半を認めたほか、55~110万円を求めた妹と祖父母4人についても請求全額を認め、計約6,200万円の損害賠償金支払いを命じています(平成27年1月20日 大阪地裁判決)。

  

■4月の重点管理項目

生活道路を走行経路に選択しない

 新年度の営業戦略などに応じて、新しい地域へ営業車が出張したり配達などが実施されることがあります。

 

 このとき、経路の選択は非常に重要なリスクマネジメントとなることを、運転者や現場の管理者に徹底しておきましょう。

 

 経路の選択を運転者任せにしないで、幹線道路中心に走行路を指定し、生活道路には入らないことを指導してください。特に以下のような道路を走行しないようにします。

 

 ●時間帯で通行禁止となっている道路

  スクールゾーンなどで、時間帯を区切って補助標識で車両通行禁止を指定している道路がありますので、走行しないように注意させましょう。通行禁止道路を走行して人身事故を起こした場合、危険運転致死傷罪が適用される場合もあります。

 

 ●通行禁止ではないが、リスクの高い生活道路

 車両通行禁止ではなくても、団地内の道路などを抜け道に使うと、幼児や高齢者と遭遇する機会が増えてリスクが高まります。こうした道路は、経路上に選ばないように事業所で独自に指定し、マイカー通勤経路からも外すように指導しましょう。

「歩行者のすぐ近くでは徐行」を徹底

 車に乗っているときは気づきませんが、狭い道などで車がすぐそばを通るのは、歩行者にとっては非常に怖いものです。とくに大型トラックなど大きな車が近くを走行すると恐怖感もひとしおです。

 

 このことを理解させるためには、実際に運転者を一列に並べて、その側をトラックなどで走行してみるとわかります。運転している側からは低速度と感じる速度でも、歩行者の立場では非常にこわいことを身をもって知っておくことが重要です。

 

 なお、歩行者の側方に安全な間隔がないとき徐行するのは、道路交通法上の義務です。歩行者がよろめいたり、車道に出てきたときなどに接触するのを防ぐため、重要なポイントであることを理解させましょう。

  

■4月の健康管理目標

飲酒の量をコントロールしよう

 春は、花見や新人歓迎会など行事が多く飲酒機会も増える季節です。特に運転業務の多い人は、翌朝の酒気残りによる飲酒運転防止と健康保持のため過度の飲酒に気をつけてください。

 

 高血圧、高脂血症、メタボリック症候群など生活習慣病の心配がある人は、飲酒習慣にも問題のあることが多く、一晩に数単位も飲んでしまう「多量飲酒」がリスクを高めています。

 

 多量に飲酒する習慣がつくと、睡眠バランスが崩れて不眠などの症状に苦しむことにもなり、健康状態はますます悪化します。

 適度な飲酒であれば健康増進に結びつくことも期待できるので、飲酒習慣のコントロールが大切です。最近は少なくなってきましたが、新入社員などに「一気飲み」を強要する愚かな先輩がいても、相手にしないで、自分の飲酒量を守ることが大切です。 

尿酸値の高い人は、下げる努力を

 飲酒習慣を配慮すべきグループとして、とくに内科医が注目しているのが尿酸値の高い人です(高尿酸血症)。血液中の尿酸値が境界値を越えている場合(7.0mg以上)は要注意です。

 

 この病気は、足指の付け根などに激痛が走る「痛風」で有名ですが、痛風症状の無い人の方が尿酸値を高いまま放置するため、尿路結石、腎障害、動脈硬化や心筋梗塞・脳出血などの発症率が高いことが心配されています。

 痛風の痛みを経験したために、薬を飲んで尿酸値を下げるように気をつけている人の方が、むしろリスクは少ないかも知れません。

 

 尿酸値を上げないためには、服薬だけでなく、動物性食品やビールに多いプリン体の摂取を控えめにして、野菜を多く摂るなど食生活に気をつけることと、過渡の飲酒をしないことが大切です。ビール以外であってもアルコールの摂取が多ければ多いほど高尿酸血症の症状は進みます。

  

■その他の管理・指導項目

【すべての安全運転管理担当者の皆さんへ】

平成26年春の全国交通安全運動
  内閣府作成のポスター

■春の全国交通安全運動の準備をすすめよう

 今年は、統一地方選挙の影響で5月に春の全国交通安全運動が実施されます。重点項目を踏まえて自社なりの交通安全運動への参加指針を策定し、運動の資料や安全運転指導教材などを配布しておきましょう。
 特に、生活道路などにおける交通弱者の安全確保、飲酒運転の根絶を徹底する指導が重要です。

 

・運動の実施期間 5月11日(月)~20日(水)

・交通事故死ゼロを目指す日       5月20日(水)

・運動の基本テーマ「子供と高齢者の交通事故防止」

・全国重点項目

 (1)自転車の安全利用の推進
   (特に、自転車安全利用五則の周知徹底)
 (2)全ての座席のシートベルトとチャイルドシートの

   正しい着用の徹底
 (3)飲酒運転の根絶

 

 ※交通安全運動の詳細に関しては → 内閣府のWEBサイトを参照


【事業用自動車の運行管理者の皆さんへ】

改善基準告示を守って、安全運行を確保しよう

 国土交通省の「行政処分の基準」が改正されたことにより、2014年1月から改善基準告示違反の運送事業者に対する処分が非常に厳しくなりました(最高30日間の事業停止)。

 

 実際に全国初の処分が行われたのは、その1年後となる今年1月28日です。北海道運輸局が札幌市に本社をおくトラック運送会社に対して、運転者の半数以上に当たる46人に連続運転時間違反や拘束時間超過が認められたとして、30日間の事業停止命令を出しています。

 また、元請けである京都の運送会社に対しても関与が認められ、荷主勧告制度に基づく「警告書」が発出されました。

 

 この事例は「改善基準告示を守れない事業者は業界から退場してもらう」という国土交通省の強い意思表示といえます。運送事業者は新年度の運行計画立案の基本として、「改善基準告示の遵守=拘束時間の管理」を事業所内で再度徹底することが重要です。

 

●労働基準監督署からの指導を軽視しない

 北海道の事例では、「労働基準監督署からの通報」が運輸支局の監査の端緒となっていて、「労基が問題視した事案は、連携し迅速に対処する」という当局の方針が明確になっています。監督署から労働時間等の指導を受けている事業所は、放置すると事業の存続が危うくなります。

●荷主にもコンプライアンス遵守を求める

 また、元請けや荷主に対しては、荷主勧告制度が強化されていることを強調し、安易に過度な要求を引き受けないように姿勢を正すことが大切です。

  

■4月の安全運転管理ごよみ (2015年/平成27年)

日  付 行事等

 1日()~

 30日(木)

・未成年者飲酒防止強調月間(国税庁)──未成年者の飲酒防止を徹底するため、毎年4月にはポスターや各種媒体を通じて集中的に広報が行われます。飲酒運転に関連した資料も配布されます(詳しくは国税庁のwebサイトを参照)

1日(水)

「総重量7トン以上のトラックにもタコグラフを義務付け」施行──貨物自動車運送事業への安全規制強化の一環です。貨物自動車運送事業輸送安全規則の一部が改正され、車両総重量7トン以上8トン未満(最大積載量4トン以上5トン未満)のトラックについても、運行記録計の装着が義務付けられます。詳しくは国土交通省のWEBサイトを参照してください。

 7日(火)

・世界保健デー──世界保健機関(WHO)の設立記念日。世界各国で健康的な生活について考えてもらうためのさまざまなイベントが開催されます。

労働基準法公布記念日──1947年(昭和22年)のこの日、労働基準法が公布されました。

 8日(水)

・タイヤの日─日本自動車タイヤ協会が制定。ドライバーにタイヤへの関心を高め、空気圧のチェックなどの啓蒙推進活動を行なっています(タイヤ協会のwebサイトを参照)。

 10日(金)

・法テラスの日日本司法支援センター

国際交通安全学会──研究調査報告会および学会賞贈呈式

 13日(月)~

 19日(

第56回 科学技術週間──毎年4月18日の「発明の日」を含む1週間は「科学技術週間」と定められています。

 14日(火)

・4月の製品安全点検日──経済産業省は、毎月第二火曜日を「製品安全点検日」として、製品の安全な使用法やリコール製品等について情報提供・注意喚起を行っています。

 20日(月)

・穀雨──24節気の一つ。田畑の準備が整う頃、それに合わせて穀物の成長を助ける春雨の降る時期とされています。

 28日(火)

・労働安全衛生世界デー または 国際労働災害犠牲者追悼日──仕事における安全と健康のための世界の日」です。労災の犠牲者を追悼し再発防止を図る国際な記念日として、2002年に国際労働機関(ILO)が国連の国際デーの一つと認定しています。

 28日(火)

・洗車の日──自動車用品小売業協会は4月28日を「洗車の日」に制定し、前後にイベント等で洗車を呼びかけています。

 4と28で「ヨイツヤ(良い艶)」と読む語呂合わせです。

 29日(水)

・昭和の日

   
 4月中旬 ・平成26年度自動車アセスメント結果発表会を開催国土交通省
 4月中旬

・平成27年3月末までの交通事故発生状況発表(警察庁)

・平成27年度 全国安全週間のスローガン、実施要項発表

 (厚生労働省

 4月下旬

・第31回「安全衛生標語」の募集──標語の種類は、平成27年度の年末年始無災害運動標語、平成28年の年間標語──例年、締切りは4月30日(木)必着(中央労働災害防止協会

・平成27年1月分 トラック輸送情報国土交通省

 

 

 ◆4月の日没時間国立天文台天文情報センターによる)

 1日(水) 福岡 18:38 大阪 18:19 東京 18:02
 15日( 福岡 18:49 大阪 18:30 東京 18:14
 30日(木) 福岡 19:00

大阪 18:42

東京 18:26

 

「早めにつけよう おもいやりライト
 運動に取り組みましょう!
 運転者の皆さん!早めの点灯を意識しましょう。少しだけの配慮で交通事故を減らすことができます。遅くても日没の30分前には、ぜひ点灯するとともに、歩行者の見落としなどに警戒することを習慣としてください。

 「おもいやりライト運動」は、夕暮れ時のヘッドライト早期点灯を ドライバーに呼びかけて交通事故を削減する運動です。横浜の運動事務局の呼びかけに呼応して全国で点灯活動を展開する動きが出ています。


 詳しくはおもいやりライトのサイトを参照してください

 

 また、JAF(日本自動車連盟)も早期ヘッドライト点灯キャンペーンを展開し、JAFインターネットWEBサイトでライト点灯に関して様々な情報提供をしています。

 ※詳しくは JAF Safty Light のサイトを参照してください

 

 

【教材紹介】ドライバーの心をつかむ指導のヒント

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 各事例は会話調のマンガでわかりやすく紹介していますので、気軽に読むことができ、日々の安全運転指導業務の参考にしていただけます。

 

 

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